十代好きな私が十代に愛されててほしいがため妄想した捏造です。長め。 異世界から帰ってきて、皆生き返ってます。翔も十代慕ってます。宜しければどうぞ
「い、やだ…嫌だ!……違う、ちがうちがうちがう俺はっ……」 「十代!」 「ぅ、あっ…ぁ、ぁ、ぁ」 「十代、目を覚ませ!」 「…っ…、…」 腕の中の十代は、小刻みに震えて涙を流していた。 見開かれた瞳はなんと悲痛に満ちたことだろう。 脳裏に走る戦慄、 十代には抱きしめる万丈目も、心配そうに見ている翔も写ってはいない。 ただ恐怖ばかりが支配する眼は、 先程まで十代が見ていたであろう悪夢を物語っていた。 「…ぁ、ぁ……ま…じょ、め……?」 「あぁ。」 「ゃ…っ…!は、離…離し…っ」 「大丈夫だ、お前は一人じゃない」 「…嘘、つきだ…っ…や、だ…も、俺…」 万丈目を一目みやると、十代は抵抗を始めた。 どんどんと叩く腕を捕まえ、大丈夫、と繰り返すと 少し落ち着き、また大人しく抱きしめられる。 万丈目の服を弱々しい力で掴む指、相変わらず震える躯。 万丈目にはただ抱きしめるしかできず、翔も何もできないでいた。 「落ち着いたか?…また、夢を?」 優しく問うとコクリ、頷きは悲しい。 静かに落ちる涙は、万丈目の服を濡らしていた。 この間異世界から戻り、メンバーは全て戻ってきたが、 十代の心に刻まれた傷はそう簡単には癒えないままでいる。 一見いつも通り、昔の様に笑って、楽しくデュエルしているような十代だが、 わかる人にはわかる、笑みの下の苦しみは深かった。 泣きそうな顔でそれでも笑い、ごめんな、と時折紡ぐ。 誰にも言わない、胸の内。心配して誰かが聞いても笑うだけなのだ。 そして、ある朝。 いつまでたっても起き出さない十代に、 万丈目が被っていた布団をめくると、そこにいたのは震える十代だった。 焦点があわず、どこも見ていない目からは一筋の涙。 そして一目万丈目を見やると、ビクッと反応した後咆哮。 頭を抱えて、嫌だ嫌だとただ繰り返すその姿には唖然とするばかりで、 十代、と呼ぶことしかできなかった。 しかし、気を失った後目覚めたのはいつも通りの彼。 時々怖い夢をみるんだ、と笑う。 その悪夢がどんなものかなんてわからない、 だがそれが異世界での出来事のフラッシュバックだろうとは見当がついた。 だから、また夢をみても大丈夫なように、看ていることにしたのだ。 今日は万丈目、翔の2人。 明日はヨハン、ジム、オブライエン、明後日も既に決まっている。 皆十代を思い、進んで受け入れた。 そして未だ十代を蝕む闇を改めて感じたのだ。 それがどんなに大きなもので、どれほどの傷を負わせているかを。 「十代…」 「あ、りがと…な…」 微笑む顔に、目を細めた。気を抜くと泣いてしまいそうだ。 柄にもない、と万丈目は自嘲する。 十代は腕から逃れ、翔をみると一瞬顔を歪めた。 兄貴、と昔と変わらない呼び名には首を振って、 兄貴なんかじゃない、と小さすぎる呟きを漏らす。 目を見開く姿には、「ごめんな」と寂しい笑顔。 耐えられずに翔は泣いた。静かに雫だけが頬を伝った。 十代は倒れ、眠りについた。 万丈目がそんな彼の頭を撫で、布団を掛けた。 「万丈目くん」 「何だ」 「ぼ、くは……ひどいことを言った。兄貴に何度も」 「それは、皆同じだ」 「…それでも兄貴は笑って、何回も僕たちに、謝るんっすね…」 どうして。 闇である覇王が目覚めたのも、 ぐらついた彼に自分達が追い撃ちをかけたためなのに。 いつも必死で、皆のために戦って、重荷を背負わされて、 それでも逃げないで立ち向かって行った。 それをどの口で、責められるだろう。誰もそんな権利はなかった、なかったのだ。 突っ走っていた部分はもちろんあった。 しかしそれも、境遇を思えば、状況を思えば、仕方のないことだ。 自分たちがすべきは、怒ることや疑うこと、失望することではなくて、 支えて、手を引いて、目を覚まさせてあげることだったのに。 どんな行動も、仲間を思ったもので、 命を取引きするデュエルも、決して楽しんでしていたんじゃない。 相手を消してしまうことに痛みを抱えながら、 それでも仲間を守ろうとしていた。 そんな彼に自分は、なんと言ったか。 どんな理由があったにせよ追い込めたのは、紛れもなく自分達だったのだ。 孤独の淵に落としたのは、自分達だったのだ。 なのに 「…俺はお前の何を、みていたんだろうな」 翔の言葉を聞いてから静かに呟く。 闇なんて、ないんだと思いこんでいた。 いつしか、十代は自分たちとは違うと錯覚して。 支えてやりたかったのに、出来なかった。 だからもう、これからは、これからは…。 「なぁ、俺は、ちゃんとお前の弱さも、知るから。」 孤独に落ちて 覇王となった十代を元に戻したのは、ジムとオブライエンだという。 もし、もしもその時自分がその場にいたとしても 呼び戻せたかといえば、きっと無理だっただろう。そんな気が、する。 「十代、」 「兄貴」 呼ぶと少し和らぐ表情が、あまりにも穏やかで 屈託のない笑顔の彼が、幸せばかりだったあの頃が、ひどく懐かしく思えた。 ---- 突然ですが十代大好きですあの笑顔と真っ直ぐさが好きです。 でもどんどん鬱になっていく彼が、不憫でみてられなくて辛いです。 明るいのに孤独で、過去色々あったから、協力することを知らない 自分で全部背負い込んで…もっと、仲間とぶつかったら良かったんだろうなぁ というわけで、こんな妄想。皆十代を大切に思ってるはずだよ…! 微妙に万十風味。この二人かわいらしくて好きです。 なんか妙にハマってきてるので、またかいてしまうかもしれませんGX 『手を取っているから、側にいるから、君はもうひとりじゃないよ』 執筆 07/08/26 UP 07/08/31