繋がったてのひらに彼はにこりと笑った。


真っ暗で星が綺麗で、
それはここが都会から大きく離れていることを表していたのだけれど、
そんなことはちょっとした違いに過ぎないのだ。
自分にとって重要なのは隣に彼がいるかいないか、それだけ。

現に今どうかといえば隣には彼―ディーノがいて、それだけでも僕は十二分に満足。
しかも忌々しい黒服もいないし、気分は上々。
(それによって彼がとんでもなく鈍臭くなっていることには目を錘ろう)


そんな自分を理解しているのかは定かではないが、少なくとも彼は機嫌がよかった。
といっても大抵プライベートならニコニコへらへらしていることは
最近理解したので今日が特別なのかはわからないけれど。

話は飛ぶが何故都会を離れているかといえば、今は修業中なのである。
リングがどうのボンゴレがどうのとそんなことはどうでもいい。
興味のないことは聞く気もない。

ただ一応話に乗っておけば彼と長く一緒にいられるのは明白だった。
現にここ最近衣食住を共にしているようなものだし、今隣にいる。
しかも触れ合っている。

彼は笑顔だし、僕も内心笑顔だ。こんな幸せはないと思う。
つかの間とはいえ大切な時間だ。こんな幸せはないと思う。


「ディーノ、キス」
「え、でも」
「部下だって邪魔するほど無粋でもなければ気の回らないような無能でもないでしょ」
「…。しゃーねぇ、なぁ…」

そういうと彼は少し屈んで目を閉じた。長い睫、整った顔。
この瞬間に僕はいつも恍惚。きっと彼はしらない、僕の感情。

背がディーノより結構低い僕は
(成人でイタリア人なんて高いに決まってる。断じて僕が低いわけじゃない)
いつも、彼が座っているかこんな風に屈んでもらうときにしか口付けることができない。
悔しいけれど事実。

キスだって随分僕は下手で、
それも当たり前といえば当たり前なのだけれど、悔しかった。
ただ今はそうでもないと思う。
出会ってからまだあまり経っていないけれど回数は重ねていた。


全ては僕のものだと誇示するように。

乱暴なのは独占欲のせいだった。
僕のせいであり僕のせいではない。
乱暴なのは独占欲のせいだった。


ずっといつまでも自分だけが彼を、
自分だけが彼の瞳に写って、自分だけが彼に触れられればいい。


「貴方は誰にも渡さない」
「…え?」
「何でもないよ。」

不思議がる彼は間抜けといえば間抜けでかわいいといえばそうだった。
もっと彼を自分に夢中にさせてやるんだ。
そうして離れられなくしたら僕の余裕のなさも歳の差も、きっと越えられる。


だから僕は貴方に精一杯の愛を。
いつも少し背伸びして。


だって等身大じゃとても足りない













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余裕のない雲雀さんをご希望して下さる方がいらっしゃったので
子供っぽさ、ここのヒバディノらしさを全面に出したつもりのヒバディノです。
相互リンクありがとうございました!というわけで、
葵寂様みていらっしゃいましたら、どうぞお受け取り下さいませ。

『ありのままなんてつまらないの。いつだって僕は上を、』

執筆 07/07/06 UP 07/07/07