跳躍を



‐傷と抱擁‐





ぶすぶすと船はゆっくり降下する。

まだ彼方の白い陸に明るい髪を見つけて、おれはロープを握る手に力をこめた。



こっちはよし あともうひとり




風に乗せて、ふわりと血と肉のにおいがした。

大した時間も経ってない 完全に癒えるはずもねえか。








 バカでかい船の縁に手をかける。

まだ遠い船のど真ん中に明るい髪を見つけて、おれは甲板へ跳ぶ脚に力をこめた。



 ナミは無事 島雲に落ちたぞ




うつ伏せになった身体を、できるだけゆっくり起こした。

明るい髪も白い肌もせっかく巻いてもらった包帯も真っ黒、色男がなんてザマだよ。










 赤く黒く引き攣れた胸に耳を当てる。

静かに刻まれる鼓動を見つけて、背を支えている腕に力をこめた。




 今度は間違えない ほらな





ボロサンジ、と一言呟いた。

この男前をバカにしてるんだぜ、聞こえてるのか。









 抱えた背をゆるゆると引き寄せる。


何も返さないこの生き物に

それでも何か反応を見つけたと信じて、おれは腕に力をこめた。
 




ありがとうな たすけてくれて




やけに細く思える身体をゆっくり離し、抱えなおした。

さあ、跳ぶぞ、逃げるために。



生きるために。















飛び降りるための場所も見つからないまま、

おれはあいつを抱える腕に 空へと跳ぶ脚に力をこめた。









徒花