おかしいよ、と言ってくれる人なんていままで居なかったから
全然気付かなかった
もしかしたら柿ピーはしってたのかな
段々と崩れていく色んなものに
俺に、俺自身に

骸さんも千種も
わかってた、のかな…

俺はおかしいの?

俺らはずっとずっと
たった一つだけ信じて
信じて
きてたから

わかんない
間違ってるとも思わないし
これがおかしいってことなのかな


んな、悲しそうな顔で 抱き締めんな
そんな、辛そうな顔で…
俺も、変な、気分 俺も、なんか、胸が 苦しくなってくるびょん


「城島…」
「ん、」
「何で、だよ…」
「何が、らよ」
「な、で…こんな」

信じられないって、ただ静かに泣いたのは
確かに、普通に暮らしていた奴にとっては
おかしくないことで


血でまみれた手を握りしめて
離して
抱き締めて

なんでこんなとこにいるんら、とか
聞けないままこんな状態で

血でいっぱいの、錆付いた味でいっぱいの
俺に此奴はキスをして


殺しなんてやめろなんて無理な話骸さんのためなら何でもするから
ただ一人信じて、柿ピーと一緒に今まで進んできたのにここから、
逃れられるわけも逃れるつもりも、何処かへいくつもりもないのに
ただ望むのは俺と千種と骸さんと3人で安息できる場所、それだけ


「ん…やまも、と」
「…知ってんだ、俺じゃ駄目だって」
「…おま、え」
「お前にとって二人が比べられないくらいの絶対的な、存在だって、」

知ってるけど。


歪んでくのはゆっくりであまりにもゆっくりで、
ずれて戻らなくなった歯車はいったいいつからか

きっと此奴はしらないから

(そんなこと、言えるんら…)


山本といて気付いたんだ、半信半疑だけど
それにはっきり言われたワケじゃないけど(山本は優しい、から)
俺たちはやっぱりずれてて狂ってて、それでも
それを異常と思わなくて一緒に居たくてそれこそが変、って


「好きだ」
「俺、お前食うかもしれねーびょん」
「それでも、いいから」
「んだよ、それ…」

まるで、自己犠牲。
俺らみたいな
骸さんもこんな風に、辛かったのかな
俺たちを大事って、本当なら、重かったのかな
今気付くなんて遅い、ばかな俺。


「ち、見て。平気んなって」
「次は、興奮とか、するよーになっちゃって」
「褒めて欲しくて、上手くできるよーにってしてたら段々」
「お前、それでもそんなこと言えんのかよ」

ただ突き放すために、そう言った。

「言える。俺もおかしーんだろうけど、どんだけ人殺してたり」

色んなこと、してても
二人だけ、ただ二人だけが犬の世界でも

それでも、

(…こんなにとまんねーんだ)


反応が予想外だったなんてそんな、そんな…
此奴も大事になってるなんて認めない、ただ、気付かせてくれたことに
少しばかり、感謝、してる、だけで…



腕の力が強すぎて目が曇って雫が溢れたのは
決して此奴の言葉なんかのせいじゃない、と
俺はずっと、言い聞かせていた。
(ただ、悔しかった、から)

どうにも、優しい此奴は暖かくて、骸さんや千種とは違うぬくもりがして
俺は初めて二人以外のことを、此奴を、愛しいんだと確信した。
(でもだからこそ愛をわかってないだろう俺にこの優しさは受け取れない)


歪んでく歯車
どうかこの愛しい人はまだ引き返せるから

(こっちにきちゃ、だめなんらよ)
(これ以上深入りしないでお前は)

綺麗なままで、
血にまみれないで、

いて。





















----


『君となら何処へ堕ちたって構わない。』

執筆 07/03/27 UP 07/04/28