俺は、なんでこんな女みてぇなことしてるんだぁ…? とは、今のスクアーロの心情だった。 が、しかし苦戦しながらも、ディーノには笑顔が浮かんでいて楽しそうである。 そしてしょっちゅうスクアーロに、 「こうか!?」とか「あ、失敗した…!」とか、話していて。 何をしているかといえばチョコレート作り! そう明日はバレンタインデー…。 スクアーロはこの期に及んでも尚、 今この状態に納得がいかないでいた。 なんで自分がチョコなんざ作らなければならないのか…! そして何故コイツとするはめに、とブツブツぼやいていた。 部屋に立ち込める甘い香りと膨大な量の黒い物体(チョコレート)。 こともあろうにディーノはファミリー皆に作る、 などと宣言して、さすがにそれは不可能だ、と止めたものの。 (それでもこれは半端ねぇだろぉ…う゛お゛ぉい。) 膨大な中には湯煎に失敗したものや見事にひっくり返したものも大半。 部下一人くらいそばにいてもらえ、ディーノ。 思っても、「できてからのお楽しみだからな!」 なんて満面の笑顔で部下を部屋から追い出したコイツは、 今更入れるわけもないだろう、とスクアーロは言うことの無駄を承知していた。 「す、スクアーロぉ…。…焦げた…。」 ピクリ。 眉が動いて次の瞬間つり上がる。 「う゛お゛ぉぉい!テメェそれ何度めだぁ!?」 叫びはもっともなもので、既に十数回はそこで失敗している。 どうして進まねぇんだ。その失敗チョコどうするつもりだ。 スクアーロは既に固める段階に入っていて、冷蔵庫に入れたところ。進度の差が激しい。 「チョコ刻むだけで指切るしよぉ…。」 それは見兼ねたスクアーロが、ディーノのかわりに刻んでやったほどである。 「もう無理だろぉ…。」 「無理じゃねぇよ!」 絶対に、手作りを恭弥にやる!って決めたもん! と、諦める気は全くないらしい、ディーノ。 スクアーロはそんなディーノに、はぁとため息一つ。 「仕方ねぇなぁ、お前は…。」 だが結局呆れながらも手伝うあたり優しいスクアーロである。 ディーノはそんなスクアーロに、チョコのついた顔でにっこり笑って、 宜しくご指導下さい先生!と元気よく、ふざけた調子でそう言った。 「ったく…。」 文句を吐きながらも、口元には微笑。 スクアーロも結局は、なんだかんだで楽しいらしい。 だからこれはこうして、と懲りずに、始めに教えた手順をもう一度。 チョコ作りは尚続く。 ---- 楽しく作っていたら可愛いと思ったんです。この際日本式。 ホワイトデーに続きかければいいなーとか思います…! 『Cioccolato 愛する人に思いを込めて!』 執筆 07/02/11 UP 07/02/19