(テンマとグリマーさんの会話劇風SSです)

 

無題

マシノ様 作

 

 

 

「やあ」と彼は言った。

「お久しぶりです」と私は言った。

 

「最近はどうだい?」

「何も変わったことはありませんよ」

「何かと大変だろう?」

「いや…」

「今は顔色良いけど、ちゃんと休んでるのか?」

「ええ。…この間ドイツにも帰りました」

「へえ」

「ディーターと、エルベ川まで行って来ましたよ」

「……」

「子供の頃は私も釣りをして遊びましたけど、

 どちらが教えられているのか解らなかった」

「下手なんだ、Dr.?」

「いや、昔はそんな事なかったんですけども…」

「本当?」

「本当ですって」

「そうかなあ」

「本当ですってば…」

「今度じゃあ見せてくれよ」

「……」

「どうした?」

「……もう一度行きたかった」

「Dr.」

「ちゃんと笑って、ちゃんと他愛もない話をして、

 素晴らしい景色を眺めて、うまいワインとチーズを食べて」

「……」

「あなたと」

「一一一一なあ、Dr.」

「はい」

「俺は未だにピクニックが実際どういうものなのか解らない」

「……」

「あんたと最初に行った時みたいのでよかったのかな」

「…………ええ」

「本当に?」

「ええ」

「ああいうのだけでよかったのか?」

「ええ」

「何も足りなくなかったか?」

「……済みません、今度はちゃんと私も何か作って持っていきますよ」

「なに、Dr.料理できるの?」

「ええ、まあ」

「へえ、食ってみたいな」

「気に入って下さると嬉しいです」

「ああ。……さてと、そろそろ時間だ。じゃあな」

「また会いましょう」と私は言った。

 

 

彼が何と応えてくれたか思い出せないまま目が覚めた。

 

 

一一一ende一一一

 

 

 

マシノさん、素敵文章を有り難うございました!

今でもこのお話を読み返すと涙目になっちまいますよ…!

今回の『M0NSTER』祭に合わせて

アップする事が出来て本当に良かった!

快くアップを承諾して下さって感謝です。

重ねて御礼申し上げます…!

(MIYA)

 

GALLERYに戻る