3.5章番外後編



「ふっ・・・、やぁあ・・・、やめ、もうやめてっ」
 ただ眠りたかっただけだった響は、今ベッドの上でお尻だけを高く上げた格好で声を上げていた。その尻の奥、あろうことか咲斗の舌が考えられない様な場所を舐めている。
 響がこの行為を苦手にしているのを知っていて、わざとしているのだ。
 ぬめった感触が、普通だったら人目にふれるはずのない場所に感じて、響は激しい羞恥に駆られる。けれど、腕に絡まった脱ぎかけの服が邪魔で手は自由にならなくて、逃げ出すこともままならないのだ。
「やだぁ・・・っ!」
 その舌先が、あろうことか中を窺ってくる。その感触に響の口からは高い声が洩れた。なんとも言えない感覚が、背中を走る。
「暴れないの。濡らさないと辛いのは響だよ?」
「やだっ。普通にジェルとか・・・」
「今日は舐めてあげたい気分なんだ。なんせ、喧嘩の後だし?」
 哀願するような響の口調にも咲斗はそう言って、顔は怖いくらいに上機嫌に見える。
 どうやらやっぱり、怒っているらしい。
「もう、もういいから」
「まだだめ。響を傷つけたくないから」
 そういうと、咲斗の舌が再び響の後ろに這わされた。
「ああ・・・っ」
 響は声を漏らしてその顔を枕に擦り付ける。尖った乳首がかすかにシーツに擦れ、完全に勃ち上がった先端からはポタポタと先走りが洩れる。煽られるだけ煽られて、いかされる事がなく中途半端なままの欲求は響の思考を徐々に奪っていく。
 ぴちゃぴちゃと舐められ、唾液が中に入ってくる。
「あああっ!!」
 中に、流れ込んでくる感覚。それはきっと、奥までは届くことは無いはずなのに、響は快感に背中を震わせた。
 その後を、ゆっくりと咲斗の指が響の中にもぐりこんで来る。
「んんっ!!」
 長い咲斗の指を思わず締め付けて、ふふっと咲斗が笑うのが気配で伝わった。
「中、熱い」
 闇に溶ける事のできない熱情に犯された声で囁かれ、響は恥ずかしさに聞こえない振りをした。きっと、そんな事は咲斗にはバレてしまっているだろうけど。そして、お仕置きみたいに尾てい骨に口付けられて痕を残された。
 そのまま3本にまで増やされた指が、深く突き入れられる。
「・・・っ、ぁぁ」
 その指が、中で動かされて、抜き差しされる感覚に背中がピクっと動く。段々激しくなっていく動きに、響の思考がどんどん低下して快感に攫われる。
 背中に降らされるキスの雨が、甘く優しすぎて、熱がどんどん集中していくのが分かる。
「咲斗、さん・・・っ」
 ゆっくりとした責め苦に、響が焦れたような声を漏らした。
「なに?」
 先ほどから揺れている腰を見て、咲斗は卑猥な笑みを浮かべていた。名前を呼ばれた理由とてわかっているのに。
 響が、快感に打ち震えているのもわかっているのに。
「もう・・・、や、だぁ・・・」
 堪えられない先走りを漏らしながら、響は開放の瞬間を待っていた。腰にどんどん溜まっていく、強過ぎる快感に、あられもなく腰を揺らしている事が既にわかっていない。
 ただそこに、もっと熱いものが欲しくて疼く。
「・・・ね、がい。・・・もう、欲しい・・・っ」
 熱にうなされた声に、咲斗の指が引き抜かれて熱い切っ先が押し当てられた。その瞬間、響の身体が期待に震える。
「これが、欲しい?」
 熱い、咲斗のに掻き回される快感を期待してヒクつくそこ。
「欲しい―――・・・っ」
 羞恥など、消えうせていた。
「いいよ。存分に」
「あああっ!―――ふっ・・・ああ・・・・・・」
 奥をこじ開けるようにゆっくりと押し入ってくる。見知った質量と、擦り上げてくる快感。太い部分を飲み込んで、ぐぐっと奥まで押し入ってきた、刹那。
「あああっ!!」
 ドクっと響の白濁が飛び散った。
「イった?」
「はぁ・・・、あああ・・・・・・」
 自分でも予期せずイってしまった余韻で、響は上手く舌が回らない。
「イって良いなんて、言ってないよ?」
 咲斗は嬉しそうな笑みを浮かべながらも意地悪くそう言うと、奥まで突き刺した状態で、響がまだ息も整わない状態で腰を揺らしてきた。
「あああっ・・・まっ、・・・ひぃ・・・・・・っ」
 敏感になった身体にそれはダイレクトに響く。さらに咲斗は、そのまま腰を激しく打ち付けた。待ち望んだ熱で遠慮無く責め立てられて中を犯されていく刺激に、響のものは再び堅さを取り戻していく。
 そこに咲斗の指が絡みついた。
「ああっ!!・・・・・・、そこ、んん・・・っ」
 咲斗は響の好きなポイントを、焦らす事無く攻め立てた。指で扱いて、筋を弄って先端に軽く爪をたててやる。
