「変わっちまったなぁ」

苦笑と共に呟かれたそれに、変わったのはテメェのほうだ、と
口には出さないけれど言ってやりたかった。

まさか覚えていないのか?
目覚めたときボスと呼んだこと、
それまで名で呼んでいた癖に8年越しに出会ったらこうだ。

髪が伸びただとかそんな外見だけではなく、
スクアーロ自ら上下の格差を広げてきっちりと、
部下の立場というものを弁えるようになり距離は自然開いた。

戦友で有り得たのは本当にクーデターの前くらいまでで今はどうだ。
対等など昔から望んではいないが釈だった。一人進むコイツが。
ずっと一歩後ろを歩いていると思っていたのに。


「ボス、ボス…ザンザス」
「何だ」
「アンタはなぁ、いいんだぜぇ」

ゆっくりで。

障害は俺が先を行ってとっぱらってやるからなぁ。
アンタは俺みたいに突っ走らなくても、生きていけるだろぉ?


「はっ…俺だって止まれねぇよ」
今更、
不毛とはわかっていても。


「そうかよぉ」

ならもっと速度を上げねぇと、とは生きることに対してか?
どうにも死期を速めているようで気に入らない。

「ボス」
「……。」

だから呼びかけには答えないで、ただスクアーロを静かにみた。
靡く髪の長さと、悲愴を滲ませる微笑が月日の流れを思わせる。
だから長い髪はきらいで、欝陶しくて、けれど

(この月日、コイツはずっと待っていたのか)

曖昧な笑みを浮かべる、なんてことができるようになるくらいの、時を。


髪は見るたび痛々しくて
それでもこの長さは絶対的な象徴。


だから髪を大切そうに愛おしそうにするスクアーロは、

悪くないと思った。














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実は「共存」より以前にできていたものです。
多分「銀追い」と似通った話なのでUPを見送っていたんだと…。
しばらく経ったのと結構気に入ってるのでUPしてみました。

ザンザスはスクアーロの髪が好きで、嫌いだと思います。
見るたびきっと何とも言えない感情に苛まれてしまうんだと。
良くも悪くも月日や、束縛を感じさせるもの。


『髪に触れる権利は主君だけが有する』

執筆 07/08/03 UP 07/09/18