いつも、ずっと、遠い背中を追い掛けていた。
自分はへなちょこだから、全然劣ってて、
隣なんか歩けずいつも、後ろを走ってついていく。


せめて君の顔を見たいのに
後ろ姿しか見れなくて
時々見失って、迷子の子どものようになって


あぁ、けれど、決して振り返らない君は
黙って、時々立ち止まるんだ。

そしてまた俺の一歩前を行く。
手は差しのべない。
甘やかすことはしない。

やさしい、彼。
きっとそれは、彼にも追い掛け求めるものがあるからなのだろう。

そういう風にいつか俺にも、追い掛けてくれる人ができればいいのに。

今はまだ夢の夢だけど
きっと。



「何飲んでんの?」

校内の目立たない中庭の、大きな木陰に一人、座っている人物。
その隣に許可を得ずに座って、購買で買ったパンをぶらつかせながらそう話し掛けた。
隣の人物はちらと横目で見ることすらせずに、黙って真正面を見ている。

飲物のパッケージは見せないで俺とは逆隣りに置くと
「別に、なんでもいいだろぉがぁ。」と一言漏らした。


「何となく気になるんだって。」
「はっ!んなことよりいい加減、勝手に隣に座るの止めたらどうなんだぁ?」

スクアーロのことはなんでも知りたい、わけじゃないけれど。
少なからず思ってて、尊敬もしている自分としては、好みとか
…知りたくなるわけで、でもその言葉は一笑され結局答えてもらえない。

けち、とぼそり、聞こえないように呟き、悔しかったから

「別に隣に座ってるんじゃなくて、俺が座ったとこにたまたまスクアーロがいるだけですー」

なんて屁理屈を捏ねてみる。


そうしながら足を伸ばしているスクアーロ(片足は曲げているが)を
跨ぐようにして、飲物のパックを取った。

スクアーロはう゛お゛ぉい、とお決まりのセリフを呟いて
俺の体を掴み、パックを素早く取り上げて、
てめぇなぁ!と怒ったような、呆れたような、焦ったような口調で怒鳴る。


ほんのり赤い顔は見間違いではないだろう。
それは怒りでなのか恥ずかしさからなのか。



それにしても…。
「スクアーロって…甘いもの好きなの?」

スクアーロが手にしていたのはいちご牛乳。


彼の口調や性格やもろもろ、スクアーロの大部分(ほぼ全部、だろうか?)
において不釣り合いな、それ。

意外さに目を丸くした俺から
スクアーロはさらに赤くなってふい、とそっぽを向いた。


「別に、んなんじゃ…ねぇよ。」
ぶすっとしながら言われると、
今までカッコイイな、と思っていた自分としては、新たな面に嬉しく感じて。



「じゃ、なんでいちご牛乳なんて。」
「っ…牛乳が嫌いなんだよ!悪いかぁ!?」
「ううん。じゃぁカフェラテも飲む?」
「…まぁな。」

そっか、と呟きながら俺は、自然と頬が緩んでいたことに気付いた。
あぁ、自分はつくづく彼が好きなのだ。
一緒にいたい。落ち着くし、楽しいし、幸せで。
ひとつひとつ知るたびに、ドキドキ。嬉しい鼓動は止まない。



「じゃあ明日から、いちご牛乳かカフェラテ持ってくるからさ、一緒に飲もうよ。」
「…誰がてめぇと」
「ダメ?」
「…っ…勝手に、しろぉ!」

ほら、最後には拒否しない。スクアーロが優しいの、俺知ってるんだ。

皆怖がってても、俺は平気だよ。




見失いそうになったら
遠く遠くに感じたら

不安で堪らない俺を 黙って待っててくれる。
不器用で甘やかさない優しさが、大好き。

もっともっと知りたいし、知ってほしい。
段々と近づいて
いつか、いつか本当に
並んで歩けたら良いのに。

スクアーロのとなり
置いてもらえたら、嬉しい。



「…まぁ、お前が来たら…退屈じゃなくなるからなぁ。」

そんな言葉だけで、堪らなく幸せになれるから。










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憧れと尊敬と、好意と、そんなの。ディーノさんがスクを大好きな感じ。
スクも実はディーノさん大好きな感じ。つくづく不器用で素直じゃない。

でもそんなスクをディーノさんは誰よりもわかってるといいな。
そんな希望というか妄想からできました(笑)
いちご牛乳が好き、というのは、勝手な設定です。それだとかわいいなぁ、なんて。


『こんなこと言いやしないけど。俺はお前の、真っ直ぐさに憧れてる。』

執筆 07/01/01 UP 07/01/10