「イイ・・・っ、あああ・・・う、んんっ―――っ」
 とろっとまた欲が溢れ出す。
「はぁ・・・、あん、もっと・・・、もっと・・・・・・してぇ」
 ぐちゅっと音を立てて攻められる後ろと、前を弄られる快感に響の理性はもうとうに無くなっていた。ただ、愛しい人から与えられる快感に身を委ねるだけ。
「絡み付いてくるね」
「や・・・、言う、な――――っ」
「そう?でも、離してくれないよ?」
 楽しそうな笑みを浮かべた顔とは裏腹に、熱くたぎったもので咲斗は響を激しく攻め立てた。イイところを突いて、腰を揺らし。焦らす素振りも見せなかった。どんどん響を頂点へと追い立てていく。
 イク、響がそう思った瞬間、咲斗の動きが止まった。
「いやぁ――――っ!!」
 高い声が洩れて、響の腰が激しく動く。
 もう、頂点はそこにあるのに。
「やっ、願い・・・いきたいぃ!!」
 響が背中をしならせて、首を振った。ぎゅうぎゅうと咲斗のものも締め付ける。
「そんなにイキたい?」
「イキたいっ」
 響の嬌態を咲斗は嬉しそうに見つめて。
「夜、誰が来てもドアを開けない。誓える?」
「―――え?」
 何を言われたのか、響は一瞬分からなかった。
「夜、誰が来てもドアを開けない。誓える?」
「咲斗、さん?」
「誓うの?誓わない?」
 咲斗はそう言うと、ゆっくりと響の中に深く刺さったものを抜いていく。
「いやっ、抜かないでぇ」
 途端に声を上げて、引きとめようとぎゅっと締まる。このまま止められたら、気がおかしくなってしまう。
 止めるはずがない、そんな冷静さは既に無かった。
「9時以降、誰が来てもドアを開けない。誓えるね?」
「誓うっ、誓うからぁ――――っ」
 もう、イカせてぇっ、そうあられもなく叫ぶ響は、爆発寸前で止められた快感の波が響の身体の中で暴れ回って耐えられない。
「守らなかったら、お仕置き3倍だからね?」
 そういいながら咲斗の手が、再びゆっくり響のものを擦り上げる。
「する、するからっ」
 響の腰が激しく上下して、咲斗の手に擦りつけて来る。
「剛には絶対物を貸さない。いい?」
「もう、貸さないっ」
 だから、早くっ、そう叫ぶ響はほとんど咲斗の言葉など考えていない。
「原付だけじゃないよ?全部。響の持ち物、ボールペン1本貸したらお仕置きだからね」
 わかった?と言いながら、咲斗が半分まで抜いたモノをゆっくり差し込んで行くと、一瞬考えそうになった響の思考は完全に奪われた。
「―――する、約束するっ」
「忘れた、なんて無しだから」
「しない、しないから――――早く・・・っ」
「いいよ」
 満足気な笑みを浮かべた咲斗は、グっと腰を引いて一気に深く突き刺した。
「あああ!!」
 奥を突かれて、前を扱かれて。
「ああ―――っ、イ、ク――――・・・・・・っ」
 腰を回されて我慢なんか出来なかった。それでなくても、限界まで来ていたのだ。
 高い嬌声が上げられて。
「ああああ―――・・・、ぁぁぁぁ・・・・・・っ」
 白濁が再びシーツを濡らしたと同時に、咲斗が吐き出したのも分かった。
「・・・・・・ぁぁ・・・、・・・・・・」
 強烈な快感に響の身体が弛緩して、吐息のような声が洩れる。
「響?へーき?」
「あああ!!」
 咲斗は、繋がったまま響の身体を反転させ、中が擦れて高い声が上がった。
 思わずしなった背中に、喉が晒される。
「響?寝るなよ?」
 そう言われても、咲斗の声が少し遠く感じられた。
 このまま、眠りに落ちていければ気持ちよく眠れる、そう思っていたのに。
「ヒィッ!・・・ああ、ん」
 乳首に噛み付かれて、その痛みに意識が戻された。そのまま押しつぶされて嘗められて、もう嫌なのに甘い痺れが身体を震わせた。
 それを見逃す咲斗じゃない。
「まだまだ、寝かせないから。響も―――期待しているみたいだし」
 そんな事ない!そう叫ぼうとしたら、言葉とは裏腹に緩く勃ち上がりだしたモノを再び扱かれた。
「あっ、・・・ふっ・・・うう」
 言葉は甘い喘ぎに変わって。
 咲斗の機嫌をまた上へ押し上げる。
 緩く動き出した咲斗に、響は足を絡めて、甘い声を上げさせられ続けた。

 何度目かの絶頂のあと、意識を完全に手放すまで。




 そして、自分がどんな約束をさせられたのか思い出して、青くなって抗議するのは昼も随分過ぎてから。
 腰が立たないと、むくれて怒って。
 響にしては珍しく頑張って、丸一日口を利かなかったとかなんとか。








END


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