| ■『ただお礼を言いたくて』 2007.8.24 |
――――某動物病院―――― ???:「先生、この子フェレットですよね?」 ???:「そうねぇ……ちょっと変わった種類みたいだけど」 ???:「あんな所にいるなんて、飼い主さんから逸れちゃったとかなのかな?」 ユーノ:「(う、ん……)」 薄れていた意識の中へ女性の声が響いてくる。 残された力を振り絞って助けを求めたのが誰かに届いたのだろうか。 それとも他の誰かに偶然発見されたのだろうか……。 ???:「可愛いなぁ〜、毛も柔らかくて気持ち良いよ」 ユーノ:「(うぁあっ!?そ、そこはくすぐった・……!!)」 一人の少女がそう言いながら尻尾の付け根部分をそっと触れてくる。 そこは自身の敏感な部分であったため、ユーノの意識は深い闇の底から一気に引き戻されてしまった。 なのは:「あっ、気が付いたみたいだよ」 アリサ:「本当だ」 ユーノ:「(こ、ここは……?)」 目覚めると同時に辺りをキョロキョロと見回す。 背後には白衣を着た女性、そして目の前には3人の少女が立っていた。 ユーノ:「(この部屋の感じ……病院かな……?じゃあ、僕は助かって……)」 なのは:「良かったぁ〜、見つけた時は心配しちゃったけど大丈夫そうだね」 すずか:「うん、本当に良かったぁ」 なんとか助かったのだと安堵感を覚えるユーノの目の前で、少女達もまた安堵感を覚えている。 一人は青い髪が特徴的でおっとりしたような感じの子。 もう一人は金髪で長い髪、ちょっと気が強そうな雰囲気を持つ子。 最後にツインテールで茶色がかった髪が特徴的で明瞭快活そうな子だ。 こちらを目を輝かせて興味深そうに見詰めているあたり、先程自分の身体に触れてきたのはこの子なのだろう。 ユーノ:「(もしかしてこの子達が僕を……?)」 アリサ:「もぉ〜、なのは!アンタが触ったりするからビックリしちゃってるじゃないのよ」 なのは:「だって、可愛かったからつい……あはは」 アリサ:「あははじゃない!」 すずか:「でもこんなに可愛いとやっぱり触りたくなるよね」 アリサ:「すずかもまたぁ!この子衰弱してるんだからあんまり触っちゃダメでしょ!」 なのは:「えぇ〜っ、ちょっとくらい触りたいよぉ」 アリサ:「ちょっとならさっきアンタ触ったじゃないのよ」 すずか:「じゃあ、まだ触ってない私なら……」 アリサ:「どさくさに紛れて触ろうとしないの!」 すずか:「うぅ……」 先生:「はいはい、そんなに大きな声出しちゃダメよ?余計にこの子ビックリしちゃってるから、ね?」 アリサ&なのは&すずか:「は〜い……」 騒ぎ立ててしまった事を反省し、しゅんとなる三人。 フェレットの方へと目をやると彼は目を丸くしてこちらを見詰めていた。 ユーノ:「(間違いない……感じる。この子から魔力が……)」 ユーノの視線は、なのはの方へと向けられていた。 助けを求めた時の声は魔法の素養がないと聞こえない性質のもの。 つまりはこのツインテールの少女……なのはにその素質があるという事である。 ユーノ:「(すぐに助け出してもらえるなんて運が良かったな……。そうだ、助けて貰ったお礼を言わないと)」 目を閉じ、心の中でなのはの方へ「助けてくれてありがとう」という感謝の意を込めた言葉を伝えようと強く念じる。 ユーノ:「(あ、あれ……?は、話せない?)」 しかし、助けを呼んだ際に力を使い果たしたのだろう、魔力を介した意思伝達を思うように使えなかった。 少しでも力が残っていればと思い、力みながら念じようとするが…… ユーノ:「(う、うぅんん……!!!!)」 アリサ:「ね、ねぇ、なのは……ずっとアンタの事を見てるよ?」 なのは:「う、うん……どうしたのかな?」 ユーノ:「(だ、ダメだ……。せめて感謝の言葉だけでも伝えたいのに……)」 やはり無理だった。 目の前に命の恩人が居るというのに何も伝える事が出来ない事にユーノは落ち込んでしまう。 