■『進展を妨げる者』 2007.11.1

――陸士108部隊 隊舎
陸上での警備を主とするこの部隊には、はやてにとって師とも呼べるゲンヤ・ナカジマが部隊長として所属している。
名前から分かるように六課に新人として招かれたスバルの父親だ。彼女の姉のギンガもこの部隊に一兵卒として所属している。
そんな108部隊へはやては、とある用件があって訪れていた。

はやて:「
ナカジマ三佐、お久し振りですー。急に伺ってしまって大丈夫でしたか?

ゲンヤ:「あぁ、別に構わねぇよ。それよりもお前の方こそ大丈夫だったのか?それほど暇な身分でもないだろうに」

はやて:「
実は今日はちょっとお願いがあって来たんですよ

ゲンヤ:「
珍しいな……で、何だ?そのお願いってのは

はやて:「
それは……

――同時刻、隊舎内の休憩室にてギンガとはやてが連れて来ていたリインの姿があった。

ギンガ:「
お久し振りです、リイン曹長。お元気でしたか?

リイン:「
はいです♪ギンガも元気にしてましたかー?

ギンガ:「
はい、こちらはいつもと変わらず元気にやっていますよ。それにしても八神二佐はどうしてここへ?お忙しい身でしょうに……

リイン:「
きっとギンガを六課に借りてもいいかってゲンヤさんに取り計らってるですよー

ギンガ:「
えっ、私を六課に……?

リイン:「
実はですね今、はやてちゃんはすごーく困ってるのです

ギンガ:「
困ってるって……何か重大な事でもあったんですか?

リイン:「
えっとですね、はやてちゃん風に言えば【私は今、一人の女として大事な局面に立たされてるんやー】なのです

ギンガ:「
は、はぁ……

リイン:「
詳しく説明すると六課の起源から話さないといけないのですが……元々、六課はとある人に想いを寄せているはやてちゃんが立ち上げたものなのです。そこにライバルであるなのはさん、フェイトさんを監視する為に取り込んだのですよー

ギンガ:「
はぁ、そうだったのですか……。でも、とある人って一体誰なんです?

リイン:「
考古学の権威でもあり、かの有名な無限書庫の司書長をされてるユーノ・スクライアさんなのです♪

ギンガ:「
ユーノ・スクライアってあの……!?

リインの口から出たユーノという名に驚くギンガ。
――その名の通り、膨大な書物が保管されていて、管理が難しいとされる無限書庫に若くして司書長となった有能な人物。
同じ部隊内でも知らない者はいないほどの有名人である。
それだけ名が知れた人物に実は、はやて達が想いを寄せているとは思いも寄らなかった。

リイン:「
はいです♪でも最近はそれどころじゃなくって目が回るほど忙しいのですよ……

ライバル2人を同じ仕事場に就かせる事で、抜け駆けしないように監視するのが目的だったはやて。
しかし、なのは、フェイトと比べて出世してしまった事が仇となり、思うように監視出来なくなっていたのだった。

リイン:「
それでギンガにはフェイトさんの監視役をお願いしたいのです

ギンガ:「
わ、私が……フェイトさんの!?む、無理ですよ、そんな……私なんかじゃ務まりません!

見知った顔とはいえ、もしも実力行使になった場合はランクに差がある二人では結果は明らかである。
ただでさえ能力リミッター付きのフェイトさんなのだから、本気を出されたら色んな意味でお嫁に行けない身体にされてしまうかもしれない。

リイン:「
大丈夫ですよー、ちゃんと秘密兵器を用意してるんですから♪

ギンガ:「
ひ、秘密兵器……?

リイン:「
はいです♪この任務に就くにあたって、ギンガ用に新デバイスを作るのです

ギンガ:「
デバイスって……やっぱり直接戦闘しちゃうって事じゃないですか!?

リイン:「
形状はスバルのと同型ですが、着目する所はもっと違う所なのですよ♪

ギンガ:「
えっ……?

リイン:「
それは……バリアジャケットなのです♪デザインは私が勝手に弄っちゃうのですが、予定ではフェイトさんの昔のジャケットのものにするつもりですよ

ギンガ:「
昔のジャケットって……

リイン:「
ギンガは知らないかもですが、フェイトさんの昔のジャケットはきわどくってエロエロなのですよー♪

ギンガ:「
ちょ、ちょっと待ってくださいリイン曹長!そんな恥ずかしいのを着れるわけがっ……

――きわどくってエロエロ……
この表現から察するにリインは無印時代、もしくはA's時代のジャケットをギンガ用に制作するつもりなのだろう。
当然ギンガにはどのようなデザインなのかはっきりとイメージは出来ないのだが、何となく察する事が出来、顔を真っ赤に紅潮させてしまった。

リイン:「
ふふー♪ギンガ、真っ赤になっちゃって可愛いです♪

ギンガ:「
だ、第一そんな恥ずかしい格好をしなくとも任務は遂行可能じゃないですかっ……!

ギンガの言い分は尤もな事である。
監視役くらいならばオーソドックスなジャケットでも充分なはず。
もっとも……はやてとリインに遊ばれてるのであれば別だが。

リイン:「
実はですね、任務には監視役とは別のお仕事があるのですよ♪

ギンガ:「
えぇっ!?ま、まだあるんですか……!?

リイン:「
もう一つは、ユーノさんの気をフェイトさんから逸らしちゃう事なのです。つまりは……誘惑しちゃうって事ですねー♪

ギンガ:「
……えぇぇえぇっ!?ゆ、誘惑って何言ってるんですか!無理です、ぜっっっったいに無理です!!!

