金魚注意報

前書きor注意書き
魔法先生ネギま! オンリー。

 

 

「しかし、この前学園祭が終わったばかりだというのに、今度は夏祭りかぁ……年がら年中騒がしいわよね、この学園って」

「まぁウチは楽しいからええけどなぁ」

今は夏休み直前、「後幾つ寝れば夏休み」と歌いたくなるような時期だ。

終業式の日には既にカレンダーに丸印。

もちろん夏休みのスケジュールはびっしりだ。





「まぁ、バイトのスケジュールなんだけどね」

自分で望んだこととはいえ、これが女子中学生の夏休みかと思うと少し泣けてくる。

「まぁまぁ。バイトって言っても毎日あるわけやないんやろ? ネギ君たちと一緒にどこか出かけようやー」

「そうね。夏祭りも学園祭とまた違った楽しみがあるんだし」

例えば屋台とか。

金魚すくいに射的、かた抜きや各種食べ物屋。

花火に盆踊りに浴衣コンテスト。

学園祭とはまた違ったイベントが目白押し。

「……ん?」

そういえば、屋台って儲かるのかしら。

もし大儲けできれば、少しは学生らしい夏休みが送れるかもしれない。

「……ちょっと調べてみる価値はあるかもね」

「何の話?」

「ううん、こっちのこと」



まさか、そんな安易な思いつきがあんなことになるとは思ってもいなかったのだ。








――金魚注意報――










「てな訳で、あんたのパソコン借りるわよ」

「何がどういう理由なのかは今一わからねえっすけど、構わないですよ、姐さん」

ネギとエロガモがエヴァちゃんの別荘に行っている間に私は色々と調べ物を開始した。

まず、私は屋台の素人だ。

そして料理はできないことは無いが、売り物になるものを作れるかと聞かれたら否だ。

第一、近くに最大の敵である中華料理屋に叶うわけが無い。

そう考えると、食べ物系は全てアウトだろう。

いやまぁ、屋台の焼きそばたこ焼きお好み焼きやチョコバナナカキ氷なども捨てがたいとは思うが。

となると、ここはやはり金魚すくいだろう。

まず第一にライバルが少ない。

これは当然だ。

何しろ、ここの生徒は武術の達人だの気や魔力で肉体を強化できる人間がいる。

同じような理由で射的や輪投げなど、肉体を使った屋台は悉く壊滅しているという情報が入っている。

まぁ、龍宮さんとかが賞品を掻っ攫っているのだろう。



逆説的に言えば、だからこそ金魚すくいなどの屋台はお客を独占できる可能性を秘めているのだ。

まずはかかる費用を調べる。

まず一番大事な金魚。

どこかで、金魚すくいに使われる金魚の値段はかなり安いと聞いたことがある。

調べてみると、400匹の金魚で大体4500円程度らしい。

他にも『ポイ』と呼ばれる金魚をすくう道具の値段なども調べていく。

「……これ、いいかもしれない」

値段を調べれば調べるほどに掛かる経費の安さに驚く。

何故自分は早くこれに気付かなかったのだろうか。

もし気付いていれば、学園祭と夏祭りの計二回、大儲けするチャンスがあったというのに。

「とりあえずじっくりと算段を練るとしましょうかね!」

私は必要になりそうな情報を片っ端からメモに記入するのだった。





経費をここに宣言しよう。

金魚ポイ、紙が薄い7号を250個に紙が厚い5号を750個。
計10000円也。

金魚を入れるうつわ、100円ショップで20個購入。
計2000円也。

金魚を持ち帰るための小袋1000枚。
計10000円也。

ポンプ、水槽が大きいので用心の意味も込めてふたつ購入。
計3000円也。

その他諸経費で2000円。
金魚を除いた必要金額は計27000円也。


次にメインとなる金魚を紹介する。
小赤と呼ばれるもっともポピュラーな金魚を1600匹。
黒出目金を325匹。
紙破りの別名を持った生きた罠、姉金を75匹。
2000匹セット価格で計22500円也。

