ほんの少しの気持ちが集まって、それは大きな空になった。




ささやかなものだけれど。
そう言ってロビンがくれたのは、白いビーズがぽろぽろと並ぶブレスレット。
おれの角に付けてくれた。
冬生まれの船医さんによく似合うわ、と。


雪が降ったみたいだな。
そう言ったサンジがくれたのは、大切な小麦粉と卵で作ったシュトーレン。
かみさまのゆりかごに白いパウダーが積もっていた。
ネズミどもから1ヶ月も守るのは大変だったんだぜ、と。


おお、美味そう、おれにも後でくれよ。
そう言ったルフィがくれたのは、セーターの残骸でマフラーになった布地。
毛羽立った白い毛糸が首をつつんだ。
夏島の冬だけど、ふゆだからな、と。


・・・お前、よれよれしてるぞ、首のそれ。
そう言ったゾロがくれたのは、小さなボトルの甘いお酒。
丸い瓶のそこで、しろい雫がゆれていた。
おれはこっちの濁り酒だ、遠めに見りゃお揃いか、と。


綺麗な酒だな、美味そうだ。
そう言ったウソップがくれたのは、金屑が生まれ変わったベル。
白く塗られた箱から柔らかい音が響いた。
夜に鳴らせば雰囲気出るぞ、と。


3日前のとある秋島、海軍から這這の体で逃げ出したおれたちが、
やっと次の島の気候海域で入ったところで日が暮れた。
上陸計画を台無しにされたおれたちには何もかも余裕なんてちっともなくて
ルフィでさえ腹が減っても文句を言わなかった。







「来た!」


読みどおりよ。
そう言ってナミが見せてくれたのは、



空いっぱいに降り注ぐ星の波。




白い軌跡が雨のように、雪のように、夜空を駆け抜けた。
クリスマスみたいね、お酒もケーキもベルもある、と。

笑いながら。




「お、また流れた」
「さあ夢をかなえるべく、海賊共よ、祈れ!」
「金金金」
「酒酒酒」
「肉肉肉」
「ぅおいっ」
「ふふ、みんな正直ね」



ほんの少しの気持ちが集まって

"おめでとう"
"誕生日おめでとう"

それはとても大きな空になった。


「チョッパーは?」
「願掛けしねェのか?」


この空がおれのいるところ、ここがおれの守るべきところ。

一番 ほしかった もの。






星がまた一つ流れた。
願うことは、今日は、何もない。