なのは:「だ、大丈夫……?」 そんな様子を感じ取ったのか、なのはは顔を曇らせながらそっと手をユーノの方へと差し出す。 その指先がユーノの鼻に触れた瞬間だった。 ユーノ:「(あっ……ま、魔力が伝わってきてる……?そうだ、この子の身体を通して直接語りかければ……!)」 差し出された手の横を通り抜け、診察台の下へと着地するユーノ。 彼が見上げた先にはなのはが……そう、彼女の身体に秘められた魔力を所謂、魔力のアンテナとして意思伝達を行うつもりだ。 ユーノ:「(よしっ、いくぞっ!)」 ![]() 意を決したユーノは高く跳躍するとスカートの中からなのはの身体へと侵入した。 なのは:「ひゃあっ!な、何なにっ!?制服の中に入ってきちゃったよぉっ!?」 ユーノ:「(魔力が僕の身体にも伝わってくる……これなら大丈夫かも……)」 制服の中へと潜り込んだユーノは、なのはの身体に密着した事で感じる魔力の流れに確かな手応えを感じ取っていた。 ユーノ:「(よし、このまま彼女の魔力を介して……!)」 相手に魔力があるといっても完全に覚醒したものではない為、利用できるのは僅かなものである。 いわば携帯電話の電波が一本立っているかどうかという状態だ。 その為、同じような所を何度も行き来するなどして、なのはの全身をまさぐる……もとい駆け巡る必要があった。 なのは:「きゃはは!や、やめてぇっ……く、くすぐったいよぉ!」 フェレットの小さな足が全身を動き回り、こそばゆい感覚が身体中に走る。 何とか手で服の上から押さえ付けようとするが、動きが早く捕獲は困難を極めた。 なのは:「ひゃぅっ!?そ、そこはダメだってばぁ!あっ、今度は背中に……!?」 ユーノ:「(僕の声、聞こえますか……?聞こえたら返事を……返事をして下さい……!)」 なのは:「な、何?今度は声が聞こえてっ・・・…!?ひゃぅっ、やっ、ダメぇ〜〜!」 すずか:「ねぇ、アリサちゃん、なのはちゃん何か言ってるみたいだけど……」 アリサ:「いつものアレでしょ?なのはってくすぐられるのが弱点だから」 すずか:「特に背中とか首筋は危ないんだよね……」 ユーノ:「(聞こえてるんなら返事を!お願いですからっ……!)」 なのは:「やぁぁんっ、また声が聞こえてくるよぉ〜〜!!も、もしかして幽霊とか……?やだぁ、やだやだぁ〜〜!!!」 全身を駆け巡り、懸命になのはへと自分の言葉を伝えようと試みるユーノ。 彼の言葉は魔力を介したおかげでなのはへ届いているようだった。 しかし、こそばゆい感覚に人一倍弱いうえに突如、不思議な声が頭に鳴り響くという現象に彼女の思考はまともに働くはずも無かった。 アリサ:「完全におかしくなっちゃってるみたいね……。もぉ〜っ、しょうがない!なのは、助けてあげるから動いちゃダメよ?」 なのは:「ふえぇぇっ〜っ!お、お願い〜っ!」 なのはの背中を激しく動き回るユーノをじっと見据えるアリサ。 彼女が掴みやすい位置に来るまで待ち構え…… アリサ:「えぇいっ!!」 ユーノ:「(聞こえてるんですよね!?だったらお礼だけでも言わせて下さい!助けてくれてあr……ぐぇっ!!」 なのはに正しく伝わっているかどうかはともかく、あと一言二言でユーノの念願も叶う……かと思われたが、アリサの正確無比な一撃によってあえなく捕獲されてしまった。 アリサ:「ふふん、私の手に掛かればこんなものよ♪」 なのは:「ふぇぇ……助かったぁ〜……」 すずか:「な、なのはちゃん、大丈夫?」 なのは:「う、うん……なんとか〜……あははは」 先生:「う〜ん……それだけ動けるとなると衰弱してるっていう訳ではなさそうね」 アリサ:「じゃあ先生、触っても大丈夫ですか?」 先生:「うん、でも程々にね」 すずか:「ねぇ、アリサちゃん。このコさっき、なのはちゃんにお礼を言ってたのかもしれないね」 なのは:「お礼……?」 