好きだなんて 泣かないでなんて そんな優しい言葉を言わないで
勘違いしてしまうから
気まぐれに優しく触れて離れて どちらが貴方でもかわりはないけれど
甘い姿に慣れてしまう
それは駄目だと知っているから
かき乱されて平気でいれるほどに 
私の心は強くない




狭間で揺れる




ある時ふと、書店にあった本を手に取った。
素直な、飾らず率直な心を描いた詩集。
女性が書いたらしいその本の内容は、好きな相手への想いであふれていて、
どれだけ愛しているのかみてとれた。
しかし尚且それと同じくらい愛してはいけないと言う気持ちも読めて、
どうやらこれは道ならぬ恋のようだった。

あまりに切ない感情は止める理性に止まらない本能。
それはあまりにも今の自分と重なっていて、渇いた笑いがいつのまにか漏れた。


(いつでも、公平な立場で記憶するだけ)
(まして今はエクソシスト側なのに)

肩入れする、なんて
恋さえ許されないのに
自分は恋をして
会って話して

相手が自分をどう思っているのか本心はわかるわけがない。
なのに甘い睦言に、偽りかもしれないにもかかわらず溺れて、しまう。

冷たい、けれど優しい
表と裏
どちらが正しいでもなくどちらも本当


壊れてしまいそうな理性と本能のぶつかり合いに
溢れる気持ち、止まらなくて苦しい苦しいとても

それなのに一緒にいたいと望むこの矛盾を一体どう処理しよう?


「ラビ、」

「なんさ。」

「いや、いつも以上に黙ってるなーと」

「…、」

言えるわけがないこんな弱い心もこんな想いも
恋愛は惚れた方が負け、なんてまさにそうだ立場があんまりに弱くてきっと、

(振り回されるだけ、さ…)


いっそ泣いてしまえたら、
いっそ鳴いてしまえたら、
楽、なのかもしれない

不思議と涙なんてものは溢れてこないし、言葉だって出てこないけれど。


どうしてこんなに


(好きになっちゃったんかなぁ…。)


隣の彼は、自分が愛しくて溜まらなくて苦しい思いを抱く相手は、
相変わらず不思議そうに心配そうにこちらを見つめて
ノアの姿のくせに、なのに、嗚呼何故これほど優しい、瞳を


「ラビ」

「…なんさ」

「呼びたくなった。」

「意味、わかんねー…」

「好きだぜ?」

「は…何い、って」

「言いたくなった。」

「ふ、ざけ…」

「本当だって」


高鳴る鼓動、それは自らの、ものに違いなく
俺は確実に振り回される。相手の、言葉に、全てに、支配される。
苦しいのは嫌だ。縛られるのは嫌だ。
欲張りな自分は何も捨てられない。自分は変わらずにブックマンの後継者。
得られないのに望む。溺れていたいのだ、どこまでもどこまでも、ただ一人に。


本当に、一体どうして。

(こんなに、好きになっちゃったんさ…。)




















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執筆 07/06/06 UP 07/06/06