あ・・・これ・・・・
 参考書を探していて本棚を探していた指先にあたった硬いモノを目に止めて、懐かしさに俺は思わず本棚からそれを引っ張り出す。
ずっしりと重いそれ。俺はゆっくりとページをめくった。





 俺はいま高校1年生の佐々木夏。夏生まれだから夏。なんて単純な親や・・・
 ところで俺には好きな人がいる。相手は男で澤崎圭一。もちろん俺も男やで。だからたぶん、世間的にはすっごいまずいんやろなぁって思う。
 だって俺、お金持ちのぼんぼんやし、相手は遠縁の人間で両親が交通事故とかで亡くなったとかで俺の両親が引き取って、今はこの家の中で働いているからな。
 家の中を取り仕切ってる・・・いわゆる執事?そんな感じ。俺の両親にも恩を感じてるって言うし。
 でもどうしようもないくらい好きやねん。
 出会いはもう相当前。4歳の時やった。あいつは14のとき。
 恋したんはいつか忘れた。気がついたらもう好きやった。小学校くらいから我侭ばっかり言うてあいつの事困らせたな。あいつの注意を全部独り占めにしたくて。
 せやのになんか留学とかして2年離れ離れになる事になって、ほんまは行くなって言いたかったんやけど、言えへんかった。だって、あいつの為には絶対行った方がええってわかってたし。
 そん時はまだ中1で今よりもっとガキで、あいつの恋人でもなんでもなかったし。
 でも俺はどうしても我慢できへんくなって、あいつが留学して1年たった中2の春休みにアメリカまで会いに行った。






