それでも、この時そして今も彼の傍にいたいと思ったのは事実です




「君を連れ去って閉じ込めて、僕にしか会わせないようにするというのは、どうでしょう。」

いい考えだと思いませんか?などと、到底頷けるはずのないことを、
目の前で足を組み俺の顔を覗き込んで僅かな微笑を浮かべる男…六道骸は言った。

びくりと反応して唖然としてしまえば、゛冗談ですよ゛なんて
クフフと声を出し笑みを深め、俺との距離を縮める。



「君は愛されていますね。」
皆さんに。
そして同時に君も愛していますね、沢山の人を。


いわれた言葉はたしかにそうで、それは最近気付けた幸せな事実で否定はしない。



「その中に僕はいますか?」
「…はい。」
「それでは僕は駄目なんですよ。」

僕には君一人いればいいのに、君は僕一人じゃ駄目だなんて、不公平じゃないですか。

少々迷いながらに肯定したならそんな風に返されて、
この人は… あぁこういう人だったなと再確認した。

何を見、聞き、思ったのかわからないけれど
何かが彼の独占力を増幅させたらしい。


「確かに…そうですけど、俺は…貴方がいなくなったならすべてないのと同じです。」
「そうですか。」
「きっとほかの人は…悲しくても立ち直れます、なくしても。だけど…貴方は違います。」
「へぇ」

満足はしていないようだけれど、とりあえずはわかってくれたらしく
少し雰囲気はやわらかくなった。



「僕の傍にいて下さい。」

ずっと。


そう紡ぐ彼は決して悲しげな表情ではなかったけれど
ひどくその瞳は孤独に満ちて
寂しげで


「はい。」

そう言った自分は罪だろうか。



すべて捨てるなんてできるわけがなく
必ず選ばなければならなくなる日がくるのに。


わかっているのに。







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やたらながくてごめんなさい(タイトルが) のくせ、話は短め。
複雑な、ツナの心境。骸のことは怖いけど好きで。

骸を知れば知るほど、離れられなくなる、優しいけれど、それは残酷で。
今一時なんて望んでいないことも知っているけど、溺れてしまう。

そんな、切ない痛い思いを目指してみました。
骸犬をかく前に思いついたものですが、なんて雰囲気違うんだろう…!

執筆 06/10/08 UP 06/10/09