「好きだ」

あまりの唐突さに、僕は言葉を失ったのだけど。





その一瞬で自らは悟る



「好きだ、吹雪」

「…!」

「……なんでそう驚く」

「そんなの!」

亮の言葉にはっとした僕は言いかけて、止めた。
何も飾らないその言葉にしてやられた、なんて。
恋の魔術師を自負するくせ情けないったらない。

甘い言葉なんて聞き慣れてるんだ。
賛辞をもらえれば嬉しいけれど、それは、そこまでのこと。
なのに、どうして、こうも、

「…急だったからだよ」
「そうか」
「うん。僕だって、君が、好きさ」

動揺して

「まぁ、でなければ、こんな関係にはなっていないだろうな」
「そうだよ。当たり前すぎる、じじ、つ…」

上手く、話せなくなるんだろう



「吹雪」

遮るように亮は

「好きだ」

もう一度その言葉を言って


あんまり悔しいからむっとしかけた。
それでも亮の微笑に怒れない。きれいだと思った。ただ純粋に言葉もなく。

だから僕は仕返しとばかりに、唇に触れる。
ただただ一瞬触れるだけ、それだけの行為だ。

…けれどそのなかにどれだけの想いがあるのか、君は気付く?


「…お前こそ急じゃないのか?」
「別に良いでしょ?」
「悪くはないが」

お前らしい、とまた亮は笑って。

あぁその一瞬一瞬に僕は悟るのだ。
絶対的な敗北、揺るぎようのない差、…一生勝てっこないだろうという確信を


どんな言葉も君が言うから意味を成す。















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たまには余裕のない吹雪をかいてみたかったのです。
亮も吹雪もお互いに敵わないと思っていそうな気がして。

『お前の立ち振る舞いには、くらくらする』

執筆 08/03/11 UP 08/03/29