いつまでも、いつまでも
前書きor注意書き

以前の梅雨の時に出した短編の続きみたいなものです 
あと言うならば、なんかくどいです

 

 

 この間まで延々と雨が降り続いていた梅雨も明け、遂に皆さんが心待ちに

していた夏祭りの日がやってきました。

 

 

 『いつまでも、いつまでも』

 

 

 今私とネギ先生は、明日菜さんとお嬢様のお部屋にお邪魔しています。

 

 「せっちゃんせっちゃん、浴衣ちゃんと着た?」

 

 「い いえ、やはり私の様な者には浴衣は似合わないと思いますし……」

 

 「まだそんなこと言ってるの刹那さん。もうすぐ祭り行くんだから早く準

備しないと」

 

 そう。私たちは年に一度開催される麻帆良あんどん祭に行くための準備を

しているのです。祭りは麻帆良祭ほどではないのですが、龍宮神社で行う結

構大きな祭りなので計画を立てて効率よく周ろうと準備がてら計画を立てて

いるのです。

 でも私は前々からお嬢様たちに「浴衣は着ない」と言っていたのですが、

どうしても私に着て欲しいらしく私はそれを頑として拒否し作業が進みませ

ん。というよりももう計画は立っているので後は私の浴衣の着付けだけです

 

 「ネギからも何か言ってやってよ〜。これじゃ祭り行けないよ」

 

 明日菜さんが弱弱しい声を出し、座布団にちょこんと座っていたネギ先生

に振り向き私の説得に協力させようとしてきました。

 

 「刹那さん、今日一日だけなんですから良いじゃないですか。刹那さんな

ら絶対似合いますよ」

 

 ネギ先生はそう言ってくれていますが、私はどうしてもそういうのは苦手

なんですよ。だから週末さえ制服だというのに。

 それに浴衣なんて着てたらもしもの時戦いにくいから対応できないじゃな

いですか。

 私がネギ先生にそのことを言おうとした時、これをネギ先生に言われたら

私は恐らく抗うことができないであろうと自負していた言葉がネギ先生から

放たれた。

 

 「それに僕、刹那さんの浴衣姿すごく見たいです」

 

 

 

 

 さて、今はどこかというと祭りの会場である龍宮神社へとむかう電車の

中。私の格好ですか? 聞かんといて……。

 

 「やっぱり刹那さんの浴衣姿すごく似合ってますよ」

 

 ネギ先生そんなこと言わんといて。ネギ先生に似合っていると言われる度

に私の心臓は手術で電気マッサージをされるかの如く鳴って、頭に血が昇っ

ていっているんですから。

 

 「ちょっとネギ、刹那さんだけな訳?」

 

 「い いやそんなことは、明日菜さん達もお似合いですよ」

 

 「そんな取って付けたように言われても嬉しくないわよ!」

 

 「そ そんな〜」

 

 私が顔を自分でも分かるくらいに真っ赤にしている側で、ネギ先生と明日

菜さんは以前と変わらずこの様なやり取りをしています。少し羨ましいで

す。

 私がそんなやり取りを聞きながら顔を未だに真っ赤にして俯いていると、

ネギ先生が今年はどんな祭りなのかと尋ねてきました。

 

 「詳しいことは知らないのですが、去年は花火を二万五千発打ち上げまし

たよね?」

 

 「はい、凄かったですね〜」

 

 「今年は去年の二倍の五万発花火を打ち上げるようです」

 

 「ご 五万発!?」

 

 ネギ先生、電車の中では静かにしてください。他の皆さんもこっちを見て

るじゃないですか。

 まあ驚くのは無理も無いですね。花火五万発なんて聞かされたら私だって

驚きますよ。

でも冷静に考えたら学園祭のクイズの賞金で百万円とか宇宙旅行をプレゼン

トするのを考えると普通なような気もしてきますけどね。

 そんな感じのやり取りをしている内に電車はいつの間にか龍宮神社付近の

駅に到着していました。

 

 

 

 

 「やっと会場内に入れましたね」

 

 「ええ、まさかまだ六時だというのに会場内に入るのにこんなに苦労する

とは思いませんでした」

 

 電車を降りた私たちは祭りの会場である龍宮神社へと向かい、神社に入る

までの大行列を乗り越え遂に会場までたどり着きました。

 

 「すごいですね刹那さん。出店も一杯ありますよ」

 

 ネギ先生は会場に入る前からずっとこの調子で、鳥居の前でもずっとまだ

かまだかと心待ちにしていて入るやいなや瞳を眩しいくらいに輝かせていま

す。

 ネギ先生も最近警備員としての仕事も増えてきたのでこの様なお祭りごと

はネギ先生にとって今最も必要なことなのかもしれません。

 

