"君なしじゃ生きていけない"って思い合える間柄になりたい




ゼシカとククールは、ある日ある町でたまたま二人で並んで歩いていた。
エイトとヤンガスはそれぞれどこかに行ってしまっていたというだけで、二人で歩いていたのには他意はない。
けれども、すれ違う町の人たちはそうは思わないようで、美男と美女の組み合わせに思わず目を奪われる。

そんなことを、当の本人たちは知らない。

「ちょっとー、アンタが派手な顔立ちだから皆じろじろ見てるわよ。落ち着いて散歩も出来ないじゃない。」
「それを言うならこっちのセリフだよ。ゼシカがそんな見事な胸を出してるからみんな男共が落ち着かないんじゃないか?」
「アンタのせいよ。」
「ゼシカのせいだよ。」

そこまで言って、「お互い様かも」とほぼ同時に二人とも思い、そして笑う。
そんな様子を他人が見れば幸せなカップルそのもので。

「ま、アンタの制服見たら変な男は寄ってこないからいい番犬代わりにはなるわね。」
「ま、ゼシカが隣歩いてたら俺の美しさが更に引き立てるから俺としても構わないけど?」
「ちょっと、それって失礼じゃない?!」
「あ、語弊があった?変な意味じゃなくて、美しいものの相乗効果さ。」
「アンタって本当にバカね。」

お互いに素直になれないのは、似たもの同士だから。

「ゼシカは俺と一緒じゃなきゃイヤなんだろう?」
「ふざけないでよ、アンタこそ私と一緒に居たいだけでしょう?」

口げんかのような戯れは止まらない。

「あ、いたいた、ククール、ゼシカ!」
エイトが食料品を大量に抱えたまま走ってくる。

「ちょっと、エイト、聞いてよ。このヘンタイ騎士のナルシストっぷり。」
「エイト、聞いてくれよ、この我侭姫のあまのじゃくっぷり。」

ほぼ同時にエイトに話し掛けて、そして顔を見合わせ、二人は笑った。
エイトだけが状況を飲み込めず、荷物を大量に抱えたまま道に立ち尽くしたのだった・・・



<了>