「時々、怖くなるんだ」

そんなこと、貴方の口から聞くなんて思っても見なかったから
僕はきっと、おかしな顔をしていたのだろう。




「何が、」

その後は続ける前に、彼の言葉によって遮られ、言い切ることは出来なかった。
しかし何を続けようと思っていたかすぐにわからなくなって、
続く言葉など持ち合わせていなかったのだろうと思い知る。

こういう時やはり僕は子供で、彼とはやっぱり距離があって
どれだけ背伸びをしても駄目なことがあるのだと、実感して悲しくなる。
でも少し無理をすることが、無駄なことだとは思っていない。
そうすることで縮まる距離も、少しは、確かにあるから。

「いつか、やっぱり、終わりがくるんじゃねーかって」
「貴方いつも、僕がそういうこというと励ますくせに」
「そーなんだけどな」

彼の微笑は少し翳っていた。

知ってるよ、明るいだけじゃないってことも、
色んなものを背負ってるってことも
貴方の生き方、歩む道、理解しているつもり。
割り込んだ僕だけど、貴方を追い越せない僕だけど
それでも貴方の隣を歩きたいから努力してるつもり。

だけどやっぱり、
貴方に言われると、
僕だって
考えたくない現実に
直面してしまう
それは否定しない


「…ちょっと思っただけだし、
……まだまだそんなのこねーって、うん、ごめんな恭弥!」

多分難しい顔をしていた僕に、彼はそういった。

「…そうやって、誤魔化さないでよ

それは貴方の気持ちなんでしょう?
怖いなら怖いでいいじゃない、もっと教えてよ
きれいなところを見せるだけが、護る事じゃないって
貴方は知ってるはずじゃない、それに僕が」

守られるばかりの人間じゃないって
まだ、貴方を守るにはまだまだだけど
黙って護られているだけの人じゃないって


「わかってる、くせに…」


関を切るように溢れ出た言葉。
上手くは言えていないと思うけれど本心。

困惑する?

きっとあなたがこわいのは
無くした過去があるからで
間に合わなかった出来事や
変えられなかった気持ちが
刻みつけられているからだ


「…ごめんな、ありがと」

好きだぜ、愛してる、ありがとう、ごめんな


何度も何度も彼は、僕を抱き締めて口にした。
僕はと言えば、抱き締め返して、
少しこどもみたいな彼の頭を撫でて
頷いていることしか出来なかった。





















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いつもと違って、若干弱いディーノさんなヒバディノ。
明るくいて欲しいけど、一人で背負って欲しくない複雑な雲雀さん。

『怖さは二人で分け合いましょう。幸せは持ち寄りましょう。それがふたりであゆむこと』

執筆 07/10/29 UP 07/10/29