 「ネギってば相変わらずこういうところはガキなんだから。彼女置いてフ

ラフラする彼氏がどこにいるのよ」

 

 「か 彼女だなんて、私とネギ先生はそういうのじゃなくて魔法使いとパ

ートナーとしての関係であって……」

 

 「あれ? でも魔法使いとパートナーって大体人生の伴侶としての捉えか

たもあったよね?」

 

 「じじじ人生の伴侶だなんていくらなんでも飛躍しすぎですよ明日菜さ

ん!」

 

 私はネギ先生とは確かにこれから先もずっと一緒に居たいとは思っていま

すけど、そんな風に考えたことは一度も無く人生の伴侶だなんて言われても

私……。ああでも確かに私はネギ先生に以前『これからも、あなたの側に居

させてもらってもいいですか?』と言っている。これって今更ながらよく考

えると、プ……プロポーズ、なんでしょうか?

 

 「刹那さんはもっと自信持ちなよ。ネギにパートナーとして、恋人として

選ばれたんだから。でないと……」

 

 明日菜さんはいったん話をやめ、下に俯いてぼそりと聞き取れないほどの

小さな声で呟きました。

 

 「……でないと、選ばれなかった私や、皆が惨めに思えてくるじゃな

い………」

 

 「……へ? 明日菜さん?」

 

 「………ううん、なんでもない。ほらネギーー! あんまり一人で歩き回

ると迷子になるわよーー! 行こ、刹那さん」

 

 「は はい」

 

 本当は、聞こえてました。明日菜さんが今何と言ったのか聞こえていまし

た。

 でも私はここでその言葉に対して答えてしまったら、全部今まで築き上げ

たものが壊れてしまうような気がして聞こえなったフリをするしかありませ

んでした。

 

 「せっちゃんはよ行こ〜。二人に置いてかれてまうで〜」

 

 「はい、お嬢様」

 

 「もう~このちゃん言うてていつも言いよるやろ〜」

 

 そういうとお嬢様は頬を膨らまして精一杯怒っているようにして見せま

す。

 こんな、小さな幸せのひと時も壊れてしまうと思い、私は聞き返すことで

誤魔化せる事しか出来ませんでした。

 

 私は今の生活がとても楽しくてついつい忘れそうになってしまいますが、

ネギ先生を想っていた人はたくさんいて、ネギ先生はそんな僅か10歳の子供

には辛すぎる決断を迫られ、答えを出して私を選んでくれました。

 でも本当にそれで良かったのかと今でも思ってしまうときがあります。

 

 私は幼き頃より自分の中に流れる烏族の血を憎み、呪ってきました。そし

て烏族の里からも追い出され、烏族の血を呪いながら毎日毎日泣いていまし

た。

 そして何もかもがどうでも良くなり、雨の中のたれ死のうとしていたとこ

ろをお嬢様の父君であり関西呪術協会の長である近衛詠春さまに拾っていた

だき、そして私は木乃香お嬢様と出会いました。

 暫くは烏族のハーフだからと神鳴流でも蔑まれていましたが、師範代が私

を受け入れてくれて次第に稽古相手などもできるようになりました。

 しかし自分の未熟故にお嬢様が危険な目にあってからは自ら距離をとるよ

うになり、疎遠になり再び孤独となってしまいました。

 

 それから数年が立ち、お嬢様の護衛のために麻帆良学園に入学してからも

それは変わらず、私はお嬢様と距離をとって口を利くことはありませんでし

た。

 そして麻帆良に来て二度目の桜舞い散る季節、ネギ先生が担任として私た

ち元3−Aの皆さんのまえに現われました。

 

 最初は未熟な西洋魔術師としか認識していなかったのですが、修学旅行で

ネギ先生という人間がわかり徐々に惹かれ始めていきました。

 そしてネギ先生のお陰で昔通りとまではいかなかったけど、私とお嬢様は

また二人で笑いあえるようになりました。

 

 それから麻帆良武道会でエヴァンジェリンさんに、剣か幸せを選べと言わ

れ私は両方をとるという選択をしました。

 その答えに今でも嘘偽りはないと言い切れるのですが、それでも今でも自

分の中に流れる烏族の血に悩まされ、私は幸福を得ることが出来るのかと迷

うことがあります。

 

