呟き日記 7月

ダッシュ!




有働雄哉

暑い。
しんどい。
脚はもうパンパンにはって悲鳴をあげてる。

でもあと一本走ったら、今のオレより強くなれるかも…と、
何度も何度も果てしなくダッシュを繰り返す。

自分でも呆れながら。

「蘇民将来之子孫也」



稲嶺智晴


ラグビー部が祇園祭の山鉾巡行で曳方をするらしい。
最近は鉾町の人口が減って、曳方などをボランティアに頼る町が多くなった。
時代やな。

「変なコスプレみたいで恥ずかしいし、絶対来んといて!!」
有働が妙に恥ずかしがるので、17日の山鉾巡行に当然行ってみた。
四条通りは混むから御池通りで、山鉾が次々通りすぎるのを眺めながら有働を探す。

しばらくすると女の子がキャーキャー言いながら写真を撮りまくる集団が移動してきた。
まさか、と思って目をこらすと、ああ、やっぱり有働や。
まわりの騒ぎに困惑しながら、長い綱を曳いている。
恥ずかしがってたわりには曳方スタイル、普通に似合ってるやん。
騒ぐ女の子たちは有働のファンが大半やけど、ラグビーの有働雄哉と知らん観光客も、
絢爛豪華な鉾や山より体格がよくて端正な顔をした曳方を好んで撮っていた。

どこにいても目立つやっちゃな・・・。

「有働!」
近くに来たとき声をかけると、有働は肩をビクッとさせて振り返った。
「先生・・・・」
顔は見事に赤面してる。
「やっぱりおちょくりに来たか・・・」
「結構ええやん、時代劇みたいで」
腕を組んでニヤッと笑うと、タタタ・・・とこっちに走って来て
「はい、これ、明日先生にあげよと思て死守したチマキ」※
「あ・・・・サンキュ・・・・」
「皆、くれくれ言うから大変やった」
その言葉通り、なんとなく周囲の視線が痛い。
「来年はいっしょに宵山行こう」
コソッと耳に囁くと
「うん!楽しみやな!」
まだ少し照れながら笑い、有働は炎天下の大通りに戻って行った。

「蘇民将来之子孫也」か・・・・。
このチマキはマンションの玄関に置こう。


「ちまき」 疫病や災難から身を守るために玄関先に飾る。
 巡行の最中に曳方などが観光客にチマキを配ってくれることがあります

歴史

有働雄哉

先生の歴史の授業は面白い。

教科書から脱線しまくって、書いてないことまで話してくれる。
ドラマや映画のようにドキドキハラハラ、まるで自分が見てきたかのようにリアルに話すから、
歴史上の人物に感情移入してしまうぐらいや。
大抵の高校生は歴史に興味ないし、オレもそうやったけど、今では違う。
先生に教わったクラスは皆、歴史好きや。

「続きは次週、乞うご期待!!はい、教科書に戻るで」
「うそ〜ッ!めっちゃ気になる!!!」
教室は騒然。
先生は生徒に興味を持たすのがうまいなぁと思う。
でもそれは計算してるんやなくて、先生本人が純粋に歴史が好きで好きでたまらへんのや。


永遠の夏休み

有働雄哉

夏休みがはじまった!
幼い頃の夏休みはやることがいっぱいで、毎日楽しくて仕方なかった!

まず早朝、おじいちゃんがやってる畑にキュウリやトマトの収穫を手伝いに行って、
それから水筒を持って山や川に遊びに行った。(たまにバスに乗って日本海も行った)
セミやクワガタを捕ったり、魚やサワガニを獲ったり、真っ黒になるまで遊んでると、
昼過ぎに姉ちゃんらが迎えに来てくれて、縁側でスイカを食べた。
そのまま昼寝に突入して、また夕方から日が暮れるまで近所でたっぷり遊んだ。

・・・・とまぁ、典型的な「少年の正しい夏休み」を過ごしてきたオレ。
田舎やからそれしかすることがなかったんやけど、いま思い出すとオレにとってあの夏休みは永遠やったなぁ。

現在、夏休みはそれほど楽しいものやない。
一日中ラグビーをできるのは嬉しいけど、先生に会えへん。普段は8時半に当然のように会えるのに。
ジョギングしながら必死で会う口実を考えてるこんな夏休みも、いずれ永遠の夏休みになるんかな。