目の前の笑顔があんまりにも綺麗でいつでも綺麗で無邪気でだから僕は
止められなかったのかも知れない、笑わないでなんて言えない、それは
あまりにも残酷だからだけれど今のこの状態の方が尚残酷ではないのか

僕にはわからない
わかりすぎてわからない
認めたくないのかもしれない

使うと決めたのは僕で
使われると決めたのは二人で
だけど時々そんな支配的な立場ではなくて対等に

対等に、愛して…
あいして

穢れた身には無理な話か
使うと決めたのは自分だ
だから、少し寂しくても
これはきっと変わらない
これはきっと変わらない


こんなにも好きなのに
大切なのに
一人じゃないと駄目だと、思っていた自分が
段々離せなくなっている、もう離れられない
だけど
上の立場からしか
伝えられなくて
伝わらなくて



「犬、犬」

「なんれすか、骸さん」
「…何でもないです、けど」

ただ名前を呼んで、そんなことしかできない

「…犬、もう少し、寄って下さい」
「これでいーれすかぁ?」

骸さんがいうなんて珍しいれすね、と犬は微笑んだ。

大きめのソファの端っこに寄って

傍にあった手を絡めて
口内を犯した

倒す上体に
犬は抵抗しない

服に手をかけても
何度もした行為
慣れているのかもしれない
けど


「嫌じゃ、ないんですか」
「今さら、」
「ええ、ですけど、犬は、嫌じゃ」

「そんなわけないじゃないれすか」

骸さんのこと大好きれすから
骸さんが全てれすから


「そんなの」

「骸さん最近、俺と千種が一緒の時、寂しそうにしてます。」


けど俺にとっては 骸さんも千種も、同じように大事で
すきの違いは、わかりませんけど
千種より骸さんを優先するのは、俺と柿ピーで決めたことれすから


「骸さんも俺らも変わりませんよ?失礼かも、れすけど。」

「…犬、」

「特殊な目だとか強いとか、そういうのはちがいます」
でも、
同じもの、れすよ?

人じゃないかもしれない、のも、含めて

だから


「寂しそうに見ないで下さい、骸さん」

わかってます
大事に思ってくれてること、とか


「…ありがとう」

犬の言葉は率直だった。素直で飾らない、ものだった。
的を射ていて怖いくらい、だから嬉しくて、嬉しく、て

もっと信じていいのかもしれない
もっとちゃんと伝わっていると自惚れても

支配的立場はそう簡単に変わらないものの
それ故にできることがあるとも知っているから


「大好きです」
「はい」
「愛してます」
「…はい」
「今日は…」

犬より僕が言いますね…、と
呟いたなら、犬は照れたようにして

それでもやっぱり
綺麗な綺麗な姿だった。

この笑顔があるから
この綺麗な子達がいるから

自分がどんなに穢れても
生きていられるのではないかと思った。




















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『支配者というのはいつもどこか孤独で多くを背負っている』

執筆 07/03/27 UP 07/04/30