 その答えだけは今でも出すことが出来ず、ネギ先生にパートナーとして選

ばれた今も迷う時があります。

 明日菜さんはネギ先生のパートナーであることを自信を持てといっていま

したが、やはり私で良かったのかと思ってしまいます。こんな人外の私で良

いのかと。

 ネギ先生のことを私以上に想っていた人は何人もいたのに、こんな人外の

私を選んでしまって本当にネギ先生は幸せになれるのかとときどき考えてし

まうのです。

 ネギ先生と私が結ばれたら、ネギ先生はサウザンドマスターの息子であり

ながら魔族のハーフの娘と人生を共にしたと他の魔法使いからもよく思われ

ず、私と同じように蔑まされる存在になってしまいネギ先生の父君を探すと

いう目的も果たせなくなってしまう。そう思うと私はネギ先生と共にあり続

けてよいのかと迷ってしまうのです。

  

 だから私は……、私は……、

 

 「刹那さん?」

 

 「うひゃあ!? ネ ネギ先生!?」

 

 気がつくと私の前にはネギ先生が出店で買ってきたのか、たこ焼きを持っ

て私の眼前に立っていました。ていうかネギ先生顔近いです。

 

 「どうしたんです? ボーっとして。浮かない顔をしていましたけど悩み

事でもあるんですか?」

 

 「い いえ別に何も! そ それよりどうしたんですか? なにかあった

のですか?」

 

 誤魔化しきれたとは思えませんがこれが私の精一杯です。まさかハーフの

血のことで悩んでいたとはネギ先生に言えるわけがありません。こういうこ

とをネギ先生に言うと涙目になって大声で否定するだろうからです。

 それにもともとこんなこと言うほどの勇気、私は持ち合わせていませ

ん……。

 

 「えへへ、実は刹那さんと一緒にこのたこ焼きを食べたいなーと思いまし

て」

 

 そういうとネギ先生は、私の目の前に自分の持っていたたこ焼きをズイッ

といった感じで私の目の前に持ち上げてきました。ネギ先生は今言ったこと

が少し恥ずかしかったのか、目の前にあるたこ焼きのせいでよく見えません

が頬を少し赤らめて眼を逸らしながら少し困ったような笑顔を浮かべていま

す。くっ……、可愛すぎる……。

 

 「駄目ですか? 刹那さん……?」

 

 分かりました。分かりましたからネギ先生、その捨てられた子犬みたいな

目をやめてください。このままじゃ私の理性こそ駄目になってしまいますか

ら。

 

 「それじゃあ刹那さん」

 

 するとネギ先生は爪楊枝の刺さっているたこ焼きを口元まで持ってきまし

た。まさかこれは……、

 

 「はい、あーんしてください」

 

 くぅぅ、やっぱりかぁぁ……!!

 

 「ネギ先生、それは流石に。ほ ほら人もいっぱい居ますし」

 

 「あーん」

 

 「うぐ……、あ あーん」

 

 「おいしいですか?」

 

 そりゃもうおいしいですよ。しかも情けないことに幸せで胸いっぱいです

よ。

 

 「本当ですか? それじゃあもう一個、あーん」

 

 

 

 こういったやり取りがたこ焼きが無くなるまで続き、私はネギ先生との天

国のような幸せなひと時と、周りからの物珍しげな視線による地獄を乗り越

え茹蛸状態になっています。

 

 そしてその光景を見ていたお嬢様と明日菜さんに茶化された後、私たち四

人は盆踊りに参加したりくじなどを引いたりして花火までの時間を潰してい

ました。

 その途中ネギ先生がお手洗いに行き、その間に明日菜さんとお嬢様には祭

りを楽しんで貰い、私はお手洗いに近い出店の裏でネギ先生を待っていまし

た。

 

 「刹那じゃないか、久しぶりだな。こんなところで何してるんだ?」

 

 気配もなく私に近づいて話しかけてきたのは元クラスメートであり仕事仲

間の龍宮だった。

 

 「龍宮か。ネギ先生を待っているんだ。それより気配もなく近づくな、心

臓に悪い」

 

 私が少し眼をきつくして言うと龍宮は「フフ、悪い悪い」などと口先だけ

謝ってきた。少し頭にくるな。

 というよりも龍宮はこんなところで何してるんだ。巫女なのに神社の中に

居なくていいのか。

 

 「今神社の中は花火を打ち上げる為の準備中だ。花火職人の奴らしか入れ

ん」

 

 「神社の中から打ち上げて火事とかにはならんのか?」

 

 「去年武道会に使った場所から打ち上げるからな。それに学園長から護符

を大量に貰ってある。その辺は神主も知っているからな」

 

 神主も魔法使いだったのか。去年の麻帆良祭の警備の時はそれらしき人物

は見当たらなかったが。

 

「武道会会場が神社だったからそっちの仕事のほうが忙しかったんだよ」

 

