偏愛 1


「ごめんなさい・・・っ!」
涙を流し、震える声でしゃくりあげながら細い体を震わせてどうにか私から逃げようとした異母弟。

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私は、気づけば彼の何もかも、きっと魂までも手に入れたいという妄想に囚われていた。

その変質的な衝動は押さえがたく、ついに私は、あの日、視界に入ればどうにかしてしまいそうに常に思っていた彼に感情を押し殺しながら、なるべく警戒されないようにしながら話しかけて、自分の部屋に誘った。

指定した時間ぴったりに、彼は嬉しそうな顔で私の部屋にやってきた。

緊張しているのか、彼は浮き足立っていて文字通り少し足元がふらついていたけれど、そんな様子が益々私のゆがんだ嗜虐心を煽る。
愛しいと思っているのに、嗜虐心と表現するのになんの違和感も無いような残酷で凶暴な衝動だった。

滅茶苦茶にしてしまいたいのと、愛しく思う気持ちと、誰の目にも触れられたくない気持ちと・・・つまりそれは偏愛だ。

雑談をした。
普段の勉強の進み具合とか、そう言うことだ。

そこで、彼を部屋から追い出してしまえばよかったのだ。
けれども彼は、普段、無視をあえて決め込んでいた異母兄の私に話しかけられたのが嬉しかったのか、部屋に留まりたそうなそぶりを見せた。

お前が誘ったんだ。

それは、他人が言っているのを自分が聞いたとしたら、呆れ返るほどに馬鹿らしい言い訳だ。

私は執務机の椅子に腰掛け、そして彼はその前で立ちっぱなしだったから、適当な理由をつけてベッドに腰掛けるように言った。

素直に彼は従ってしまった。

だから私は、彼の服を脱がせ、やわらかい肌に口付けをし・・・
そこで彼は驚いたのか、逃げようとした。
けれども動けないように抱きかかえると、今度は泣き始めた。

許して
助けて
ごめんなさい

色々なことを彼は言った。

私の気持ちにはこれっぽっちも気づいていないし、もしかしたら幼いせいもあるのかもしれないけれど、理解の範疇外なのかもしれない。

彼の肌は白く、服を脱がせて空気に触れたところが、夏だというのに寒くでも感じたのか一瞬だけ鳥肌が立っていた。
顔には朱がさしていて瑞々しい質感の肌が上気していた。

念入りに彼が傷つかないように
私を受け入れるのが苦にならないように
丹念に慣らして交わった。
彼は驚愕と混乱で快楽など感じられるはずもなく、叫び声を上げて泣いた。
それでも私は止めることが出来なかった。

すすり泣く声に、体液のにおい、汗のにおい、彼の髪のにおい、そして失禁のにおい
何もかも愛しかった。

だから私は狂ったように彼の幼い体を蹂躙してしまったのだ。
そうして私は彼を一方的に手に入れてしまった。
それは、人類初めての女が食べてしまったという知恵の実と同じだと私は思う。

知ってしまえば目を逸らしがたく、離れられず、忘れられず・・・それは世界が明るくなるのと同時に、苦難の幕開けを意味する。

私はまるでその物語そのもののように、苦難の物語が始まってしまったことを、その時は全く知らなかったのだった・・・