リイン:「
はぅ……そ、そこまで必死に否定しなくても……

ギンガ:「
だ、だって……私、今までまともにお、男の人と接した事なんか……

リイン:「
なるほどー、そうだったんですかギンガ。とっても初々しくて苛めたくなっちゃうですよ♪

ギンガ:「
ちゃ、茶化さないで下さい!結構気にしてるんですから……

リインに茶化されてしまい、益々顔が赤くなり紅葉を散らしてしまうギンガ。
この歳になって、異性とまともに接した事がないという事を知られてしまったのだから尚更だ。

リイン:「
そんなギンガでも大丈夫なようにこのリインさんが実用例をちゃーんと考えてますから、安心するですよ♪

ギンガ:「
そ、そんな事を言われても……

リイン:「
大丈夫です!フェイトさんのジャケットを着ちゃえば、恥ずかしさなんてぶっ飛ぶですから♪

ギンガ:「
う、うぅ……

当時着ていた本人ですら、そのデザインのきわどさを忘れていたのだから、効果があると自信たっぷりなリイン。

リイン:「
設定としてはそうですねー。【訓練でバインドからの離脱訓練をしていたのだけれど、離脱が不可能になった】……みたいなのが良いですね♪

リイン:「
それで、たまたま近くにいた……という名目で無限書庫へ駆け込んでフラグを立てるのです♪

ギンガ:「
な、なんだか不自然な感じがするのですが……

苦笑いを浮かべながらリインの説明を聞くギンガ。
普通ならば、そういったバインドによる拘束から抜け出す訓練には付き添いが必要だからだ。

リイン:「
そんなの気にしなくていいのですよー、こういうのは勢いが大事なのです!

ギンガ:「
は、はぁ……

リイン:「
そして、いよいよユーノさんとのご対面ですね♪あ、中々見つからない時は他の人にちゃんと訊ねるのですよ?

ギンガ:「
ま、益々不自然すぎる気が……あははは……

ただでさえ不自然なのに、そこまでしてしまっては不審者扱いされ、無限書庫で働く職員からは冷ややかな目で見られるに違いない。
ギンガはもはや渇いた笑みを浮かべるしかなかった。

リイン:「
あとは【すいません……バインドからの離脱が難しくって……。すいませんが、手伝って頂けませんか?】みたいな感じでお願いしたら完璧です♪



リイン:「
そんでもって、解放してもらってる内にギンガのせくすぃーぼでぃに目が奪われてしまって、ユーノさんはギンガのト・リ・コ……ですよ〜♪

そうやって自身が考えた実用例を語り終えると、リインは満足気な表情を浮かべる。
そして……

リイン:「
……とまぁ、こんな感じです♪ギンガもその気があれば、ユーノさんへの恋人候補に名乗りを上げても大丈夫ですよ?はやてちゃんもライバルが増えたら気を張れるって言ってたですから♪

ギンガ:「
ちょっ……そ、そこまで話を飛躍させないで下さい、リイン曹長!余計なお世話ですってば!!

無茶な実用例を言ったかと思えば今度は、突拍子もない発言。
冗談なのかそれとも本気で言ってるのか、ギンガはリインに終始翻弄されてしまうのだった。

――所変わって同時刻での部隊長室。

ゲンヤ:「
……なるほどなぁ。そういう事なら、うちのギンガ、お前んとこに貸してやってもいいぜ

はやて:「
本当ですか!?

ゲンヤ:「
あぁ、あいつは今まで浮いた話の一つも聞いた事無かったからなぁ。こんな堅っ苦しい所に居るよりは、お前んとこの方がよっぽど良い経験が出来そうだ

はやて:「
わぁ、ありがとうございます、師匠♪ダメもとのお願いやったから嬉しいです〜♪

こんな簡単に了承を得られるとは思ってなかったはやては、その嬉しさを顔をほころばせて抱きつく事で表そうとする。

ゲンヤ:「
おい、そんなにくっつくんじゃねぇっ!それに師匠なんて言われるような事は何もしてねぇだろっ!

はやて:「
私にとっては師匠って呼べる人ですよ、ナカジマ三佐。それともパパ〜なんて呼んで欲しいとかですか♪

ゲンヤ:「
ぶっ!誰がパパだ!とにかく早く離れろっ!こんな所、誰かに見られでもしたら……!!

ラッド:「
失礼します。ラッド・カルタス二等陸尉で……

ゲンヤ&はやて:「
あ……

急な用件があったらしく、突然開かれる通信。
……ゲンヤの嫌な予感が見事に的中してしまった。
冷静な表情で用件を述べようとしていたラッドだったが、二人の状態に気付くや否や、彼の表情はみるみる内に変化していった。

ラッド:「
し、失礼しましたーーっ!!お、お楽しみの所を申し訳ありませんっ!!!!

――親子ほど歳が離れた禁断の部隊長愛!仕事の合間の密かな逢瀬……
と週刊誌の見出しにでもなりそうな状況に見えたのだろうか、ラッドは度を失った様子で通信を強制遮断してしまうのだった。

はやて:「
ほ、ほんまに見られてしまいましたね……あははは

ゲンヤ:「
まったく……お前がいるといつもこうだ。弁明する俺の身になって欲しいもんだぜ……

はやて:「
す、すいませんー……。私も一緒に行きましょうか?別に援助してもらってるような関係じゃないですよーって

ゲンヤ:「
あぁー、いいって!お前がいたら余計にややこしくなる……
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