夏ももう終わり、と思うと
柄にもなく、少し悲しくなった

 

 
彼は温かい雰囲気で、しかし季節に例えるのならば夏だろうと思う。
これほどに夏が似合う人物もそうはいないだろう。
キラキラと光る金色の髪、眩しい笑顔は太陽のよう。
こんな、ありきたり過ぎて反吐が出そうな表現がよく似合う彼は、
マフィアのボスで、且つ僕の恋人だ。

お世辞にも夏が似合うとは言えない僕とは対照的で、年齢も離れていて、
第一男同士だし、端から見ればそんな風には見えないだろう。
けれど僕は彼を愛していて、彼もまた僕を愛してくれている。それでいいと思う。
性別だとか歳だとか立場だとか、そういう事じゃなくて
もっと深いところで、僕達は求め合ってるんでしょう?と
いつも、心の中で彼―ディーノに言っているけれど、口に出すまでもない。
お互いとっくにわかっているから、こんな関係を続けているわけで、
生半可な気持ちじゃないんだ、だからそれなりに色んな覚悟も出来ている。

…僕はそのつもりでいた。

 

「もう夏が終わるなぁ」

ふと、応接室でそんな言葉。
夏休みといっても色々と僕にはすることがあるため、
ほとんど連日のように学校に来ていたので、もちろん彼との逢瀬もこの部屋。
すっかりくつろいだ様子でソファに座っていたディーノはぽつりと言って
僕はペンを片手に、眉だけぴくりと反応した。

「俺も明日は帰らなきゃだし、恭弥はまた忙しくなるな…」

声音だけでは、なんとなくいったのか寂しいのか、わからなかった。

ただ言われたそれは紛れもない事実で、今現在も忙しいけれど
行事が近づくにつれ僕は更に忙しくなりこうして会う機会も減る。
夏こうして日本にくるために遅らせた仕事を
ディーノはこれからしなければならないだろうし、
1,2ヶ月会え無いのは覚悟しなければいけなかった。

こんな事は、よくある。
今までだって、そうだ。
これからもきっとそう。


ただ、なんだか過ぎていく夏を思うと、
ディーノと過ごした数日を思うと、
悲しくなって、やりきれない気持ちになった。

もしかしたらこの夏のように、
あっという間に二人の日々は過ぎていって
いつか終わりがくるのだろうか
少しの未練と、淡い思い出を残して


「寂しいね」

今まで、終わる日々にそんなこと、思ったことはなかった。
夏に過ぎて欲しくないなんて、僕は夏が好きじゃないのに。
毎年、茹だってしまいそうで鬱陶しくて、それだけだった。

なのに、貴方の存在だけで、日々がこんなにも恋しい。


「…でも終わらないと次は来ねーしな。」
「次?」
「秋は何があるっけ。また新しいこと、恭弥としたい」

いいだろ?と笑うのは、いつもの眩しい姿。

そうか、時間が過ぎなければ
新しい楽しみも発見も、更なる愛しさもないのか。
そう気付いたら、この寂しさも悪くない。


「そうだね、何ができるかな」

なるべくたくさん、色んなことがしたいね、と
僕は彼に笑った。

 

 

 

 
ずっと一緒は無理だとわかっているからこそ、大切にできることがある。

それはたとえば、この日々だったり貴方だったり
僕自身、だったりもするんだ。


だから日々がたとえ過ぎていっても
僕がいつまでも、愛していればいい

そうすれば形が変わっても
二人は変わらないままでいられるから















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愛は永遠でなく刹那的、みたいなのばっかりかいてますね、気付けば…!
永遠を信じたいですが、心は移りゆくもので縛れない、なんて
主観的意見がもろはいっていて申し訳ない気もしますが
それでも一生懸命長く、と努力する姿はとても綺麗だと思います。

本当を言えば、雲雀さん中学生(多分)なんだし
こんな風に終わりがある、なんて思って欲しくもないんですけど;
置かれている立場や性格上、きっと早い段階から
このような思いは、抱いているのではないかと思います。


『別れる日が来ても、愛さなくなっても、愛した事実は残るから』

執筆 07/08/29 UP 07/08/31