十代目の為に死ねるなら、それもまた本望です。 そう言って君はとびきりの笑顔を俺に向ける。 この距離がどうにもならないくらい遠くなっても。 はたから見れば、何を言ってるんだ、とおかしなことだろう。 いつものように、”おはようございます!十代目!”なんて、 大きな声で頭をさげて、獄寺君はいった。 「獄寺君。」 おはよう、と返せば、ニカッという明るい笑顔。 この笑顔は、自分の好きな笑顔だ。 言動や行動はおかしな部分が多々あってはっきり好きだとは言えないけれど。 これで友達として笑いかけてくれてるのなら最高だが、 そううまくはいかなくて、彼はあくまで俺に敬慕の気持ちをむけるだけ。 俺はそんなものは、望んでないのに。 ただこんなに親しくなれて話せて毎日が楽しくて それが嬉しいだけで。 獄寺君はそんな風には、感じてくれてないのかなと少し悲しくなった。 俺にとっては山本も獄寺くんも同じように大切なのに 大切だと思うその中の、芯の部分が明らかに違ってて 3人でずっと、このままでいたい。 それはきっと無理で。 俺が十代目であるが故に無理で。 自分が十代目だったからこそ出会えたのに、なんという皮肉。 もしもマフィアなどとは何の関係もなく、単なる「沢田 綱吉」だったなら 獄寺君は、俺にどんな風に接したのだろう。 きっと相手にもされてないんだろうなと思うと、また悲しくなった。 確実に友達としての距離はこれから、遠くなる。 だけどせめて傍に一緒に居ていたいと思う。 きっと獄寺くんならば 今後俺が十代目じゃなくなっても ”十代目は十代目”だと、言ってくれそうな気がして そう期待して。 よくよく考えれば、 友達としてでもそうでなくとも 大切に思う気持ちに変わりはないのだ。 …結論をいえばそう、なんとも簡単なことである。 思考がずいぶん遠回りしたものだが、結局は。 どうかなさったんですか、と 不安そうにみる獄寺君になんでもないと告げて 俺は歩き出した。 一人でではなく、二人並んで。 ---- CPではないつもりでかきましたが ツナ獄ぽいとか獄ツナぽいと思われても一向に構いません(笑 本当に大切なんだよ。という想いです。 『俺のことを思うなら、どうか自身を大切に、生きて下さい。』 執筆 06/11/01 UP 06/11/02