次に目玉となる金魚たち。
白と赤の色が映える小流金20匹。
1匹250円で計5000円。

白地に紅色の模様が綺麗な丹頂10匹。
1匹350円で計3500円。

赤と白の金魚たちの中で異色を放つ蒼き金魚、青文魚10匹。
1匹350円で計3500円

すくって見やがれ! と言わんばかりに重量感溢れるオランダシシガシラ10匹。
1匹350円で計3500円

ほっぺたが膨らんだユーモア溢れる金魚、水泡目10匹。
1匹なんと500円で計5000円。

眼が頭の頂上にあり、一際目立つ頂天眼10匹。
こいつも1匹500円で計5000円

合計75000円也。





ちなみに、水槽はいいんちょの家から借りたので無料ですんだ。

料金設定は200円。

400人ほどお客さんが来れば残りは全て私の利益となる。

正直取らぬタヌキの皮算用になる気もするが、何かとお祭り好きなこの学園の生徒たちだ。

勝算は十二分にある。















というわけで、あっという間に夏祭り当日となった。

屋台の申請については学園長に頼み込み、臨時参加させてもらうことになった。

テントは学園側から支給されたものを使用。

ついでにクラスメートのよしみで超包子の面々に隣に来てもらった。

これで集客効果も抜群だろう。





「さて、準備始めるわよ!」

「おー」

ひとりでは心もとないので木乃香にも手伝ってもらうことに。

「木乃香! この張り紙を目立つところに張って!」

「了解やー」

この学園は魑魅魍魎の住処。

ひとりで100匹とかすくわれる可能性が非常に高い。

だが私に抜かりはない。

この張り紙こそが全てを打開する。

「えっと……何匹すくってもひとり2匹まで。大物はひとり1匹まで?」

そう。幾らすくわれようが持ち帰りの匹数を限定すれば何の問題もない。

そして更に打開策!

「30匹以上すくったお客様には超包子の特性肉まん無料券を差し上げます。おひとり様1回限り……中々考えてるなー」

当然。

お金が掛かっている以上絶対に利益を出す。

ちなみにこれは超さんが例の件で迷惑をかけたお詫びとしてくれたものだ。

つまりは無料。

そして更に!

「現在の最高記録者の名前を大々的に広告! 負けず嫌いの多いこの学園の心理を巧みにつくこの作戦! 勝利は目前だわ!」

「けどなぁ……」

高笑いを上げる私を諌める木乃香の呟き。

「何よ? 何か問題あるの?」

「いやなー。明日菜のことやし、何か見落としがある思ってなー」

「な、ちょっと木乃香!」

「じょ、冗談や。ちょっと思ってみただけやー!」

「冗談でもそんなこと言わないでよー!」

まったく縁起でもないわよ。











「さぁさぁ! 金魚すくいよー! 祭りといえば金魚すくい! 皆よってってー!」

「沢山の種類の金魚がいるでー。現在超包子の超鈴音さんの32匹が最高記録。皆よってってなー」

麻帆良夏祭りの開始と同時に、ちらほらと集まってくるお客さんたち。

カップルが多いのは気にしないことにする。

大事なお客さん……金鶴だ。

賞品と最高記録に挑戦しては破れていく戦士達が次々と私の懐を暖かくしていく。

「おや、明日菜殿。金魚すくいでござるか」

「あ、楓さん。折角ですしやっていきません?」

「そうでござるな。では早速」

といって懐に手を突っ込んで。

「ストップ。何取り出すつもり?」

「? くないでござるが?」

「道具はこれ! というかそんなの使ったら金魚死んじゃうじゃない!」

慌ててポイを手渡す。

あ、危なかった……。

「……これでは刺さらぬでござる」

「殺しちゃ駄目だってば。ほら、やってる人のを見て」

「ふむ」

受け取ったポイを片手に、他のお客さんの見物を始める楓さん。

「明日菜さーん。お嬢様ー」

「あ、せっちゃん!」

「刹那さん」

「お手伝いに来ました。何か手伝うことはありますか?」

「大丈夫やでー。せっちゃんは夏祭りを楽しんできー」

「そういうわけには行きません。私はお嬢様の護衛ですから」

のわりには、学園祭の時は木乃香をほったらかしにしていた気もするけど。

「まぁ、お手伝いというわけじゃないんだけど、場を盛り上げるためにひとつ頑張って欲しいことがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「あれ、破ってもらえます?」

親指で、例の張り紙を指差す。

本日の最高記録が書かれた紙を。

「……なるほど。超さんの記録ですか……たとえどんな勝負でも、挑まれれば勝つのが神鳴流です」

カッコいい台詞を決め、手を差し出す刹那さん。

「200円やでー」

にこやかに笑みを浮かべる木乃香。



刹那さんは、少し固まった後懐からお財布を取り出して支払った。

なんか、少し可愛かった。



「ではさっそく……」

ポイを高々と上げ、お椀を片手に気合を入れる刹那さん。

ピリピリとした空気があたりを包み込む。

そして、全身に張り詰められる気。







こっそり気で強化されるポイ。

(ずるいなぁ)