 なるほど。

 

 「そういえば龍宮はこんな出店の裏に何しに来たんだ?」

 

 「ああすっかり忘れていたよ。私もお手洗いに来たんだった。それじゃあ

な」

 

 そういうと龍宮はまだ男子トイレのほうにネギ先生が入っているお手洗い

場のほうへ歩いていった。

 しかしまあ龍宮も丸くなったものだ。一年前は私とでさえ仕事話しかしな

かったのに。まあそれは私も同じことだがな。私や龍宮がこんなに他人と話

せるようになったのもやはりネギ先生のお陰なのだろう。

 

 そういえばネギ先生遅いな。もうお手洗いに行って10分は経っている。

お腹でも下したのだろうかと、男子トイレの隙を見計らってネギ先生の様子

でも見に行こうかと思っていたとき龍宮が血相を変えて走ってきた。

 

 「刹那! ネギ先生が妖怪に攫われた!」

 

 

 龍宮から話を聞くと、お手洗い場に向かう途中近くの森から人払いの魔法

の力を感じ不審に思い奥に進んでみると烏族の集団がいて、その中の一匹が

ネギ先生を抱えていたという。

 すぐに龍宮が袴の中に隠しておいた退魔用の銃をもって挑んだが、他の烏

族に足止めを喰らいネギ先生を抱えた烏族には飛んで逃げられたらしい。

 その話を聞いた私は龍宮に逃げた方角を聞くと、自分が忌み嫌っている白

い翼を浴衣の上半分を脱いでさらしだけを上半身に残して開放し夜空へと飛

んでいった。

 

 

 

 ネギ先生が連れいていかれてからそれほど時間が経っていなかったので、

全速で羽ばたいていると五分程度で烏族に追いついていた。

 ネギ先生は怪我は無いようだがまだ意識が持っておらず、烏族に大人しく

肩に抱えられていた。

 

 「貴様、ネギ先生をどうするつもりだ」

 

 私は懐からパクティオーカードを取り出し、アーティファクトへと変換さ

せ烏族から目的を聞きだしていた。

 すると烏族は抱えていたネギ先生の頭を鷲掴みにして私に見せ付けるよう

にしてきた。

 

 「どういうつもりだ?」

 

 私は爆発寸前の怒りを何とか押さえ込み、冷静に相手の出方を伺ってい

た。

 そして烏族はようやく口を開き、己の目的を私に言ってきた。だがそれ

は、私にとって最も恐れていたことだった。

 

 「この小僧をどうこうするつもりは無い。貴様の返答次第ではあるが」

 

 「さっさと用件を言え」

 

 「里に戻れ」

 

 一瞬自分の耳を疑った。もう里を出て何年も経つのに今更里へ戻れだなん

て言われるとは思いもしなかったからだ。

 

 「人間に正体がばれたらその者達の目の前から姿を消す。それが一族の決

まりのはずだ」

 

 それは分かっている。だから修学旅行のとき、黙ってネギ先生たちの前か

ら消えようとしたんだ。

 だがネギ先生に止められて現状に至るわけだが、まさか今更連れもどしに

くるとは思っていなかった。

 

 「人間に正体を明かしながらもこの人間と交際しているという情報が入っ

てな。里の決まりどおり別の場所に姿を隠してもまたこの人間の下に戻って

くるかもしれないので貴様を強制的に里へ連れ戻せと我が烏族の里の長より

命じられたのだ」

 

 「では貴様の目的はネギ先生ではなく、私か……」

 

 「そういうことだ。でなければ半分人間の出来損ないの貴様などに追いつ

かれるわけが無いだろう」

 

 その言い方に私は頭にきて相手の烏族を切り捨てようと前に出そうになっ

たが、相手はネギ先生を持っている。ここまで連れてきたということはネギ

先生は人質だろうから迂闊に動くことは出来ない。

 

「 分かっているだろうが変な真似はするなよ。その場から動けばこの小僧

の命は無いぞ」

 

 そういうと烏族はネギ先生を掴んでいないほうの手で剣を持ち先生の首元

まで剣を持ってきた。私が少しでも攻撃するような素振りを見せればすぐさ

まネギ先生の首を切り裂くつもりだろう。もっともそのときは烏族を瞬時に

原型も留まらないほどにまで細切れにしてやるが。

 

 「さあどうする刹那。言っておくがこの小僧を斬った瞬間某を斬るなどと

脅しても無駄だぞ。某をこの場で斬ってもすぐに別の者が貴様を連れ戻しに

やってくる。貴様に心の拠り所があるかぎりな」

 

