「きょ、や」 「え?」 「きょ…や?」 聞き返したことに不安を覚えたのか、彼はもう一度疑問系で呟いた。 僕の側でちょこんと座り込んでいるスクアーロ。 自然と小首を傾げる仕草は、それでも大人か、と聞きたくなる。 口にしたのは多分、僕の名前だろう。 何処かで耳にしたのだが、「外国人は長音が苦手」というのは本当だったらしい。 拗音は発音できているものの、「う」が抜けていて、 僕は「きょ、う、や」とゆっくり言い直した。 「きょう、や?」 「うん、そう。」 「きょうや、きょうや、きょうや…」 何回も繰り返し言う彼は可愛くて、少し僕には照れくさい。 そして初めて呼ばれた名前に、どうして突然、と聞いてみた。 「跳ね馬が、そう呼んでるだろぉ?」 「あぁ、そういえばそうだな」 「ちょっと対抗してみた、んだぜぇ…?」 上手く発音出来なかったけど、なぁ… 普段僕の名前を聞く機会なんて滅多にないのだし 間違ってもおかしくないと思うのだけど、彼は少し俯きがちだ。 「呼んでくれたことの方が僕は嬉しいよ」 「きょうや?」 「うん、これからもできれば、名前がいいな」 「…別に、そのくらい…いいけどなぁ…?」 赤くなって、目線を逸らして もう、本当にこの人は… 「僕も貴方を呼ぶ機会、増やそうかな」 「べ、別に増やさなくていいぞぉ!」 「照れるから?」 「う゛ぉぃ…意地悪ぃぜぇ…」 それでも目が合うと、くすり。 彼は笑うから、そんなに悪い気はしていないらしい。 すくあーろ、スクアーロ、スクアーロ 呟くたびに幸せで、心はふわふわ浮かんでく。 今度僕も呼んでみようか 何度も何度も彼の名を。 ---- 東 椋さんへ捧ぐヒバスク。 名前呼び。ちょっとさせてみたかったのと、 スクが少々片言だったらかわいいなぁ、と思ったので…(笑 お互いツンテレ。目が合うだけで赤くなっててもいいな、とか…←どこの乙女! 二人はとってもかわいいと思います。お互いかわいいと思ってると思います。 よろしければ相互祝いとしてお受け取り下さいませ。 『そしていつか、お互いの名を上手く呼べるようになればと』 執筆 07/08/08 UP 07/08/09