君といる、未来のために。



「うん、どっちにしようかな。」
あいつは真剣に品定めをしている。

ここはある町の用品屋。
片田舎の町にしては意外なことに、洒落たデザインの物を取り揃えていた。

今、あいつは戦いの際に受けた衝撃で割ってしまった自分用の鏡を品定めしている。
エイトもヤンガスも興味がないようで、店の中を一通りぐるっと回ると、先に酒場に行っていると言い残し出て行ってしまったのだけれども・・・

「いい加減にしなさいよ、鏡ひとつに一体何時間かけるわけ?アンタって本当にナルシストね!」

私がそう言うとあいつは振り返って口元で笑う。

「だってさ、一応俺のこの顔は商売道具だし?キレイにしているのが義務なんだしさ。」
「・・・バカバカしい!」

ああ、ちょっと嫌なことを言ってしまった、と私は思い、でもあえて鼻で笑ってから、彼を罵倒する。

「で、どれとどれで迷ってるの?」
「この銀で出来たやつか、こっちの小さいやつか・・・どっちがいいかな、ってさ・・・」

そういってククールが指差したのはセンスのよい銀細工が施されたアンティーク風のものと、半輝石のようなものがはめ込まれた小さい鏡。
私が予想したものよりはずっと質素で、安価なものだった。

「あら、アンタにしては随分控えめなチョイスじゃない?」
私が少しだけ感心したように言うとアイツはまた口元で笑って言う。

「ま、一応金には不自由してないけどさ、『仕事』での蓄えもあるし・・・でもいつの日かゼシカと一緒に暮すようになったときのために今は倹約さ。」

そんな言葉に普通の女の子だったら騙されて、顔でも赤らめていたかもしれない。
けれどもまた私はあえて鼻で笑って、そしてまた彼を罵倒する。

「・・・アンタって本当におめでたいわ。何で私がアンタなんかと一緒に暮さなきゃいけないわけ?」

その言葉に、ククールはまた口元で笑うと、様式美とも言える浮ついたセリフを返し、そして私はまた鼻で笑って彼を罵倒する。

そんな風に、私たちは用品屋でひと時の平和を楽しんだのだった・・・








<了>