道行き

刀では斬れぬものがあると知った。

儂はお主には勝てぬと、

お主と始めて出会ったあの日に、

すでにわかっていた。

まして、お主と身体を重ね、

幾晩か、行くたびか、

儚い逢瀬の日々ではあったが、

ひたすらに儂を求めてくる、

お主の燃えさかる魂を、

その器である肉体の、

放熱とともに抱きしめて、

ますます確信は強くなった。

お主が望み続けたように、

再び刃を交わす日がきても、

儂はお主には勝てぬ、

儂はお主を斬れぬ、

お主の心は斬れぬからだ。

だからもしお主が儂を斬りたければ、

喜んでこの身を捧げよう。

それがお主に与えられる、

ささやかだがあたうかぎりの、

儂の真心だ。

お主には斬れぬものはあるか?

斬れぬものを見つけたか?

常から、寡黙だったお主は、

今また何も言わぬまま、

儂の腕の中にいて、

心は、現世の向こうにある村のどこかで、

儂を待っているのだろうか。

どうか、待っていてほしい。

今はしばらくこのままで、

お主と二人こうしていたい。

もしかなうのならば、

このままお主とどこまでも行きたい。

空がきれいだ。