5.法王(宗教を支配する教皇)・・・秩序・慈悲心・謙遜・包容



「報告いたします!」
「何だ」
「近辺の海賊三団をそれぞれ捕縛いたしました、懸賞金、合計で9825万ベリーであります」
「頭は捕らえたのか」
「はい、全て」
「何人だ」
「はい、三団合計で68名であります」

わかった、と伝え、電伝虫を放り投げた。
「え」
「テメェで報告しとけ」
「しかし大佐、私の情報の確認を」
「おれにはもう言ってある、よくやったと言ってたと伝えとけ。」
「はぁ」

不服か?と尋ねると、慌てて面を正してその軍曹は電伝虫で話し始めた。


砂の国を出てどれほど経ったか、幾たびかの時化の後、海は凪いだ。
優等生の同僚から、追っていた船の情報が途絶えたことを聞いて
今はただ指針の指す方角に従って船を進めていた。
そろそろ新しい島の気候海域に入ったか、と思うや、海賊共が小競り合いをしていたので
まとめて捕らえるように指示を出したのが40分ほど前。
その隙に逃げようとしたもう一船もつぶさに捕らえた。

犯罪会社の連中相手の大仕事の後にきた、この猶予。
それでも部下たちの士気も戦力も衰えてはいなかったことにおれは少し満足した。


「た、大佐」
「何だ」
「そのう、海賊を捕らえた理由を聞きたいと、その、上層の方が仰られてまして」
まただ。
今度は何だ。シマ争いか、海軍に飼いならされていた連中だったか?
「貸せ」








海賊だから捕らえたのだとだけ伝え、交信は滞りなく終了した。
相手の返事は聞いていないがこれもまた、いつものことだ。
悪態ついて受話器を置くと、気弱な軍曹は肩を震わせた。

秩序の番人が犯罪者に手を貸すなんてどうかしている。
秩序より名誉を追っかけて番人同士争うなんざどうかしている。
こんな下らないことがまかり通ってりゃ海賊だって付け上がるだろう、
厄介ごとは増える一方だ。


けれど今日はふと思う。
一番厄介なのは、何を考えてるのかわからない海賊どもから
奇妙な善意を受けることかも知れないと。
・・・溜息が出た。


「スモーカーさんっ!」
「おう、どうした?」
「この先のジャヤという島で、麦わら並びにロロノアの目撃報告が入っています!」
「すぐに永久指針と地図の手配だ。
錨を下ろして暫し停泊、操舵に報告、指示があるまで全員待機。以上」


ハリのある声が一斉に聞こえた。

海賊にいいも悪いもあるか。メンツも何もかもクソ食らえだ。
おれはおれの仕事をするだけ。
秩序を守る、その姿勢を貫くだけ。




ジャケットに袖を通した。
背中に翻るのは「正義」。