ぐっすり眠っていたのに、急に意識が浮上してふっと目を開いてしまった。時計を見ると、まだ時間は朝の6時半。当然ながらもうちょっとこのまま惰眠をむさぼっていたい・・・と響はもう1度目をつむるのだが・・・・・・ ―――――だめ、トイレに行きたい! 響は尿意を覚えて目が覚めたのだからそれは当然の欲求。だが、布団のぬくもりも気持ち良くてなんとか寝直せないかとがんばって瞳を閉じてみたのだ。 しかしその努力はむなしい結果に終わってしまった様だ。どうしてもトイレに行きたい。ここは意を決して起きるしかない――――――のだが、響が尿意を無視して寝直したい理由は他にもあった。 "俺の目の前から勝手にいなくなるんじゃない。どこかへ行く時は俺に言ってからにして。言いつけ守らなかったらお仕置きだからね" それは咲斗に告げられた言葉。一方的とはいえさせられた約束。破るのは、やっぱり怖い。 響は咲斗に声をかけていくべきか黙っていくべきかしばし逡巡していた。 ―――――お仕置きなんて絶対嫌だ それはそう、間違いのない事実なんだけど、子供みたいにトイレ行くからといちいち起こすのはやっぱり恥ずかしい事だしなんだかバカバカしく思えるから出来ればしたくない。 ―――――・・・ぐっすり眠ってるみたいだし・・・すぐ戻ってくるんだし、いいよね? 誰も同意はしてくれるはずもないのだが、響はなんとか自分に言い訳をして納得させて、自分を抱き締めている腕からそーっと抜け出した。 慎重に慎重に扉を開け、すり足で廊下を歩きトイレへと急ぐ。 物音なんか絶対たてなかった、そう自信があった。 「ひゃぁーすっきりした」 響は小声で呟く。 寝る前に一気飲みしたアミノサプリがまずかったのかも、なんて事を考えながら我慢していたものを出してすっきりした気分で、響は後2〜3時間の睡眠をむさぼるためにいそいそと寝室へ戻った。 戻る時も慎重にそー・・・っと、ドアを開ける。 「っ!!」 その瞬間心臓が飛び出すかと思った。 物音なんか絶対たてなかったのに、咲斗がベッドに半身を起こしてこっちをじーっと見ていたのだ!! ―――――まじ、怖い。やばい!! 何が怖いって、目が怖い。 この時響は自分の行動を思いっきり後悔したが、すでにもう遅い。逃げ出したいけど、蛇に睨まれた蛙のように足がすくんで動けない。 「・・・咲斗、さん」 それでもなんとか声を絞りだしたが、その先が続かない。 「響、どこ行ってたの?」 咲斗は笑顔で響に尋ねる。その、笑顔、目が笑ってない。 「あ・・・ト、トイレ」 「その顔だと、俺の言いつけを覚えていて、あえて無視したわけだ?」 「や、そんな!ちょっと、ちょっとトイレ行くだけだし、すぐ戻ってくるし、わざわざ起こす事もないかなぁーって・・・ほら、咲斗さんよく寝てたしっ。帰ってきたばっかしでしょ」 響はひきつりそうな頬を叱咤激励して笑みを浮かべ、精一杯の言葉を募ってみる。 起こさなかったのは気遣っての事だったのだよ?と精一杯アピールしてみたのだが。 「起こしなさいって言ったよね?」 しかし、その努力は無駄に終わった様だ。 「・・・・・・・うん、だっ、だけどさっ」 最後の足掻きと言葉を続けようとした響だったけれど、咲斗の顔が怖すぎて言葉は口の中にもぐもぐと消えてしまった。 このままでは絶対まずい事になるというのは、ほんのちょっとの付き合いでも嫌というほど身に沁みて知っている響は、なんとかこの場を逃れる言い訳を考えなければと、脳みそフル活用するのだが、いい答えがはじきだされてくれない。 逆に、背中を嫌な汗が流れていく。 「おいで」 咲斗がにっこり笑って言う。 ―――――悪魔の笑顔だ!!! 「・・・なんもしない?」 自分でも間抜けな問いかけだと思う。でも、それくらい響は必死だった。玩具とか入れられて、ずーっとほっとかれて鳴かされるのは、ほんとにツライ。まさか痛い事はされないと思うけど・・・もし万が一、鞭とか蝋燭とか出てきたら、どうしたらいいのだろうか。 響は不安そうに咲斗の顔をうかがってみる。 「響」 しかし、咲斗は明らかに怒った声で、それを隠そうともせずに呼ぶ。 響は仕方なくのろのろとベッドに近づいていくと、その腕をつかまれあっという間にベッドに引き倒された。 「うわぁっ」 世界が一瞬回転してベッドに背中から落ちると、すかさず咲斗が上に乗ってきて、響は一瞬のうちに組み敷かれてしまう。 「・・・ごめんなさいっ」 その体勢にかなりやばいものを感じ取って、とりあえず謝ってみる。逃げられない以上、ここはなんとか穏便に済ますようにしたいのだ。 「謝るのはいい事だね。悪い事って自覚があるわけだ」 その言葉に響は一抹の期待を抱いて、ぶんぶん首を立てに振って頷く。 「反省してる!もうしない!だから、許して?」 「お仕置きしたらね」 「っ、やだ!!」 響の咲斗の言葉に救いの望みが絶たれた事を知る。 ―――――やっぱりするのか・・・っ 響は男同士のsexなんて、ここへ来るまでは当然未経験で、初めて咲斗に男の味を、快楽というものを、それに伴う狂おしいほどの苦しさも全て教え込まされたのだ。 その甘く激しいものに、まだ慣れる事が出来ない。 「怖がらなくてもいいのに」 咲斗は笑って言うけど、身体だけがどんどん慣らされても心がまだ追いつかなくて、快感に自分が自分ではなくなって乱れて行くのが、響には怖かった。 シタ後記憶が無くなってくれればいいのだが、残念ながらしっかり覚えていていつも激しい羞恥に襲われる。 だから、したくない。どんどん快楽に溺れてしまうから。 だんだん、気持ちイイばっかりになっていくから。 「だって・・・・・・何するの?」 「そうだねー、向こう1週間ベッドに縛り付けにしておこうかなぁ。1日中」 「やだ!そんなのお腹すくし、トイレにだっていけない!」 「うーん、じゃぁトイレに縛り付けておく?」 「絶対嫌!!」 響は嫌とは言ってみるが、咲斗がもし本気でする気だったら逆らってもされてしまうだろう。そう思うと不安でちょっと泣きそうになる。 「なら、お仕置きの定番。お尻ペンペンかなぁ?」 「1回?」 なら妥協しちゃうかも。 「まさか、鞭で30回くらいは」 「そんなのやだ!!痛いのは絶対いや」 「じゃぁ蝋燭にする?乳首を蝋でかためてあげる。前もイケないように入り口蝋で固めて、バイブいれて、放置。あ、それいいなぁ」 うれしそうに言う咲斗に、響はすでに泣きそうになりながら首を振る。 「絶対やだぁ!!熱いのも嫌なの」 「やだやだって、お仕置きなんだよ?」 「でも、やなもんは嫌」 響は、咲斗の身体にしがみついた。 「ん?」 「反省してるから許して。痛いのも熱いのも嫌だ」 声が本当に泣き声になっている。ほんとにされちゃうのかな?ってちょっと考えると怖くて涙が出る。痛いのは本当に嫌だ。 響は咲斗の胸に顔を擦り付けて甘える。 「こらぁ、もうそういう事ばっかし覚えて」 「・・・」 「うーん、じゃぁ亀甲締めで1日いる?」 「・・・・・・やだよ」 その姿を想像して、響は泣きそうになる。なんて惨めたらしい姿だろう・・・・・・咲斗はどうしたってお仕置きしたいらしい。 「もう、我侭だなぁ。じゃぁココ縛っておこっか」 「んっ」 そういって咲斗が俺のモノをゆっくり撫で上げる。いきなりの刺激に身体がビクっと反応してしまう。 「縛ったままで、じっくりとココかわいがってあげる。1時間ねだらないで耐えれたら許してあげようかな」 「やっ・・・無理ぃ!」 俺は必死で暴れたのに、咲斗はそんな俺の動きを楽々封じて、サイドテーブルの引き出しから紐を取り出し、俺のモノの根元をしっかり縛った。 「無理だよ・・・っ」 「1時間なんてすぐだよ、すぐ」 言うと咲斗は俺のモノに指を這わせ始め、ゆっくりと根元から先端まで撫で上げる。 「んんっ」 ゆるゆると形を確認していくように指先を細かく動かしていくかと思うと、突然強い力でグイと扱かれた。 「あっ!・・・っはぁ――・・・あぁっ」 咲斗の愛撫に慣らされた身体は、その刺激だけでがぴくぴくと震え、先端からも透明な滴が流れ出す。先端を指先で弄られるとぐちゅぐちゅと音がして足の内腿がひくひくしていくのがわかった。 咲斗の繊細な指使い。やわらかく指の腹で揉みしだかされる。 「あっ―――・・ん」 先端を指ではじかれ、声が洩れ、背中に痺れが走った。 響の弱いところなど全てを知り尽くしている咲斗の手は、的確にそこをついてくる。先端を撫で、それから縁を嬲る。しどしどと濡れそぶり、流れ出る滴をぬぐうように指先でこすりあげられる。 いつもの焦らすようなものではなく、確実に響を堕とす為に的確に攻め立てていく。 「ふぅ・・・あっ―――さき、と・・・さん・・・もう、やめっ」 敏感な部分を一層嬲られ、中心にむかってさらに揉みしだく。 熱がそこに集中していくのが分かる。1時間なんて、到底耐えられない。 「ね、がい・・・やめてぇ―――っ」 その快感からなんとか逃げようとするのだが、しっかり押さえ込まれ快感にうなされているとあっては、その動きもただ淫らに腰が揺れているように見えるだけ。 「そんなにいい?乳首立ってる」 咲斗はそこにキスを落す。 「あぅ・・・ああ・・・・・・」 「まだ、これからだよ」 咲斗がそう言うと、身体をずらして沈んでいく。 「やあっ―――っ!」 舌先の生暖かい感触をそこに感て、背中に快感が走る。咲斗の舌がその裏側をゆっくり舐める。 「ああ、・・・も・・・っむり―――あっ!」 「響、我慢できなかったらもう1回だからね」 言うとその口に響のモノを銜えていく。その快感に背中をしならせながら響は叫んだ。 「っ―――鬼っ!!」 咲斗はその後、言われた言葉通りの事を朝の貴重な睡眠時間を使って忠実におこない、響は身を持ってそれ実感させられたのだった。 |