ああ、忌まわしい日。何故こんな日があるのだろうと思想。
今日は俺の誕生日だ。生まれたくなどなかった、と昔は思っていた。(実は今でも生まれてこなければ、と)
家はそこそこ金持ちの家で、けれど両親は最低だった。
父親はヤク中、ヘロインジャンキーで母親はというと夜な夜な男を喰っては捨て、などという最低な安っぽい娼婦のような母親であった。
(母、父、といえるかどうかすら分からない)
祝われたことなどない。というよりもスクールに行くまでは自身の誕生日を祝う、などという行為すら知らなかった。
友人の誕生日パーティーに招待され羨ましいと思った。
それを知り、自身の誕生日を虚しく一人祝っては泣いた幼い日々を思い出した。
苦々しい思い出に口内の壁を噛んだ。ほんのりと鉄の味が舌に広がっていき何故だか落ち着いた。

…闇に走った今の俺にとっちゃ誕生日を祝うなんて事ほど無駄な動きはない。
ああ時間を無駄にした、と頭を振るい曇った空が見える窓に一瞥して部屋を出た。


(今日は雨だな…。)


そう思った数時間後、とうとう雨は降り出した
雨は好きなのだけれど嫌いだ。
無くした左腕がずきずきと痛みに悲鳴を上げるからだ。
義手との境目は熱く、激しいときには激痛を伴うことすらある。
俺は任務もないことだし、と不貞寝をすることに決め込み白い海に身を投げ込み暗い渦に呑まれていった。


眠りから覚め、特にすることもないので恐らくはヴァリアー幹部の一人は居るだろう大広間に向かった。
廊下はいつもより心なしか暗く見えた。

「…ボス」

長い長い廊下を歩いていると前方からは我らがヴァリアーのボス、ザンザスが向こう側から歩いてきた。

「どこかへ行くのかぁ?」
「……お前も来るんだよ」
「は?」

拒否んど皆無。その場からまるでラリアートをされる用にして俺はザンザスの用事に付き合わされたのだった。(もとい、拉致ともいう)


「おいっ、どこに行くんだよぉっ!」
ずるずると引きずられるようにして乗り込まされたブラックのリムジンの室内でザンザスは黙秘権を執行。

きゅっ、その音を聞いて横を振り向くとザンザスがワインのボトルを空けていた。
見事な赤色のワインが注がれたグラスは二つでそのうちの一つは俺に渡された。

「なぁ…何か、あったのか?」

祝い事など何一つないではないか。そう考えた俺の脳は素直に渡されたワイングラスを受け取れなかった。

「別に……。それより、俺からの酒は飲めねぇってのか・・?」
「い、いやそういうわけじゃねぇけどよぉ…」
「なら、飲め」

ああその瞳にものを言われればもう反論は出来ないだろう。
俺は顔を顰めながらもそれを飲んだ。

一口で分かった。そんじょそこらのとは全然違う。
少し離れたところに置かれたワインボトルの銘柄を見た。

ロマネコンティ。しかもかなり古いものらしい、優に100万は超えるだろう・・


過ぎ行くネオンライトはだんだんと遠ざかっていき次第に光は見えなくなった。
「なぁ、一体何があった・・「着きました」

俺の言葉は運転手に遮られ結局真意はつかめないまま下車することとなった。
霧雨。はらはらと落ちるそれは少し火照った頬を冷まし心地のよいもので。
いつしか腕の鈍いは取れていた。


車は俺が降りると街へと向かい俺たち二人を残し、静かな丘はまるで世界に二人だけしか居ないような錯覚をもたらした。
ザンザスはあいも変わらず黙秘権を執行し続けたままどんどんと暗闇の奥へと進んでいく。
何かしら意図はあるのだろうがまったくつかめないまま俺はザンザスの後を着いていくしかなかった。

「……着いた」
「え?」

小高い丘から見えた景色は何ともいえないくらいに美しく、闇を色とりどりのネオンがまるで闇色のイヴニングドレスを飾っているようだった。

「…これを、俺に見せたかったのかぁ?」

それは我らがボスにしてはとてもロマンティックすぎて信じられないような行動だ。

「…今日は、お前の誕生日だったろ・・」


どうして。どうしてこいつは俺の誕生日を知っているんだ。
いや、問題はそんなことではない。ボンゴレの情報収集力を使えば俺の誕生日などたやすく割れ出るだろう。
けれど何故?俺の誕生日を祝う義理でもないだろう。

「ど…して・・?」
「…お前のあんな辛気くせー顔見せられちゃこっちまで滅入るんだよカスが」

そう言ったザンザスの顔は暗闇の中で少しだけ、赤く見えた。

「…ありがとな、ザンザス」
俺がそう言うとザンザスは俺に背を向けながらこう言う。
「…ちょっと、こっちこい」
「・・?」

少し近づくといきなり腕を引っ張られていきなりキスをされた。

それは、甘くて熱情的で、体の心から蕩けてしまいそうなキスだった


「・・愛してる、スクアーロ」
「…!俺も、だぁ」



そして最期は誓いの、言葉で


雨はいつの間にか止んでいた。





の日はして
(こいつの為に俺は生まれたと確信した瞬間)












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花鳥風月さんより頂きました、誕生日祝いザンスクです!

リクエスト聞いて下さって、曖昧な答え(スクアーロならなんでもなんて…)をしたにも関わらず、
こんな素敵なザンスクが!ザンスクが帰ってきましたよ旦那!
逆カプなのに…!逆カプなのに…!本当ありがとう!
私はどちらが攻めでも好きですし花の文章大好きです!

と言うわけで、今度スクザンでもお返ししなきゃなぁ…と思っております(笑)
私のはなんというかたいしたこと無いですが。
甘いザンスクを本当にありがとうございました…!とっても幸せです!

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