「あなた達は、何があったら生きられますか?」

たとえばいろんなことがあって、僕が居なくなった時とか。


そんなたとえ話なんて、聞きたくない、と思った。
いつか確実に起こるのを想定しているようだったから。
俺は犬みたいにはっきり言えないけれど、
犬と俺の意見は同じだった。

「骸様がいないなら生きられない。」

正確に言えば、少し違う。

骸さんがいないなら「生きている意味がない。」
というのが正解だ。



「生活費は、要りますよねーって二人でも稼げますか。なら安全の確保とか…?
なんだか実際考えると、できる事って少ないですねぇ。」


俺が答えなくても、続けていく骸様。
いつも通り、という風にしているが
いつもとはかけ離れた、雰囲気。
そんな軽い偽りなんて見破れる。長く共にいるのだから。


「骸様。…知っていますよね、俺達は骸様のために存在するんです。」

ただ貴方のためだけに存在し
ただ貴方のためだけに行動し
ただ貴方のためだけに思考し
ただ貴方のためだけに消滅する。

貴方にとって分かり切ったことのはずだ。
どんなに恵まれていたとしても
例えなんでも手に入ったとしても

憎しみも苦しみも
すべてが無くなったところで

俺も犬も貴方がいなければ何もないのに等しいってこと


「離れるようなこと…そんな話、やめて下さい。」
「おや、そんなつもりはありません。ただ、ちょっとした話です。」
「そう、ですか…」
「ええ。」

そして微笑み。
この、笑みだけは
読めない。
どれだけ見ていても
本心が読めない。

ただ思いはどうあれ、骸様がどう思っていようと
ついて行くだけだから
読めなかろうと
どちらでも同じ、だけれど。



貴方が俺たちに残せるもの
逆に、俺たちが残せるもの


「ではこれも例えですが…。自分は骸様に、何か残せますか?」

「そうですね、それでは」

この思い出を。

一緒にいた、時間を。




とっくに分かり合っているのではないか。
どちらも同じ。
残せるものは形にないもの。

















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Cosmos様の選択お題、「もしも残せるものがあるのなら」をお借りしました。
3人をかくと、(ここで出てきているのは二人ですが)骸さんが少し弱くなります。
そして二人にすごく優しくなります(笑)
お互い大切に思いあってるのが好きです。


『確実だと言えることはなにももっていない。
それでもこんな淡い時間だけを胸に生(逝)きたい。』

執筆 07/03/20 UP 07/03/26