接触不良
お願い誰も触れないで。
弱くなる脆くなる立ち上がれなくなる。
温もりなんていらない優しさなんていらない慰めなんていらない。
与えないで施さないで結び付けないで。
何もいらないから。欲しくないから。
だからお願い。
誰もこの手に、触れないで――――――。
初めは、盲目の男だった。
いつも皮肉な笑みを浮かべながら、何のためらいもなく領域に踏み込んできた。
当然だと言わんばかりの態度で、この身に触れてきた。
とても自然に。とても強引に。
傍にいた。
ウソツキ強くしてくれると言ったのに。
あんたがいるから、混乱する。
あんたが触れるから、怖くなる
オレの傍で与えようとしているあんたはいったい、誰?
次は、半分だけの兄弟だった。
いつも生真面目な顔をして、無理やり領域に侵入してきた。
規則だ義務だと口やかましくさえずって、この身に触れてきた。
とても簡単に。とても懸命に。
近くにいた。
ウルサイお前なんか嫌いだって言ってるのに。
お前がいるから、イライラする。
お前が触れるから、気持ちが悪くなる。
オレの近くで施そうとしているお前はいったい、何?
最後は、紅い眼をした鬼だった。
いつも我侭ばかり言って、いつの間にか領域に入り込んでいた。
手に入らないものなどないのだという傲慢な素振りで、この身に触れてきた。
とても楽しそうに。とても退屈そうに。
隣にいた。
ドウシテあんたは孤独な一匹の鬼のはずなのに。
あんたがいるから、わからなくなる。
あんたが触れるから、泣きたくなる。
オレの隣で結び付けようとしているあんたはいったい、何者?
邪魔な思い出。邪魔な感情。邪魔な人々。
消えろ。消えろ。みんな消えろ。
必要ない。誰も何も必要ない。
触れてこないで。
この手を引かないで。合わせないで。求めないで。
みんなみんなみんなみんなみんなみんないらないから。
お願いもうやめて。壊さないで。
守ってきたこの世界に。
もう誰も、触らないで!
−fin−
執筆日:‘05年1月5日
この子の言動は、矛盾だらけ。
それは気づいていなかったから。
気づいていたのに、自分さえもだまして、気づいていないと必死と思い込もうとしていたから。
遊庵の手を取った時点で、本当は、もう孤独じゃなかったのに。
あたたかい布にくるまれていたのに。それを受け入れていたのに。
それでも必死に、拒絶している振りをしていた。
……タイトル、明らかに日本語間違ってますから。
back