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木々の隙間から垣間見える一人の男の姿に、誰の追随も許さぬ疾走を止めて眺める姿があった。 月光を煌かせるかのような、透けるような白い肌。 腰まで覆い隠すような射干玉の黒髪も月に映える。 しなやかさを秘めた若い躯であった。 水浴びが好きなのか、よく見る姿は川での裸身だ。 月明かりを一身に浴び、水の飛沫を撒き散らす姿は幻想的で、はじめて見た時は月の化身かと思ったほど。 日に焼けたこともないような白いしみ一つない肌が、闇の中浮かびあっていた。 故に、恋した。月のある夜は、人の姿になれぬから。 |
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闇に沈んだ木々の合間を眺めれば、一頭の狼が風を従えて走っているのが見えた。 疾駆する四肢。 涯の見えぬ大地を、力強くひた走る。 大地を蹴る脚を持たぬ身には、羨ましく思えた。 しかし、ときおり立ち止まった狼と視線が重なり合えば、言葉にならぬ感情が湧き上がる。 この感情をなんと言うのか、総司にはまだ思いつかなかった。 森を駆けるは、夜王の一族。 月輪が空に煌きし時には森の王者・狼として駆け、地に沈みし時は人形(ひとなり)の姿をして立つ。 この世には様々な一族があり、時には近付き、時には遠ざかり。 出会わぬこともあれば、別れぬこともあり。 そんな二つの種族が運命を共にするのは、定められたことか。 それは地のみが、知るのかもしれない。 |
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こちらも、本当に素敵な絵をいただきました。 惚れ惚れします。総司のお尻が、とってもキュート!! ここまで私の思い通りのというか、理想的な絵を書いていただけると、本当に言葉にならないですね! |
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