Vol.321

「悪かったな。」
「ん?」
となり、ぼそりと聞こえた謝罪に、首をかしげた。


「…焦って、手ェでた。」
だろ、さっき。
「・・・ああ、あれな。」

こぼれたのは軽い笑い。

一騎打ちでケリをつける。
そう言った船長を置いてきた仲間。
あいつの意思を汲んだからこそ、置いてきたんだろうに。
自分は単純に、その彼らを責めた。
―ただひたすらに、おそろしかったから。

だから、お前はおれに掴みかかった。
それだけのことだ。


「おおそうだそうだ、反省しろよ。」
口を尖らせてそういうと、眉毛をよけいにぐるぐると巻いた変な顔をされた。
「・・・だから悪かっ」
「痛かったんだぜー!ドンッつったぜ、ドンって。」
大事なおれさまの脳みそがイカレちまったら、どうしてくれる。




そこまで言うと、やっと笑った。

「いいんじゃねぇ?ちっとは利口になるだろうよ。」
「おい!」
「何だおれ、いいことしたなー。」
「だから痛かったっつってんだろ!」

ぺしぺしと突っ込みながら、二人で笑った。


ジンジャーティーはハチミツ入り。
甘くて、あったまる。
やわらかく広がる寝息、穏やかな寝顔。
みんなの無事に ほっとあったまる。

サンジと並んで、テーブルに突っ伏した。
少し冷たいそれ、けれどおれをやさしく受け止める。

今日はこのまま、ゆっくり眠ろう。
やっと少し、あったまってきた このままで。











―ああ、笑い声が煩い。


『痛かったんだぜー。』
そんな口を利くな、ウソップ。
そんな風に笑うな、ウソップ。
こんなときの、お前の嘘は聞きたくないんだ。
嘘に紛れて、お前の悲鳴が聞こえそうなんだ。

人には決して向かわない悲鳴。
誰にも絶対に明かさない、お前への悲鳴。




早く眠れよ。
あったかくして。
ああ、そんな突っ伏したりじゃなく…仕方ねぇなあ。


ゆっくり眠れよ。
そして明日は、話を聞かせてくれ。
あったかくなるような 話を。



とにかく今日は寒すぎた。












***
ゾロから鼻提灯が出てませんでした記念。