来ないか、とそう言ったこの人に、俺は全てをみた。
行く、といった俺にこの人は笑うこともなく。



手を差しのべられた、わけではないが、俺は討条さんに確実に救われたのだ。
お互いの利害の一致とは了承していたものの、強いこの人に惹かれてく。
俺なんて足元にも及ばないくらいの強さを持っていて
俺は全てをもった人だと思っていた。
そして段々と気付いていくのだ。

この人が
どんなにか孤独で
この人が
どんなにか独りで

すべてを、背負ってきたのかを。


弱音などはくこともない。
不必要に話さない。
強くて強くて

けれど強さのかわりに色々なものを失ってきた、討条さん。

それでもまだ求めるそれは
武士の魂がそうさせて。


「討条さん。」

名前を呼んでも
きっと振り向かない。
俺になんて気づかない
心までは
心までは覗けない


「………、……。」

静かに呼ばれた名に
僅かに聞こえた声に

それでも俺はただ、縛られて

なんて悲しくて幸せなキスだろう!
貴方しか見えないんです、もう、だから


あぁ貴方の痛みのほんのヒトカケラでもわかればいいのに
一粒の砂くらいだけでも愚かな自分に分け与えてくれればいいのに!

そうしたらどうなるかなんて知らないけれど
少なくとも自分は救われる。
貴方を愛してどうにもならない
そんな俺は、救われる。



でも、知ってた、知ってるんだ。

自分なりの愛情表現は痛みの共有で
彼なりの愛情表現は傷みを見せずに背負うこと

始めから分かり切った話
















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刺々森の一方通行に見えて、両思いです。
愛し方が違う二人。でも相手をどうしようもなく思っているのは一緒。


『擦れ違うこの心はいつか出会えるのでしょうか?』

執筆 07/XX/XX UP 07/09/10