20年逃げ続けた感想はどうだと尋ねても返事はなかった。
ようよう観念するとはどんな心境の変化かと尋ねても答えは返らなかった。
虚空を見つめる瞳は魔女のように暗く冷たい。
逃れ続けた女が政府に応じた条件は仲間の命の保障と聞いた。
これまでさまざまな仲間を見捨てて生きてきたんだろうに可笑しなことだ。
今更になって巣が欲しくなったかと尋ねても振り向きもしなかった。
仲間がそれほど愛おしいかと尋ねても返事はなかった。
過去はそれほど強いかと尋ねても一瞥もくれやしなかった。
「お前は望みすぎた。」
そう言ってやるとガラスの目が瞬いたのでとりあえずおれは満足だ。