抱き締めたぬくもり。

優しい。
暖かい。

何とも言えない心の中
いっぱいになる、けれど
苦しくないそれ

あぁ僕はずっと感じていたいこれをけれどそれは無理な話
でいつかいつかどうしようもない別れが来てしまう避けら
れないどうしてだろうこれは罪人の僕への罰なのだろうか



「犬…。」

俺が先に抱きついて。
いつものように、微笑みながら抱き締め返してくれて
頭を撫でてくれて、
そうしていたら急に、
力が込められて
顔はみえないけれど辛そうな、骸さん。
俺に体重をかける、その姿は
いつもよりずっと弱々しくて
こんな骸さんは、滅多に見ることがない。

不安、心配。
いつも、何でもないと言うから。
こんなのはおかしいのかもしれないけれど
こうして見せてくれる時はまだ安心できる。

一人で抱えてるのは
見ていて辛いから
一人で抱えてるのは
俺も千種も、望んでない…。


「骸、さん…。」

大好きれす。ずっと、大好きれす。

いつもいつも言うこと、飽きずに言うこと。
くりかえしくりかえし
溢れてくるから。
そして、骸さんが
俺が居ること、千種がいること、忘れてしまわないように
骸さんにそんなつもりがなくても
走りすぎて、抱えすぎて
俺たちも痛みを、少しくらいなら、わかるってことを
忘れてしまう、ときがあるから。

そんなことがないように
ぎゅっと、ぎゅっと俺も抱き締め返して


骸さん、震えてる…?


何が、そんなに苦しめるんれすか?
教えてくらさい…。
骸さんがいうまで聞かないって、
千種と決めたし、それが正しいって思う、けど
それでも、言ってほしいんれすよ
分けてほしいんれすよ

全然役にも立ってないかもしれないれす、けど
俺等だって骸さんを守りたいんれす
守られてばかりじゃなくて

ねぇ骸さん



「突然すいません、犬。痛くなかったですか?」
「へーきれす。痛くなかったれす!痛くても我慢します。」

「そんなこと言ってると殴りますよー?」
「えっ!そ、それは嫌れすよ!優しい方がいーれす。」

「クフフ。仕方ないですねー犬は」

ふわふわ。

頭を撫でられるのが好き
本当は優しくなくても
なんでも骸さんなら好き


骸さん

いつか教えてくれますか?

深い深いその、暗闇。


消えるなんて言わないで下さい。
いつかがいつなんてわからないじゃないですか。
それはまだまだずっと先の話
長い長い年月の先かも、しれないじゃないですか。

それにもし明日でも
俺は、
骸さんと居た日々
後悔なんてしません。
ばかだけど、
この日々を忘れたりは、しません。
それはきっと千種も一緒です。
3人で居られて幸せです。
昔を忘れたわけじゃないけど
それ以上のものが今はある。

骸さん

輪廻して、本当に、記憶がなくなるとしても
俺と千種の奥底には骸さんがいます。
出会ったらきっと、骸さんのこと、気づけます。

その自信が、あるから。

そんなに不安にならないで下さい。
骸さんが不安だと、俺も、悲しく、なります。

笑っていて欲しい。
憎しみに囚われていたとしても
せめて僅かでも
笑っていて欲しい。


だからこのぬくもりですら、いつか消える幻だなんて悲しいこと

















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Cosmos様の選択お題、「いつかこれも消えていく」をお借りしました。
色々なことを知っていて、だから消えると割り切ろうとしている骸様と
未来を信じたい、信じてる犬ちゃん、千種。

『それは事実なのかも知れない、けれど言ってほしくない。』

執筆 07/03/20 UP 07/03/27