たたたたた。
ウソップさんは、役場の階段を必死で駆け登っておりました。
心臓はどきどきと大きな音を立てて、それでもウソップさんは足を止めることなく
赤いじゅうたんの寝そべる階段をたたたたと走ってゆきました。


ぱたん
扉の先には、ふわり、煙を吹き出す男が一人、おりました。
金髪がさらりなびく男のテーブルには、こう書かれていました。




"戸籍係"



「すいません、結婚したいんです、大急ぎで!」


すると男は、ふわり笑って言いました。




「いきなりなんて・・・大胆なんだな、お前。」


ぽ、とホホを赤くする男を、ウソップさんは呆然と見つめました。


「……え?」
「気に入った。長っ鼻だけどいいぜ。結婚してやるよ。」
「は??」
「おれ今結婚してるから、離婚するまで待ってくれよな。」
「あの、ちょっと?」
「いつにする?おれはできれば6月が」
「や、おれはここで、てつづ」
「やるなら教会に決まってっだろ!ゼクシィゼクシィ……っと、お、ここいい感じじゃねぇ?」
「いや、あなたと結婚したいんじゃなくて」



「……何だと(ぎろり)」

ひぃ。


「ああああの、おおおおれ、てて手続きを、しに、来た、だけで」
「テメェ、それは婚約不履行っつーんだぞ、詐欺だ詐欺」
「いやあの、いったい何の話ですか」
「かわいく笑って見せたりなんかして...おれのことは遊びだったのかよ」


……えーとなんで泣いてるんですかおれは結婚の手続きをしてほしいだけなのに
そんなウソップさんの思いをよそにさらさらと金髪は揺れ続けます。
恨みがましい視線ももちろんついてます。

「おれじゃ足りないのか?上でも下でもいいんだぜ」
「いや、聞けよ」
「いいさいいさ、何もいうな・・・愛があれば許せる」
「だから何の話だぁぁぁぁ」




とことことこ。
そこへ一人の紳士が現れました。ピンクの帽子がお似合いです。

「なあサンジ、おれ結婚したい」
「おおいいぜチョッパー。そのナガッパナと別れた後な」
「誰の話だよ」
「そうか、うん、わかった」
「分かるなぁ!」




のしのしのし。
再び一人の紳士が現れました。シャツから透ける腹巻が奇妙です。

「結婚したいんだが」
「今日はおれモテるなあ……その二人の後なら空いてるぜ」
「そうだぞ、ウソップの後がおれ」
「ウソップが?」
「そう、そいつおれと結婚するんだ」
「いや、えと」
「……そんなの嘘だろ、なあ、ウソップ」
「ゾロ……」
「(涙目)おれたちが夏の砦で交わしたあの契りは、嘘じゃないだろう?」
「……当たり前じゃねぇか……(おててきゅっ)」
「え、何、お前らが結婚すんの?」




どすどすどす。
三たび一人の紳士が現れました。黒ジャケットにデニムの短パンが絶妙です。

「サンジー!おーやーつー」
「る、ルフィ…だめだ、こんな明るいところで」
「え?」
「そいつって」
「サンジの」



「……おれの、オット……」









最後は5人で仲良く暮らしましたとさ。
深くは考えないでね。






徒花