体操服


 12月に入った最初の金曜日。ちょっと寒くなってきたので部屋に暖房をがんがんかけて、俺は気分よくゲームをしてた。カーレースのゲーム。こっそり腕を磨いて今度アキとゲーセンで対決するときには大差で勝ってやると、俺の目標は誇り高い。
 その時部屋の扉がノックされた。
「へーい」
 目線はテレビ画面に集中したままに、音に反応して口が勝手に返事を返す。
「またゲームしてるんですか?」
 入ってきたのは圭らしい。って、入ってくるんなんか圭しかおらんねんけどな。口うるさいのが来たなぁーって内心俺は思いつつも画面からは目が離されへん。なんでかって?俺の今のタイムめっちゃええねん。このまま走り抜けることが出来たら今までで1番の好タイムを弾き出すのは間違いない。
 そんな時に余所見なんか出来へんやん?
「宿題はやったんですか?」
「んー」
「週末からテストですよね?」
「んー」
「勉強してますか?」
「んー」
「してないでしょう?」
「んー」
 っつーかまじこのカーブの曲がりっぷりとかどうよ、俺!!ちょー俺まじでレーサーとかなれる才能あるんちゃうん!!
「・・・これ、なんですか?」
「んー」
「・・・ナツ?」
「んー」
「聞いてませんね」
「んー・・・ひゃぁっ!!!」
 ああっ!!手元が狂った!!
「圭ぃ。ひゃっ、やめ・・・やめろって!ああーっ」
 俺の声とともにガシャン!!と、画面から派手な音。そしてCRASHの文字が・・・
「もう!!めっちゃええとこやったのに、何すんねん!!」
 もうちょっとで、自己最高記録でフィニッシュするはずやったのに、圭が後ろからこしょばしたりするから手元狂ってもうてクラッシュしてもうたやんか!!
「せっかく来たのにゲームに夢中のナツが悪いんですよ」
「なっ・・・、ちょっ、ちょっとくらい待っててくれてもえーやろ!」
 むかついて仁王立ちした俺を、しゃがみこんだ圭が上目遣いに睨んでくるねんけど、俺だって負けてへんもん。
 い、いつも負けてると思うなよー!!
「で、これなんですか?」
 若干びびりながら睨んで見た俺を圭はあっさり無視して、白い袋を俺の目の前にさらす。
「あー体操服。ほら、切られてもうた」
 すっかり学校におきっぱなしになっていたのをやっと持って帰って来た俺は、さっきそのままゴミ箱に入れたんやった。
「あ・・・」
「あ、別に最近はもう嫌がらせとかないで!」
 急に眉をしかめて心配顔になる圭に、俺は安心させるように慌てて言葉を続けた。ほんと、まじで、なんかピタって嫌がらせは止んだから。こんな納まってまうと、かえってなんやってんってちょっと思うねんけどな。
「本当にもう大丈夫なんですね?」
「ほんま。大丈夫」
「ならいいですけど」
「うん。あ、それは捨てといて。まじでビリビリやから」
 ちょっとしんみり空気が漂う部屋ってなんか寂しいし俺はちょっと明るめの声で言ってみる。
「ほんまどこまでがんばんねんっちゅうくらいにビリビリにしてはるからな」
 俺が思ったのは、圭もちょっと笑ってくれてその体操服ゴミ箱に入れなおしておいてくれたらそれで終わり。それだけ。さて圭もおるし、もう今夜はもうゲームも出来そうにないなって思って電源を切った。
「ナツ」
「んー?」
 ゲームを隅っこに片して振り返ると、てっきりゴミ箱に入っていると思っていた体操服を圭が袋から出して広げていた。
「何してるん?」
「これ・・・着てみてくださいよ」
「・・・はぁ!?」
 いや着てみてってそれビリビリやし破けているし、そんなん着るとか無理やからって言うかそんなお願いありえへんくない!?
