おかえり


何気なくかけられた言葉。
闇の中、息を潜め、どうか見つからぬようにと生きてきた私が、
それひとつに戸惑い、揺らいだ。
あの時確かに隠し切れていたか。
私は今でも自信がない。

ロビンになら、安心して話せるんだ、なんて。
いとも易く心を許してしまう子どもたちの言葉に
私はこたえる術を持たず ただひたすら立ち尽くす。




進むことを忘れたことはなかった。
生きる場所を探す
その苦しみの中生き抜くためにも 忘れてはいけなかった。
まっすぐ
まっすぐ進む
それだけを求めて 生きた。

帰る場所なんてないほうがいい。
進み続けることで、ようやく私は生きているのだから。




なのに私は
あの無邪気でふてぶてしい 太陽に眩んだのだ。




あのやんちゃで暖かな船の中、私はずっと迷子だった。
おかえり
そんな言葉は似合わない。


闇の中
ようやく私の目が見える。
ほら、あそこが進むべきところ。
もう迷子にはならない。







「よくぞ帰った、ニコ=ロビン」











帰る場所など、ない。