 そうだ。もしここで私がネギ先生を見捨てたとしても私に麻帆良学園とい

う居場所があるかぎり烏族はすぐに私を狙ってくる。

 まあもっとも、ネギ先生が死んでしまったら私に生きる気力などもうあり

はしないがな。

 ならもう、せめてネギ先生に生きて貰っていたほうが……。

 

 「せ……つな……さん」

 

 不意に烏族が鷲摑みにしているネギ先生から声が聞こえ先生のほうへ視線

を向けてみると、先生がまだ意識がハッキリしていないのかぼんやりとした

眼で私を見ていた。

 

 「話は……聞いていました。体に力が入らなくて……声を出すことが出来

ませんでしたけど……」

 

 意識が覚めてきたのか、ネギ先生の喋り方もハッキリしてきました。

 

 「刹那さんのことだから、考えていることは分かります。馬鹿なことはや

めてください」

 

 ネギ先生がこう言っているということは、本当に分かっているのでしょ

う。何やら烏族が「余計な事を言うな」と言ってネギ先生の頭を掴む握力を

さらに強めているようですが、ネギ先生は表情を多少その痛みから歪めてい

ますがそんなことは気にしないとばかりに私に話を続けてきます。

 

 「刹那さんが自分を犠牲にして助かっても、全然嬉しくありません。自分

を犠牲にして僕を生かそうというのなら、僕は自ら命を絶つか、烏族の里そ

のものに喧嘩を売りますよ。そして腕が無くなろうが目が潰れようが刹那さ

んを助けるまで何回でも喧嘩を売ります。だから刹那さん、いつまでも僕の

側に、いてください」

 

 そこまで想ってくれているネギ先生に私は泣きそうになってしまいます

が、私は素直になれず反発してしまいます。

 

 「じゃあどうするというのですか。この状況じゃ……」

 

 「こうします」

 

 「へ?」

 

 ネギ先生は烏族の頭を掴んでいる腕を掴み、力いっぱい放電を始めまし

た。

 ネギ先生の得意な雷系の魔法である「白き雷」を無詠唱で行っているので

しょう。しかしネギ先生が掴んでいる腕は、どうじにネギ先生の頭を掴んで

いるのでそのまま電撃がネギ先生にも伝わってしまいます。

 

 「ネギ先生やめてください! そんなことをしたら先生が!」

 

 ネギ先生の表情は辛そうで、烏族も声にならない叫びをあげて苦しそうに

しています。

 このままいけばこの状況を打破することができるかもしれませんが、ネギ

先生自身タダではすみません。下手をすれば死に至る可能性もあります。

 ネギ先生が大事に至る前に烏族を斬ろうとしましたが、ネギ先生の「白き

雷」の余波が凄すぎて近寄ることが出来ません。

 何も出来ない自分が歯痒くてどうにかできないかと思っていたとき、ネギ

先生から念話が届きました。しかしその内容は危険だらけでほとんど賭けの

様なものでした。

 

 「ネギ先生危険すぎます! やめて……!」

 

 「頼みましたよ、刹那さん」

 

 私が言い終わる前にネギ先生は一方的な約束をして、一際強い雷を放った

後電撃をやめました。

 最後の電撃が効いたのか烏族はネギ先生から手を離し、先生は真っ逆さま

に地上に落ちていってしまいました。ネギ先生も自分の電撃に耐え切れるこ

とが出来ずに気を失っています。

 

 「ぐぅ……! この、糞餓鬼がぁぁぁぁ!!」

 

 「させるかぁ!」

 

 烏族は怒りに我を忘れネギ先生が人質ということを忘れているのか剣を構

えてネギ先生へと突っ込んでいきました。

しかし私はそれを許さず烏族の前に先回りして立ちはだかります。(立って

ませんけど)

 

 「どけ刹那! 奥義・激殺!」

 

 烏族は己の流派の一撃必殺の突きで突撃してきました。

 自分のスピードと落下速度に加え、「気」を剣の先にのみ集中させて一撃

必殺の突きを相手に喰らわせる技です。回避される確率が高いうえに隙だら

けなのでここぞという時に使う技です。喰らえば私もひとたまりもありませ

ん。

 

 「私を信じてこんな馬鹿なことをしているネギ先生の為にも、ここを退く

わけにはいかん! 神鳴流奥義・斬魔剣!」

 

 しかしここで退けばネギ先生の信頼を裏切ることになるのでここを退くわ

けにはいきません。だから私はヤツをここで倒す為に妖怪に有効な退魔の

剣・斬魔剣で立ち向かっていった。

 

 「餓鬼もろとも串刺しになるが良い!」

 

 「来い」

 

