「ね、亮」
「なんだ?」
「一緒にお昼食べようよ」

今日は天気いいしあったかいし外でさ!

そう言ったいつかの吹雪の笑顔は、とても楽しげで明るかった。
昨日デュエルで、だとかアイドルがどうだとか他愛ない話を吹雪がして
たまに相づちを打ちながら静かに自分は聞いている。

時々黙り込みすぎて「聞いてるの、亮!」なんて言われもしたが、
吹雪は言葉とは裏腹に怒ってはいなかった。
むしろやっぱり楽しそうに、こちらを見て


「日々がすぎるのは早いものだな」
「そうだね、あっという間に亮が見えなくなっちゃった」

今年はきちんと卒業するけどね、と変わらない制服姿で吹雪は言う。

ここ数日、何かと思い出深い灯台の側で、翔の目を盗み二人で会っていた。
きっとこんな夜更けにベッドから抜け出しているのがバレたら怒られるのだろうが、
それもまぁいいかもしれない、なんて思う。
吹雪は僕がきみに会いに行く、と言ったけれど、灯台でと言ったのは自分だった。
懐かしい思い出に浸りたくなったのかもしれない。
色んなものが移り変わっていく日々で、俺は何かを、


「体は平気?」
「あぁ、もう大丈夫だ」
「よかった。もう無茶しちゃだめだよ?」

それはお前のほうだろう、と言おうとしてやめる。
吹雪は昔よりも綺麗に、けれど切なく笑っていた。泣き笑いに近かった。
あの日とは違う、どの思い出とも噛み合わないそれは、なのに不思議と懐かしくて


晴れた日、外で過ごした昼も
雨の日、部屋から眺めた夜も

近くて、とても遠い出来事なのだと
届きそうで、もう届かないのだと
思い知った


「吹雪」

だからこれからは
共に歩もう

今度こそ離れないように















----
4期のサイバー流対決後くらいで。灯台部(笑

『一人の昨日より、君との明日を選ぶ』

執筆 08/01/29 UP 08/02/16