埴生の宿



伸びだ腕がおれを引き寄せたのでおれは青い空を飛んだ。
まるでどこかのヒーローみたいだ。
そうだろチョッパー、惚れるなよ。
カームベルトにアッパーヤード落下、あとまだあったろ、覚えてるかな。


握った手の先、船べりでぴょんぴょんと跳ね回る姿が見えたのでおれはぶるぶると手を振った。
しかしナミ、それをするにはそのスカートは短すぎるだろ、ついこの前も
倒れたおれ様に丸見えパンツ。
おかげで女への幻想とやらは完全に消えた、いっそすがすがしいさ。


青い空のかわり、ハナミズまみれの仲間の顔が飛び込んできたので思わず笑っちまった。
あんまりにもおかしいからだ、なあルフィ、お前も笑ってた。
それだけじゃねェ、お前はぐるんぐるんまわってた、サンジ。
おれはレディでもねェってのによ。
本当ははしゃぎたいんだよなお前、いつだって。



笑って笑って、笑って泣いて、相変わらずだ。
そうだ、どいつもこいつも、忙しい奴らだったんだよな。




伸びた腕の引き寄せる先へと、温かい手が導いたのでおれはそれを放さなかった。
黒い旗が青い空に浮かんで笑っている。
笑いかけたら、とたんにどすんと
「いでっ」
ごつい胸にぶつかった。

「よォ」


おかえり

と言いながら鼻先をつまむゾロはこの上なくご機嫌で、
笑いたかったはずなのになんだかうまくいかなかった。


手はずっと温かいままだったのでおれはもう一度力をこめた。
ナミの指が頬をひねる、方からロビンの手が咲いてそれに加勢する。
よぉ男前、とでかい大工の手がおれの頭をガシガシと撫でた。
迎える手はどれも荒っぽくやさしい、海賊だからな。

そういやあの時もそうだった、ルフィ。
カームベルト大脱走、メリーから放り出されたおれをお前は助けてくれたんだ。
荒く温かい手がおれを家に導いてくれた。









おれの家はここにある。
他に帰るところはない、おれが捨てた。


そうだ
今度こそ、おれが選んだんだ。









笑う間に、今度は船が空を飛んだ。
向かう空は目が眩むほどの青。
その青がまるで愛のように熱かったので、思わず目から汗が出た。








***
原作がさっぱりしておったので
思わず歌にのせて妄想。