 そして私と烏族の距離は零となり、烏族は私の左翼を切り裂き、私は突っ

込んでくるヤツの剣を流すように滑らせそのままヤツの首を大きく斬りまし

た。

 ヤツは斬られてから一秒後ぐらいに音をたてて消えていきました。

 しかしのんびりしている時間はありません。私はすぐに落ちていったネギ

先生を追いかけければなりません。ここは地上からかなり離れているのです

ぐに地面に叩きつけられるありませんが、烏族との一騎打ちでのロスタイム

があるので早く助けなければネギ先生が地上に落ちてしまいます。

 

 「くっ、翼が……」

 

 今の斬りあいで私の左翼はかなり深く斬られてしまっていて満足な速度を

出すことが出来ません。ネギ先生を捕まえるのは落下スピードに少し翼を羽

ばたかせれば追いつくことは可能ですが、その後勢いが付いている状態で地

面に上手く着地することができるかわかりません。

 しかしここまで来たら無謀でもやるしかありません。大事な人を失わない

ためにも。

 

 「間に合えぇぇぇぇ!」

 

 そして私はついにネギ先生に届き、ネギ先生の手を掴んだ後すぐにネギ先

生を両腕で抱えて、地面に着地するために翼を羽ばたかせました。

 しかし予想通り左翼には殆ど力が入らず右翼しか羽ばたかせることができ

ません。バランスもとれずにどんどん地面は近づいてきています。

 下は森で木でブレーキが掛かるかもしれませんが二人分の、しかも遥か上

空から落ちてきた落下速度が掛かっているので助かる確率はほとんど無いと

いってもいいでしょう。

 

 なんとかならないかと全力で羽ばたくがやはりどうにもならず、もう駄目

かと思ったとき突然花火の音が聞こえてきました。その凄まじい音に一瞬驚

き、ネギ先生と見たかったなどと考えていると不意に私の左翼から痛みがみ

るみる内に引いていきました。

 なにが起きたのかと左翼の方を振り向いてみると、ネギ先生が治癒魔法を

かけてくれています。

 

「刹那さん、頑張って」

 

 花火の音で意識が戻ったのでしょう。まだ痛みはありますがネギ先生の治

癒魔法のお陰で私の左翼は羽ばたく程度に回復しています。

 

「ありがとうございます、ネギ先生」

 

 

 

 そして翼を治して貰った私はギリギリでしたがなんとか木の上に着地し、

今は森の中で一際大きい木の上で浴衣を着直し花火を眺めています。

 

 「綺麗ですねー、刹那さん」

 

 「え ええ……」

 

 ネギ先生は花火に見とれていて、私は自分の問題に巻き込んでしまった後

ろめたさからネギ先生とまともに会話することができません。

 それに、それだけじゃなく……。

 

 「また来年も来ましょう。いい場所も見つかったからゆっくり見れます

し」

 

 「…………」

 

 「刹那さん?」

 

 私はネギ先生に何も明かしてはいない。明かしたのは私の生い立ちだけ

だ。私自身がなにを思って生きてきたのか何も話してはいない。

 ネギ先生も勇気を出して自分がなにを思って生きてきたのか話してくれた

んだ。私だけ話さないのは、ずるいですよね。

 

 「ネギ先生、大事なお話があります」

 

 「………はい」

 

 真剣な話と察してくれたのか、ネギ先生は私の瞳を真っ直ぐ見つめてきま

した。

 私は今までネギ先生と出会うまでのこと、ネギ先生のパートナーとなって

なにを思ってきたかを、花火の舞い上がる夜空の下で話しました。

 

 「ネギ先生、私は……」

 

 私は幼き頃より剣の修行に明け暮れていました。

 お嬢様を護る為にと己の感情を犠牲にしてまで修行を続け、10代で神鳴流

の奥義の殆どを会得すまでに至りました。しかしそのときには、今までお嬢

様に護る為にとお嬢様を避けて修行を続けてきたせいか、お嬢様と遊んでい

たかつての自分を失っていました。

 そして私は神鳴流剣士としての仕事も増えて益々話す機会もなくなり疎遠

になっていきました。

 

 そんな中、神鳴流の仕事で仲間と共に上級の妖魔を相手にしたことがあり

ました。その時は私もその仲間もまだ未熟で二人ともその妖魔に敵いません

でした。

 そしてもう打つ手もなくなり諦めかけていた時、烏族の生存本能が働いて

その時初めてハーフとしての力を発動しました。

 しかし私はまだその力を抑えることができずに暴走。神鳴流の退魔の力と

妖魔の力にその上級の妖魔は対抗することが出来ませんでしたが、その時仲

間の神鳴流にまで襲い掛かってしまいその仲間はもう剣を握れない体になっ

てしまいました。

 それが理由で神鳴流でも私はまた孤立してしまい、そのときに自分のおぞ

ましさを実感しお嬢様に自ら近寄ることも無くなりました。

 