「何を見てるんですか?」
「っ圭。・・・ノックくらいしろよなぁ」
 いきなり入ってきた相手に俺は開けていたそれを隠すことも出来なくて、ちょっと睨みつけてしまう。
「アルバム―――?ああ、懐かしいですね」
 開かれたページには3年前の写真、アメリカの遊園地で2人並んで写っているのがちょうどあって。
「いきなり連絡もなくやってきてアパートの前に座り込んでるナツを見た時は、もう心臓が止まるかと思いましたよ」
「女づれやったからやろ」
 そうやねん。いきなり考えなしで俺も行ってしもてんけど、アパートに着いてみたら圭は出かけてる最中で、俺はアパートの前で何時間もずーっと待ってた。待って待って待って、やっと帰ってきたと思ったらなんと圭は女と一緒やった。
「彼女とはなんでもないって言ったでしょ?」
 圭は少し拗ねたような口調で言ってくる。
「まぁな」
 確かに聞いた。だって、ショックで走り出した俺を、圭は女をほって追いかけてきてくれたんやから。
 そんで、俺がずっとずっと欲しかった1番の言葉をくれた。
「覚えてます?この日でしたね、あのアパートのベッドの上で初めてナツの身体を――――」
「いい!言わなくていいからっ」
 なんちゅうこと言い出すねん、恥ずかしい!!
 なんかあん時は初めてでなんもわからんくって、かなり泣いて声上げて、すっげー恥ずかしかった気がするねん。だから絶対もう忘れてたいのに。
「覚えてるんですね?」
「―――っ、覚えてへん」
 嬉しそうに笑って言うのが腹立つから絶対認めへんって思ってる俺を、後ろから圭が身体をひっつけるように抱き締めてきて、指を伸ばしてくる。
「覚えてないんですか?じゃぁあれは覚えてますか?」
「あれ?」
 なんの事やろ?
「ちょうどこれですね」
 圭が開かれたページにある写真を指差す。
「アメリカまで来たんやから本場を体験せなってナツが言ってこの遊園地に来たんですよね。で、遊園地内のホテルがいいって言うから、せっかくパレードも見れるようにと思ってちょっといい部屋を取ったのに、結局見れなかった。――――後で散々拗ねてたじゃないですか」
 耳元でわざとしゃべってる、かかる息がゾクゾクする。
「あのパレードの時、なんで見れなかったのか覚えてます?」
「っから!覚えてへんって――――」
「そうなんですか!?ナツが初めて私のモノをそのかわいい口に・・・・・」
「わぁ――っ、わぁわぁ―――っ!!」
 俺は慌てて首を横に振って。耳をふさごうと手を伸ばすと、その手を圭に絡めとられて。
「やっぱり、覚えてるんだ?」
 顔が熱い。たぶんすごい真っ赤になってる。
 だって忘れるはずなんてないのに、今の言葉でリアルに思い出してしまう。
「ふっ・・・・、ちょっ!」
 まだ残暑が厳しくて、俺の部屋着は首周りの大きく開いたタンクトップに短パン。その空いた首周りから圭の手がするりと入ってきて。
「はぁ―――っ、・・ああ・・・」
「こんなかわいい格好して、毎日誘ってるんですよね」
「なっ!これは・・・・・、圭が―――選んだっ、イッ・・・だろっ」
 自分がこの上下を選んで来たくせに。
「そうでしたっけね?」
「ダメだって・・・・んな事、より・・・・なんか、用じゃなかったのっ」
 胸をなぞる手に、頭の芯がぼーっとしてくる。耳にかかる吐息と重ねて、自分の中心が熱くなってくるのがわかる。のに・・・・
「ああ、そうでした。後30分で夕飯の時間です――――ああ、もう後15分になりましたね」
「はぁ!?」
 軽い口調で言われて、思わず声をあげてしまう。ありえへん。
「ふっ・・・ああぁ!」
 そやのに、圭の手は止まる事なく俺の中心を握る。
「ああ、もう勃ち上がってきてますね。・・・イイですか?」
「ひゃ・・ああ、っ、だめっ」
 スウェットの短パンの上から形をなぞるように指を上下されて、俺は思わず腰が揺れてしまう。
「だめなんですか?」
 圭は余裕たっぷりにクスクスと笑いながら、あろうことか短パンの中に手を滑り込ませてきた。
「ああっ!」
 直接触れられる感覚に、思わず首を仰け反らせてしまう。
「もう濡れてる」
 さらした首にキスをされる。もちろん痕は残さない軽いキス。だけど、それすらも感じてしまう。
 圭の手は根元から指を絡めてゆっくりと俺の中心を扱きだす。くびれを軽く扱かれて、腰が大きく反応を帰してしまう。
指で円を作って先端に向かって摩り上げてきて、亀頭を指の腹で押されて。
「ああっ・・・・ひぃ、んん・・・・あああ」
「イイですか?」
 甘い声にすら、身体の奥が痺れ出す。
「ぃ・・・あぁ・・・・っ」
 指先で先端をはじかれて、トロリと先走りがこぼれ出す。
 ぬめりをぬぐうように指先でこすられて、甘い声しか出ない。さっきよりも強い仕草で、先端を中心に向かって揉みしだかれて快感が背中を駆け上がる。
 とろとろと雫があふれ出して、圭の手を濡らしていく。
「あっ・・・やめ―――っ、あああ・・・・っ!」
 絶頂が近い。
 服も脱がされず、手で胸と中心を弄られるだけの卑猥な格好で、大きく胸から首をのけぞらししまって、勢いよく扱き上げられて。
「あああぁぁ―――――・・・っ!」
 仕上げとばかりに先端を揉まれて、俺は圭の手の中に精を吐き出した。
 快感と羞恥に俺が肩で息をしていると、圭はゆっくりと自分の手を俺の短パンから取り出して、見せ付けるみたいにその指を舐めた。
 それだけど、ズンっとまた腰に快感が走る。
 触られもしなかった、もっと奥が甘くうづき出してしまう。俺は縋るみたいに圭に手を差し伸べて、その手を圭の首に巻きつけようとした瞬間。
「ああもう時間ですね。ナツ行きますよ」
 あっさりと言い放たれる言葉に俺は一瞬絶句してしまう。
 ・・・・冗談だろ? 
「ナツ?」
「・・・・無理」
 弱くねだってみる。
「ダメですよ」
「っ」
「このまましたいのはやまやまですけど、もし変に思った誰かが様子を見にきたらどうします?ばれてもいいんですか?」
 俺は首を横に振る。それだけは絶対ダメだから。
俺と圭が、こういう関係なのは当然周囲には絶対秘密の事。本当にもしばれたら圭は無一文で追い出されて、二度と会えなくなる。
 だから、そう言われたら我侭は言えない。
 でもたぶん今は泣きそうな顔。
「じゃぁー・・・着替えるから」
 いくら手で受け止めてくれたとはいえ、やはり中は濡れていて気持ち悪い。それなのに――――
「ダメですよ。時間がありませんから」
「圭!?」
 いまだに座り込んでいる俺を、圭は無理矢理引っ張って立たせてくる。立つと、余計なんだかひっついて来て、その感触が気持ち悪くて、俺は泣きそうな顔をして圭を見上げる。
「そんな可愛い顔してもダメですよ」
 圭はちょっと意地悪だ。
「さ、早く」  

 結局引きづられれるようにそのまま連れ出されて。
 俺はすっごいすっごい気持ち悪い思いをしながら食事をするハメになった。











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