「おはよ、恭弥。」

朝目覚めると、ディーノの姿があって、
(ベッド脇に座り僕をみていた。寝顔を見られていたかと思うと少し悔しい…)
彼はとても機嫌がよくて、
(いつもそうといえばそうだけれど、いつもよりへらへらしている)
僕にそう言うとにっこり笑った。

「おめでと」
「いきなり、何で」
「誕生日くらい直接祝いたかったから」

悪かったか、と聞かれたらそうではなく、
嬉しかったけれど、あまりにもこの訪問は突然だった。
昨日電話がかかってきて、電話越しにお祝いの言葉をもらって、
しかしながらこちらに来る様子などまるでなかったし…

ディーノによれば電話のあとすぐに日本へ向かったらしい。
どれだけ苦労してスケジュールを開けたのだろう…
することはきっと山積みで、電話さえ合間にかけた様子だったのに。


「今回はいつ帰るの?」

その質問にディーノは少し切ない顔をした。

「実はもうすぐ帰らなくちゃなんねーんだけど」
「あとどのくらい?」
「30分。」
「短いね…」


ここまで短いのは珍しかった。
一ヶ月近く会っていないのに、たったこれだけなんてどうかしてる。
というよりも自分がどうにかなりそうだった。
けれど久しぶりでもかわらない彼の姿や笑顔や香りには安心して、愛しい。
会って一目みて、それだけでとても幸せに感じる。
純粋に嬉しい自分がいた。どうにも嬉しかった。


「その包みは?」
「プレゼントとケーキ。俺は今食べるけど恭弥は後ででも食べてくれ」

わすれてた、と差し出されたものは万年筆と、丸いケーキ(いつ切ったのか綺麗に八等分され、
ご丁寧にお誕生日おめでとうとかかれたチョコレートまで乗っている)


「…ありがと。」
「どういたしまして」

お礼をいったならまた笑顔のディーノがいた。

僕はディーノに任せてこけられても嫌だったので、皿とフォークを持ってくる。
ケーキを皿に乗せてわたしたら、「悪いなー」と言われたが、
別にこのくらいなんともなかった。けれど、確かに普通は逆なのだろう。
ただ部下がいない今ディーノが何かしたら散々なことになりそうだ…


「一口頂戴。」
「ん?ほら」
「甘いね」
「だよなー」

ディーノが運んだケーキを僕の口に入れ。
ついでに彼の頬についたクリームも取って舐めて。

そんな会話、貴方とぼくと。


けれどお互いそんな甘さは嫌いじゃなかった。
味も時間も、こんな甘さが少し好きだった。

それはお互いがお互いだからこそであり
他の誰でも駄目なのだ。


とはいってもそんな時間というものはあっという間に過ぎるわけで。

「また連絡するな!」
「うん、僕もするよ」
「また会いに来る。」

いつもの言葉を交わす。
つかの間の逢瀬


ディーノは僅かな残り香だけ置いて颯爽と立ち去ってしまった。
僕は朝の淡い風景に寂しさを覚えながら、同時に幸せを噛み締めていた。

自分の生まれた日
僅かでも共に過ごせたことに
そして、この日に対しありがとうと言ってくれた、彼の言葉に




















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雲雀さんの誕生日と言うことで


『僕も貴方も、出会えたからこそ』

執筆 07/05/05 UP 07/05/12