すずか:「ほら、このコを見つけたのってなのはちゃんだし……」 アリサ:「確かにこのコを見つけたのはなのはだけど、助けてあげたのは私とすずかだって一緒よ」 なのは:「う、うん」 アリサ:「だから私たちにもそれなりのお礼をして貰わないと……ね♪」 そう言うとアリサは抱きかかえていたユーノをぎゅっと抱き締め、頬擦りを始めた。 助けたのは自分達もなのだからと彼を存分に可愛がる事で、そのお礼を果たしてもらおうという魂胆である。 ユーノ:「(うわわわわ!!)」 魔力の事もあって今はフェレットの姿をしているが、本来の人の姿になればユーノは色々と女性に興味が出てくるお年頃。 今自分が置かれている状況を人型で置き換えて想像してしまうと全身が熱くなってくるのを感じ取れた。 アリサ:「う〜ん、可愛い〜♪」 ユーノ:「(わわっ、ちょっ、待って!やめっ……うぎゅ!)」 アリサは黄色い声を上げながら容赦なくその柔肌をユーノへ押し付けてくる。 女性との関わりに免疫が少ない彼にとってこのようなスキンシップは想像力を働かせる要因でもあり、彼の初心な心を動揺させる要因でもあった。 アリサ:「ん〜っ、ちゅっ♪あはっ、鼻が冷たい♪」 ユーノ:「(うああぁーー!ぼっ、僕の鼻がこのコのほっぺにぃぃーー!!)」 本来ならばなのはと身体を密着させた際にもこのような動揺は起こってもおかしくはない。 しかし、あの時は自身の目的に意識を集中させていたせいか、そこまで思考が回っていなかったようだ。 アリサ:「はい、次はすずかも」 すずか:「え、私も……?」 アリサ:「すずかも助けてあげたんだから、うんと可愛がってあげなさい♪」 すずか:「う、うん……。えっと……じゃあ、うちの猫にもしてあげてるように……」 手渡されたユーノを優しく抱きかかえるすずか。 そして彼女はユーノの首元を指で撫でながら軽く鼻にキスをしてみせた。 彼女の言葉から察するに家で飼っている猫にも同様の愛情表現をしているのだろう。 ユーノ:「(ちょ、今のって……キ、キキッキキキ!!!)」 これまた人型に置き換えてイメージすると、これは清楚なお嬢様にそっと鼻元をキスされてしまったのと同じようなものである。 フェレット型だからこそ味わえる至福の時を今まさに彼はその身で体験しているのだった。 なのは:「わぁ……」 アリサ:「すずか大胆〜!」 すずか:「あははは……。えっと、じゃあ先生もどうぞ」 先生:「え、私も?」 アリサ:「はい!先生だってこのコを助けたんですから可愛がってあげてください♪」 先生:「うーん、そうね……」 すずかから手渡されたユーノは既に軽い放心状態だった。 虚ろな表情で何処か遠くを見ているかのようである。 先生:「それじゃ先生もあなた達に負けないくらい可愛がっちゃおうかしら♪」 そんなユーノの表情が可愛く見えたのだろうか、先生は彼を愛しそうな表情で見詰めると自身の胸元へぎゅっと抱き締めた。 ユーノ:「(んんんんっーーー!!!?)」 柔らかな膨らみの上に押し付けられ、アリサ達とは決定的に違う成熟した身体の感触がユーノに襲い掛かる。 そんな今の状況を人型でイメージしよう……とするがあまりにも刺激が強すぎだった。 ユーノ:「(も、もう……だ、ダメ……ふきゅ)」 強烈な刺激にユーノの純情な心は許容範囲を超えてしまい、彼の意識は再び闇へと堕ちていく。 先生:「あ、あら?このコ伸びちゃって・・・…る?」 なのは:「ほ、本当だ!」 すずか:「た、大変!」 先生:「ちょ、ちょっと強くし過ぎちゃったかな……?」 アリサ:「もぉ〜っ!程々にって言ってた先生がやり過ぎちゃってどうするんですかぁ!」 先生:「ご、ごめんね〜。あははは……」 こうして助けたお礼を存分に可愛がる事で果たそうという行為は、ユーノの気絶という形で幕を下ろす事となった。 このフェレットが仮の姿である事を知らない彼女達には、何故気絶してしまったのか理解できるはずもない…… |
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