「ねぇ、貴方は」

静かに紡がれた問いは

「僕を怨んでいるのではないのですか?」
そんなもので。


どういうこと。この男は恨んで欲しいのか?
(なわけもないだろうけれど。そんな酔狂な話あるわけ)

そして恨むことを望むと望まざるとに関わらず俺は、俺は。


「貴方の、大切な人たちを…傷つけた、僕を。」
「…ええ。」
この男を恨んでいるに、違いなくて。


「ではなぜ今こうして、僕と共にいるのです?」

それは。

とても言い表せない、けれど。いやもしかしたら
とても簡単な事なのかもしれない。たった一言で終わるような。

あぁ俺は今この目の前の男を恐怖の対象として恨みの対象として
そして哀れみの対象として、なんとも外聞的には嫌な風に見ているけれど

もしか、したら。
もしかしなくても、とっくに


「貴方は僕を愛しているのでしょう?」

気付かせないで。知っていたけれど貴方の口から聞きたくなんて無い。
貴方は俺をどうとも思っていないのでしょう?
俺のこの葛藤を楽しんで楽しんで。

相手に浮かんでいるのは嫌な笑み。大嫌いだ、そんな笑みも瞳も全部。
ぞくりぞくりと走る悪寒と冷や汗は本当に拒絶を表しているのに。
なんてこと。どうして俺は受け入れようともしているの?
(信じられない。この男のしたことは忘れられないのに何故!)


「僕が怖いですか?僕が憎いですか?僕が可哀想ですか?僕が愛しいですか?」

この男は全て見透かして、俺は隠せない。
なんで、なんでなんでなんでこうも。
娯楽の対象でなんていたくない。愛されたいと言えば嘘になる。
愛されたくないわけでもなくて、じゃぁこの想いはいったい何?



「答えないのは何故です?貴方は僕を大嫌いで、同時に好きなのでしょう?」
”僕も愛していますよ。だからもっと愛して下さい”


嘘吐き。

こんなひどいアイロニー。
いっそ本当に嫌いになれたら、いいのに。

嫌いなままで愛して、なんて。
そんなの、そんなの











どれだけ俺を縛り付ければ貴方は気が済むの。















『顕著すぎる皮肉に昏倒』

執筆 07/01/14 UP 07/01/17