明日が来なければいい、なんてわけじゃなくて。


「顔色悪いぜ?」
そう心配そうに僕の顔を覗くのは、金の眩しい調った顔立ちの家庭教師で

「…寝不足だからね。」
そう答えれば、「眠れねーのか!?」なんて焦った声が返ってきた。

「なわけないでしょ。確かに音には敏感だけど…そうじゃない。」

目の前の彼…ディーノは、この言葉に一瞬安堵の表情を浮かべ、
しかしそれはすぐに消えて、では何故、とこちらに訴えかけてきた。


「だって、明日が来るじゃない。」
「…は?寝なくても来るだろ?」
「寝たらあっという間で、無駄な時間過ごした気になる。」
「なこと言ったって…」

「別に未来が嫌とかじゃないよ?ただ今日に終わってほしくないだけ。
できるだけ長く一日過ごしていたいの、わかる?」

感覚の問題だけどね、と付け足して。ディーノははたしてわかってくれたのだろうか。

寝ない夜は
例えば貴方の寝顔をみて
貴方がくれたものを思い返したり
そんな、時間でいい。


「貴方忙しくて、なかなか日本に来られないじゃない。
…早く寝ると早く貴方の帰る日が近づく気がする。」

明日が嫌いなわけではなくて
貴方となら新しいことを沢山経験したいとも思うし。

だけど貴方がいないと何もかも色褪せて見える。
だから貴方がいるときはなるべく長く長く一日を感じていたい。


視線を他のところに泳がせていた僕はふとディーノを見た。
すると、ものすごく幸せそうな、笑顔。

「なに、笑って」

ついそう漏らせば、だってそれ俺と長く一緒にいたいってことだよな?と返された。

違うよ、と言うのは認めたくないからだ。
だって貴方より僕のほうが執着してるみたいで。


「どうしよ、恭弥…俺すっごい嬉しい。」
「勝手に喜ばないでよ。」
「いいだろこのくらい!それにホントに違うとしても、
…俺は恭弥と、たくさん一緒にいたい…ぜ?」


なんでそんなこと言うの。
真っ赤になりながらなんて貴方はずるい。
そんなこと言われたら認めなきゃならないじゃない。

こんな風だから
僕は貴方から逃れられなくて手放せなくて


大好きだとか簡単な言葉じゃ言い表せないよ。

心の中
溢れっぱなしの
貴方のこと



毎日が短くて早いのは
一般的に楽しいからだそうだ。

僕が
そうなのかはわからないけれど
貴方となら
なんだって良い気がする。





















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『俺だって同じ。ずっと傍でずっと傍で、時を過ごしたい』

執筆 07/03/04 UP 07/04/28