何が悪い01 『嫁の家出の何が悪い』 (本文サンプル・書き下ろし分・文頭)


※サンプルにつき、冒頭部分のみの公開です。
※ネット上で見やすいように装丁を改変しています。
※実際の冊子の装丁は、A5サイズ本 / 24行×27文字の2段組となります。

 
  
 序



 重たい。迷惑。ウザい。しんどい。疲れる。面倒。壊れる。辛い。痛い。苦しい。途方に暮れる。困る。
 
 こわい。
 

 
 一
 
 
 
 くだらない理由で、セカイとケンカをした。
「出て行く! 出て行く出て行く出て行く!」
 同居解消だ!
 自分の部屋に駆け込み、シツは、財布だけを引っ掴んだ。荷物を纏めるより、さっさとこの家から出て行きたかった。
 ケンカの理由は、至極単純明快。
 セカイがべたべたしてくるので、適当にあしらった。素面でべたべたするのは、恥ずかしい。
 それが日常だが、今日に限っては、そんな些細な事からケンカに至った。
 シツはセカイに苛々しているのに、セカイはいつも通り。
「お前はいっつもそう!」
 シツがそう怒鳴ると、
「それで……お前は何を怒ってんの?」
 と、困り顔で尋ねてくる始末。
 それが、シツを余計に苛々させると知っているのかいないのか、セカイだけいつも余裕綽々の態度を崩さない。
「出て行く! 携帯電話!」
 叫んでも携帯電話は返事をしない。
 財布と一緒に携帯電話も持ち出したいが、見当たらない。鞄の中も、ベッドも、机の上も探したが、行方不明だ。
 自分の部屋以外も探しに行こうとして、二の足を踏んだ。
 部屋から出ると、リビングで普通にテレビを見ているセカイと鉢合わせる。他の部屋には行けない。次にこの部屋を出る時は、この家を出る時だ。
 自室に携帯電話があることに賭けて、絶対に入っていないだろう机の引き出しを探った。
 一番目の引き出しは、鍵をかけて大事なものを仕舞っている。
「あれ?」
 その奥から、携帯電話の代わりに茶封筒を見つけた。
 中には、メモ帳を千切ったものが、わんさか入っている。メモの半数はセカイの文字で、残り半分はシツの文字だ。
「うわ、懐かし……」
 思わず発掘されたそれに、シツは一瞬、怒りを忘れた。
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 以下、同人誌のみの公開です。



2010/11/18 何が悪い01 『嫁の家出の何が悪い』 (本文サンプル・書き下ろし分・文頭) 公開