 それからお嬢様は麻帆良学園へと編入し、私も中学生になるころお嬢様の

護衛として麻帆良学園女子中等部に転入しました。

 それからも私はお嬢様と親しくすることはなく、話しかけられても簡単な

受け答えをして済ませてきました。

 その頃はそれでお嬢様を護りきれていると思っていましたが、本当は私が

お嬢様を傷つけていました。私はお嬢様を傷つけて、そして私はお嬢様と喋

りたいという気持ち……、いえ、お嬢様と喋りたいと泣いていた自分を殺し

ていたのです。

 

 そしてそんな自分に気付かないまま二年生も終わろうとしていた頃にネギ

先生がやってきました。

 最初見たときはどこか頼りなく、こんな大して魔力も錬れていないような

子供が本当にかの有名なサウザンドマスターの息子なのかと思っていまし

た。

 

 しかし修学旅行の頃からネギ先生に対する印象は最初の頃よりも全く違う

ものになっていきました。

 ネギ先生は自分よりも実力のあるものにも立ち向かい、当時ネギ先生より

もずっと強かった小太郎さんにも恐れず立ち向かい勝利しました。多分その

ときから私は何事も諦めない強いネギ先生に少しずつ惹かれていったんだと

思います。

 

 そしてネギ先生と明日菜さんのお陰で私とお嬢様はまた話すことが出来る

ようになりました。

 その他にもネギ先生のお陰で皆と仲良くなれた人、勇気付けられた人もい

てネギ先生は周りからの信頼も大きくなり、ネギ先生自身も凄まじい勢いで

成長し今となっては学園内でもネギ先生に敵うものはごく少数しかいないほ

どになりました。

 そんなネギ先生に惹かれる一方、私は怖くもありました。

 私は今はネギ先生をお守りする為にネギ先生のお側にいます。お嬢様を護

るという使命も学園内にいる以上ないと言ってもいい状態ですから。

 今はまだ私はネギ先生よりも強いですがもうそんなに実力差があるわけで

はありません。もうあと半年もすれば多分ネギ先生は私を越えるでしょう。

 その時私はもうネギ先生のパートナーとしての意味があるのかと不安にな

るのです。

 私はネギ先生のパートナーとしてネギ先生の側にいますが、ネギ先生が私

を超えてしまったらネギ先生は私に護られる意味はありません。

 そしたら私はネギ先生の側にいる必要はないんじゃないかと考えてしま

い、また孤独になって居場所が無くなるんじゃないかといつも怖くて堪らな

いんです。

 

 

 「……そう……だったんですか」

 

 「ネギ先生、私は……」

 

 ネギ先生に今までの自分を打ち明け、私がネギ先生のことを信頼していな

いのではないかとまた一瞬怖くなり顔を伏せましたが、ネギ先生はどういう

ことかやさしい笑みを私に向けてくれていました。

 そしてネギ先生は私が予想だにしない言葉を言いました。

 

 「やっと話してくれましたね」

 

 「え?」

 

 「偶にすごく思いつめた顔をしてたからどうしたのかと思っていたんです

が、そういうことだったんですね」

 

 「あの、ネギ先生それって……」

 

 「刹那さんがずっと悩んでたこと知ってましたよ」

 

 それはもう想像を絶する言葉でした。私がネギ先生のパートナーとなって

からはネギ先生ことは何でも分かるようになってきていたのにそんな素振り

に私は全く気付きませんでした。いや、そもそもそんな素振りを見せていた

のでしょうか。最近のネギ先生はどこか抜け目がありませんから油断が出来

ません。親に似てきているのでしょうか。

 

 「僕は刹那さんが苦しんでいるのを知っていましたが、僕は敢えてそのこ

とを刹那さんに聞きませんでした。何故だと思いますか?」

 

 「自分で言うのを待っていたからですか?」

 

 「それもありますが……、一番の理由は「ずるい」と思ったからです」

 

 「ずるい、ですか?」

 

 「はい、僕は刹那さんに今まで自分が悩んでいたことを勇気を振り絞って

言ったのに、刹那さんが僕が聞くのを待っていたとしたら不公平だし、なん

か「ずるい」と思ったんです。だから刹那さんが自分で言ってくれるのを待

ってたんです」

 