 って俺は思うねんけど圭はそうとは違うらしい。ちょっと俺警報の中でやば目レベルの笑顔を浮かべてる。
「着てください」
 ・・・マジっすか。
 ほんまそんなん嫌やねんけど。っていうかなんかそれ着た姿が想像出来るやん。つーかしたないねんけどな、ほんまは。でも出来るやん?
 部屋はめっちゃあったか温度設定やし服を脱いだり着たりするのは支障はないねんけど、せめて着替えの最中は向こう向いてて欲しいなぁなんて思うんは俺の我侭なんやろ・・・な。
 俺は覚悟を決めて着ていた部屋着を脱いで、切り裂かれた体操服に袖を通す。半そでのそれは片腕が切り取られて、もう一方にも切込みが入っているので服の合間から肌が見える。胸元もなんかいやらしく丸く切り取られてるから最悪や。・・・乳首が丸見えやねん。しかもわき腹の辺りにも行く筋にも切込みが入っているから肌がチラ見状態やし、へそだしルックっぽく丈を短く切ってしまわれている。下の短パンも、お尻が丸く切り取られてパンツ丸見えやし、ホットパンツみたいに足の部分もギリギリまで切られてしまっていた。
「凄いですね」
「っ、何がっ」
 もうマジで脱ぎたい。エ・・・エロすぎる。これ切ったやつまじで誰やねん。絶対変態に違いないわ!!
「お腹が丸見えですよ?」
「ちょっ、圭!!」
 圭はちょっと嬉しそうに笑いながら手を伸ばして俺の腹を触ってくる。触ってくるっていうより、撫で回してくるって感じやな。なんか、その手つきに立ってる足が震えてくるしっ。
「足もこんなギリギリまで見せて」
「や・・・っ」
 もう一方の手で内腿を撫で上げられ、その手がかすかに中心にも触れてくる。
「ああっ」
 圭の指ではっきりと中心を触られて、俺は思わず目の前の圭の肩に手を置いて身体を支えた。立っているのがつらくなってくる。それやのに、座ったままの圭は目線の先にある俺の丸見えの胸に舌を這わしてきた。
「・・・っ!」
 舐められて、舌先で押しつぶされて軽く歯を立てられたらもう限界。俺はその場にへたりこんでしまった。
「誰が座っていいって言ったんですか?」
 その笑顔、まじでムカつく。
「もう無理」
 へたりこんだ俺のお尻を圭の手が揉んでくる。じかに触れてるわけちゃうけど、むずがゆい快感が生まれてくる。
「パンツ脱いでからこれ履けばよかったですね。そうしたらこのまま出来たのに」
「嫌っ」
 なんちゅうこと言うねん。・・・エロ親父め。
「・・・なんか言いました?」
 俺は慌てて首を横に振った。口には出してへんはずやのに、圭にはなんかが伝わったらしい。こういう時の圭はマジ地獄耳やから要注意やわ。
「なぁ・・・、圭・・・」
 パンツの上からお尻に指を這わされて、奥を窺ってくるその仕草がじれったくてたまらなくなって俺の腰は自然と揺れてる。
 だってテスト前やしってことで先週の土曜日以来シテへんねんもん。それをこんな格好させられてこんなに弄られたら我慢なんか出来へん。
「なんです?」
 耳元で囁く声にまで感じてしまう。
「・・・けいっ」
 意地悪モードになんか付き合ってられへんねん。涙が滲んでくるくらいにじれったくて圭が欲しいから。俺はめっちゃ恥ずかしいけど、ねだる言葉を口にした。
「・・・ちゃんと、シテ」
 あかん、恥ずかしすぎて顔が熱−なってくるんが自分でもわかる。そんな俺に圭がちょっと驚いたみたいに目を見張って、ため息ついた。
「まったく。そういう顔他で見せたら許しませんよ」
「え?」
 そういう顔って何?俺今、どんな顔なん?