まぁ、超さんの記録を破って欲しいのでそのイカサマは問わないことにする。

「なるほど、気も有りなのでござるな……ならば……忍!」

と、それを見物していた楓さんが16人に膨れ上がる。

何故かポイもお椀も16個に。

「特性肉まんは貰ったでござる!」

「くっ!」

しぱぱぱぱぱと眼にも止まらぬスピードで水中を泳ぐポイ。





当然、幾ら気で強化されているとはいえポイは紙である。

あっけなく破れる。

「……もう一回でござる」

情けなく200円を差し出す楓さん。

「まいど!」

私はお金を受け取り、新しいポイを手渡した。

今度はゆっくりと水面につけ、ゆっくりと金魚を持ち上げ。

水と金魚の重さに耐えられなかったポイの紙は当然破れた。

「……もう一回でござる」

寂しそうにお財布から200円を差し出す楓さん。

「まいどー」

楓さんは私からポイを受け取った後、じっと他のお客さんを見物しはじめる。

一方、刹那さんは確実に金魚をすくっていた。

「幼い頃から祭りには参加していましたから。主にお嬢様の護衛でしたが」

「へー」

まぁ、木乃香ってお祭りとか大好きだろうしね。

「というわけで、この勝負貰いました!」

楓さんに向かってポイを突きつけながら叫ぶ刹那さん。

「勝負は最後までわからないでござる」

こっそりとポイに細工を施しながら不敵に笑う楓さん。

とりあえず、それは反則なので没収。

「……残念でござる」

「まぁ、勝負で言ったら既に楓さんはポイ破ってるから負けなんだけど」

「せやなー。一回勝負にせんとお金持ちが勝つことになるしなー」

まぁ、私的には幾らでもお金を落としてくれる分には構わないんだけど。

刹那さん、護衛以外にも悪魔退治とかしてるらしいからお金持ってるだろうし。

楓さんも最近学園長から依頼を貰ってるって聞いたし。

悪魔退治かぁ。

私もやってみようかなぁ。

でも、ネギ巻き込むことになるだろうし。

子供をあんまり夜更かしさせるのは良くないしね。





その後も、続々とクラスの皆が来てくれた。

エヴァちゃんがこっそり糸を使ってポイを強化しようとしたり。

茶々丸さんが計算に基づく角度で、エヴァちゃんにせがまれた大物を取ろうとして失敗したり。

朝倉が学園全体に宣伝してくれたり。

ある程度コツを掴んだ楓さんがまた分身して108匹の大記録を生み出したり。

こつこつと積み立てた記録をあっさりと打ち破られた刹那さんが凹んでみたり。

とても有意義な夏祭りを送ることができた。





「けど、これどうしようか……」

ポイは殆ど捌け、大収入を得ることが出来た私。

だが、生憎と金魚は400匹ほど余ってしまった。

値段が付く金魚はエヴァちゃんが購入していったが、流石に餌用に使われる金魚だ。

態々買っていく人は少ない。

「流石に寮に持って帰るのも無理やしなー」

「科学部とかに押し付けるのも手かな?」

実験材料とかに使われるのがオチだろうけど。

「それはあかんて。可哀相やん」

「けど木乃香。流石に400匹も引き取ってくれそうな人って他に」

――いない。そう私が続ける前に。

「なんなら私が全部引き取るネ」

「超さん?!」

「古菲、五月。車に運ぶネ」

「判ったアル」

――はい。

水槽ごと、残ってしまった金魚を持ち上げて車の中に運んでいくふたり。

「え? いいんですか?」

「もちろんネ。なんなら代金を支払ってもいいヨ」

「いえ、そこまでしてもらうわけには」

「けど、一応お金払って買った品物ネ。無料で貰うわけにもいかんヨ」

「なら肉まん無料券のお礼ということで」

500円の無料券を30枚ほど貰った。

正直金魚400匹とは釣り合わないが。

「そうか? ならありがたく頂戴するネ」

――ありがとうございます。

ぺこりと頭を下げる五月さん。

「お礼はかならずするアルねー」

「では、今日はお互いがんばったネ。また機会があったら是非一緒にするネ」

「そうね」

これもひとつの夏祭りの楽しみ方だろう。

こういう形で、夏祭りを堪能するとは思わなかったけどね。













翌日。

木乃香と刹那さんと一緒に食堂でご飯を食べてると、重箱を持って超さんが現れた。

「これ昨日のお礼ね。食べるといいネ」

ドン! と机の上に重箱が置かれた、

見るものを圧倒させる黒い巨塔。

その一階を渡される。

そこにはから揚げや天麩羅、その他色とりどりの魚料理があった。

「うわぁ……おいしそう」

「これは……見事ですね」

感嘆の声を上げる私たち。

木乃香など尊敬の眼差しで超を見つめている。

さっそくから揚げを摘み、口の中に放り込む。

「お……美味しい」

「……さすが超さんですね」

外はぱりっと。中はジューシー。

淡白ながらも繊細な味。

私が作った油がべっちょりとしたから揚げとは次元が違う。

「ほんまやー」

ぱくぱくと新しい料理を摘む私たち。











「そういえば、これ何の魚なん?」

から揚げを繁々と見つめながら呟く木乃香。



























「もちろん、昨日の金魚あるネ!」





















正直、その後のことは思い出したくない。

「金魚はフナの亜種あるヨ。別に食べても害はないネ」

そういう問題じゃないのよ、超さん。






後書き
夏祭りと言えば屋台めぐり、盆踊り、浴衣コンテスト、花火。
そういった「誰かが書くだろうなぁ」というネタから外れてこんにちは、皆川瑞希です。

色物作家を自称している私としては、他人が書かないようなネタで勝負してみました。
狙うは佳作でしょうか。

 

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