もっと上手く伝える術があるのならば
誰か俺に与えて欲しいと本気で思った


「ザンザス、ザンザス」

馬鹿の一つ覚えのように、名前しかまともに言えない俺を
此奴はどんな風に思っているのかなんて、俺には知り得ない。

あぁ、もどかしい
なんでこんなに苦しいんだ、何がこんなに苦しいんだ
先はあっても後ろはない、振り返るものなど何もない
お前しかいないんだ、お前しかお前しか見えないんだ
だけどそんなこと一生、言わない。
ただこの苦しさの一部、愛しいとかそれじゃ足りないけれど
そんな、想いだけは。これだけは、なんとしてもわかってほしいのに


「”これ”をどうにか、表せたらいいのに、ザンザス、なぁ」

黙ったままの、ザンザスの、
頬を包んで、見つめて、紅い瞳に捕らわれて、縋り付いて

これは俺が、絶対俺が
壊させはしない、守ってみせる
誰にだって手出しさせない
もちろん、俺にも。


「俺はあんたを、縛りたくねぇけど」

だからこそ色んな事を、胸に秘めたまま言わないと決めた。
これは本当に、本当で、ずっと思っていることだ。

俺の私利私欲からくるものは
何一つ此奴の利益には成りえないから
側においてくれだとか
愛してくれだとか

そんなことは、俺は口にしないと

けれどたとえば

「ひとつのぞんで、いいなら。」

伝えられない無力な俺を、哀れんだり、しないで
蔑んでくれて構わないからどうか、


「スクアーロ、」

黙って何も言わなくなかった俺を
嘲笑しかけてできなかったらしい此奴は
呼び声に見上げた俺を捕まえて

溶けそうな熱さ。

俺はあんたに
呑まれてしまいたい














----
スクアーロ目線。
愛してなんて言えないけれど、自分の支配権はいつも彼に。
それで幸せ。それが幸せ。
バラバラの個体としてではなく、素材になれたら良いのに。
そんな、イメージで。


『骨まで砕いて取り込んでくれたら』

執筆 07/10/01 UP 07/10/03