「うわっ」
 今までの焦れた動きが嘘みたいに圭は俺のパンツを体操服ごと一気に引きおろして、脱がせてしまった。
 そしてベッドに押し倒される。
「服・・・」
 圭がまだ服を着たままなのがちょっと嫌で言って見ると、圭は前だけくつろげて自分のを取り出した。
「後でね」
 そういうと後ろ向きにされて、たぶんジェルが塗られて圭が押し入ってくる。
「あ・・・・・・ああぁっ、やぁっ――――――・・・っ!!」
 慣れた身体とはいえいきなりの挿入にはやはり痛みが少し付きまとう。思わず怯む腰を圭の腕に抱えられて引き戻されて。奥まで押し入られた。
「ひっ、んん・・・、ああっ」
「すいません。・・・ナツ、痛い?」
「ん、へーき」
 へーきっていうのもちょっと違う気がしたんやけど、でもいっつも優しいからたまにはこういうのも悪くない。なんかいつもよりリアルに圭を感じる気がするから。
「ごめん。我慢できない」
 圭の言葉が聞こえたと思ったら、圭が腰を激しく打ち付けてきた。いつもみたいにゆっくり焦らすんじゃなくて、容赦なく感じる部分を熱く刺激されて、快感が背中を這い上がってくる。
「っふ・・・、けいぃ・・・・・・」
 強い快感に、無意識に中の圭を締め付けてしまう。
 圭の顔を見たくて無理矢理に身体をひねって見上げると、圭の顔をはっきりと認識するより前に圭の顔が近づいてきてキスされた。
 舌を強く吸われて腰を回されて、吐き出した空気を求めるように口を開くとまた塞がれる。息苦しさに頭を振ると、圭の唇がゆっくりと離れていった。その去り際に、涙に濡れた視界の先に圭を捉える。
 快感の混じったその顔を見ただけで、ゾクリと快感が身体を突き抜けた。
「け、い・・・」
 大好きな名前を呼ぶとそれだけで嬉しくなる。そんな俺の首筋に、圭が少し荒々しいキスを落とした。軽く歯を立てられてビクっと腰が跳ねる。
「ああっ・・・・・・んん、ああっ!!」
 跳ねた腰に合わせるように深くえぐられて。腰を回されて、さっきより一層激しく攻め立てられた。
「やぁっ、ああああ――・・・・・・っ」
 追い詰められて追い上げられる感覚。圭の手が前に伸びてきて、巧みな指でしごかれて、もう我慢できそうにないくらいになっていくのが自分でもわかる。
 腰が夢中で揺れるのなんて止めれへん。もう限界。
「ナツ」
 名前を呼ばれて一際奥を突き上げられた瞬間、あっけなく弾けた。
「ああああ!・・・あああぁぁぁ――――っ・・・・・・!!」
 中に打ち付けられた圭を感じて、身体がベッドに沈んだ。
 圭が出て行って身体をひっくり返されてキスされて、圭の重みを感じる。エッチしてるんも好きやけど、この一瞬もめっちゃ好きや。
 でも、まだ服着てるんがマジむかつくから俺はぐったりした指を無理矢理奮い立たせて圭のシャツのボタンに指をかけた。
「まだ足りない?」
 くすくす笑われて、圭が尋ねてくる。
 なんでそういう事になるんやろ?
「だって、脱がされてるから」
「・・・っ!!」
 そういうつもりやなかったから慌てて指をはずした。俺はたぶん今真っ赤になってる。だって顔熱いもん。なんか、そんなん・・・
「あれ、止めちゃうんですか?」
「・・・」
 圭の言葉にますます恥ずかしくなってきた俺を目線をそらす。だってほんまは、一回なんかじゃ足りへんけど、なんかそれを言うのはちょっと恥ずかしいっていうかためらわれるっていうか、がっついてるみたいでかっこ悪いんちゃうやろか、って思うから。
 せやのに。
「俺はまだまだ、足りない」
 ・・・っ!こういう時だけ、こんなしゃべり方。
「けい」
 見上げた視線の先には、男っぽい圭の顔。
 むちゃくちゃカッコよくて色っぽくて、綺麗な圭。
「脱がせて?」
 もう降参。がっついててもええもん。もっともっと圭が欲しいから。俺は再び圭のシャツに手を伸ばした。
 ――――丸裸にしてやるっ









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