「ラル!」
「気軽に呼ぶな!」
「ラルーおらっ」
「あ、頭を撫でるな!」
「教官おもしれーなぁ!」
「お前はいつも…馬鹿にして…!」

振り返ったなら、コロネロは笑って
振り返ったなら、くしゃり、また頭を撫でる、手。

いつからこんなに大きく、なったのだろう。
数年しか経っていないのに、いつのまにか。
コロネロは自分の背を追い越していた。
大きくなって、自分をすっぽりと包んでしまえるまでに。

思い出したように、思いつきのように、
そして彼は抱き締めた。
心地よい力。どうしてそんなに大人な顔に変わるのだろう。
たった数年違いの年。けれど教官と生徒。けれど彼はもうとっくに
そんな枠は壊してしまって、思いっきり笑うのに、なのに
どうしてこんなにも大人な表情も、できるのだろう。

そんな風なら自分は、静かになるしかなく
抵抗する理由もないなら、ただすっぽりおさまっておくまでだった。


”好きだ”なんて、告白以来ではないだろうか?
今改めて突然、どうかしている。
けれど丸め込まれる。嬉しいからだ。どうにも、嬉しいからだ。


幸せだった。
自分で気づかないほどに幸せだった。
きれいな日々は
今はもう跡形もなく。



「やめろ…!無茶だ…行くなコロネロ!」

煙と鼻につく匂いを感じていた。
お前を守るためだ、と彼は言って
自分は顔と腕に火傷を負った。彼は逆戻りののち停止。

時は止まるのに、
あの頃は戻らない。
時は止まるのに、
私は進み見続ける。

もう一緒には、歩けないのかも知れない。
それでもまだ自分は彼を求めている。わかっているのに。












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少々原作よりの過去捏造です。幸せな二人を原作で見たいなぁと、思います。


『もう一度共に歩めるのなら、何も要らないのに』

執筆 07/05/29 UP 07/07/19