 開いた口が塞がらないというのはこのことでしょう。

 私がずっと悩んでいたことをネギ先生に気付かれていた上に、そのことを

知らされなかった理由が「ずるい」といったそんな子供じみた理由だなん

て、なんだか怖がっていた自分が馬鹿馬鹿しくさえ思えてきます。

 

 

 「刹那さん」

 

 「はい」

 

 「刹那さんはさっき、僕が刹那さんを超えたら僕は刹那さんを必要としな

くなるんじゃないかと言いましたよね」

 

 「はい……」

 

 「僕は確かに誰かを失うのが怖いから、僕が刹那さんよりずっと強くなっ

たら刹那さんと一緒に戦うことを拒むかもしれません」

 

 その言葉に私は肩をとビクリと震わせました。

 私はネギ先生の話を聞くのが怖くなって眼を背けてしまい、話を聞くまい

と言わんばかりにネギ先生の瞳を見ないようにします。

 しかしネギ先生は話を続けます。その話は嫌でも私の耳の中に吸い込まれ

ていきます。

 

 「明日菜さんにも散々言われましたが、僕はやっぱり誰かに頼るのはあま

りしたくありません。でもそれじゃあ一人ではどうしようも無い時がきま

す。それでもやっぱり刹那さんを危険な目に合わせたくありません。だから

その時は……」

 

 

 僕が無事に帰ってこれるように、笑顔で待っていてくれませんか

 

 

 「…………! あなたは……、本当に……勝手な人ですね。待ってるほう

が、ずっと怖いんですよ?」

 

 「刹那さんが待っていてくれるなら必ず帰ってきます。約束します」

 

 ああ、本当にこの人は勝手だ。怖いといっているのにまた勝手に約束をし

て。

 でも、何故でしょう。この言葉を私は心から信頼できる。不思議と怖くな

いような気がしてくる。

 ネギ先生と一緒なら怖くなど無い。だって彼は、私が里に戻ったら烏族の

里に喧嘩を売るとまで言ってくれたんだ。本当にそんな馬鹿げたことを、真

剣に言ってくれたんだ。

 

 「じゃあ、私はずっとネギ先生の側に居てもいいんですよね? ずっとネ

ギ先生の側に居させて貰ってもいいんですよね? ずっと……ずっと一緒に

居てもいいんですよね?」

 

 「はい、いつまでも、いつまでも一緒ですよ」

 

 「では、ネギ先生」

 

 

                 約束ですよ

 

 

 私はこの日、ネギ先生と約束をしました。本当に馬鹿馬鹿しい約束をしま

した。ずっと待っているなんてそんな勇気、私は持っていないのに馬鹿な約

束をしました。

 暫くはその約束を実行する日はないと思いますが、そのときが来たら私は

多分ネギ先生を笑顔で待っていると思います。それが約束ですから。

 

 今私とネギ先生が眺めている花火は、最初は一つで、後からバラバラにな

って消えていきます。それはまるで人間のようで切なくなるけれど、私たち

は大丈夫だと思います。何故なら私は人間ではないからです。明日菜さんが

聞いたら「なにそれ」とか言いそうですが、不思議と自信を持って言えるん

です。

 私たちは、いつまでも、いつまでも一緒だと。

 

 〜END〜

 

 

【後書き】

 

書いておいてなんですが、酷いですねこれ。文章ぐだぐだだし。

それにこれ本当に刹那なのかと疑わしいときもありますし。それに明日菜と

木乃香と真名が完全に忘れられてるし。あとついでに結局作戦は何だったの

か説明しませんしね。

ここで説明させて貰うならば、白い雷で自分ごと攻撃して烏族が怯んで手を

離してネギが落ちている間に烏族を倒して刹那がネギを助けるという作戦と

いうよりほとんど賭けのようなものです。

 

この作品は前回の作品展示会で出した「止まらない涙」の続きみたいなもの

です。自分的には全作品のほうが気に入っています。

この作品はWord16ページ分という自己最短記録の作品です。でも長すぎてグ

ダグダなものになってしまい少し訳の分からないものになっています。

まあ小説というのはつまらなかったら殆ど最後まで読めませんからこの後書

きを見る人は少ないと思います。

 

この作品を書いて改めて実感しました。恋愛ものって難しいですね。

もともと烏族を出す気なんて全く無かったんですが、俺の頭は常にネギのバ

トルシーンが24時間無休で上映中なので、こんなあまり意味の無いやり取り

をしてしまいました。

でもこれは原作終了後のパラレルみたいなものなので、烏族との完全な決別

シーンは必要だったのかもしれません。

 

では俺は長らく放置していた「魔法先生と超能力生徒の友情物語」をかくとします。

それでは〜。

 

 

戻る