寂しそうな目をするの、貴方
苦しそうな顔をするの、貴方

そしてそんな姿を映して、泣きそうになるのは僕。


「離せぇ…」

低くて切ない声は聞こえないふりをした。
離してしまえば終わる気がした。
何かが、



ボロボロになった姿で応接室にやってきた貴方を
僕はソファに倒して(髪を引けばそれは容易だった、相当体は重傷らしい)

僅かな力で抵抗するのを、馬乗りになって押さえつけて
コートのボタンを外し、肩を露出させれば、見えるのはくっきりとした痣
痛々しいそれに歪む表情を、僕は必死に隠すけれど
貴方はそれをすぐに見抜いて悲しそうにする。


あぁ、この表情は僕を苦しくさせ
あぁ、この感情はどうにもイタイ

僕は悪くない、僕は悪くないのに
何度自分にそういっても
この苦さは、消えないままで

貴方が、心を、奪っていく。



「また、傷だらけ、だね…」
「ヒバリは、何も」
「うん、でも、だって、守りたいよ…」

上半身を持ち上げて、貴方は座る。
僕は馬乗りになったまま、貴方に抱きつく。
規則的な心音は、僕をくらくらさせて
意識をはっきりさせない。ただもっと強く力を。

噛みつくように口付ければ
貴方は苦しそうに、応えるけれど
離れてからあわせた瞳は、僕を見てはいない。
僕を見てはいなくて、ねぇ何処をみてるの?


「よそ見しないで」
「ヒバリ…?」

「もう何処にも行かないでよ。傷つくのなんて」
望んでないんだから。

ただ僕の中で、生きて生きて生きて
それだけが願い。



貴方がこちらをしっかり見て、愛してくれるようになるためには
まだ愛情が足りないと言うのなら、幾らでも与えるから、何度だって紡ぐから

だからどうか必要ならば、僕を求めて。
そうしたら、このどうしようもないものを
吐き出す術がきっと見つかる。



切ない声には聞こえないふりをした。














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鬼束ちひろさんの「イノセンス」イメージでヒバスクヒバ。
鬼束さんの曲の雰囲気は、なんとなく二人に似合うと思います。

片思いのようで、そうでない感じ
傷ついてくるスクアーロと傷ついて欲しくない雲雀さん
それでも雲雀さんの元にいつも来る辺り、スクは信頼し甘えているのです。
そして雲雀さんの想いもわかるから、心配を感じる度辛くなるのです。


『歩く世界は血にまみれた場所』

執筆 07/08/06 UP 07/08/11